ポイント5:データ化した後の「管理・活用の仕組み」が重要

 ペーパーレス化を進めるに当たっては、紙の代わりに情報を書き込む“場所”も用意する必要がある。単純にドキュメントを共有するだけなら、Webサーバーやファイルサーバーにデータを置けばよい。紙の形で残されているドキュメントも、スキャナーやスキャン機能付き複合機などでデータ化すれば同様に扱える。

 重要なのは、これらのドキュメントデータを管理したり活用したりしやすくする仕組みだ。一つの手段としては、第3回で紹介した野村総合研究所の「部室サーバー」のように、部門ごと・部署ごとにファイルサーバーを置くだけでもよい。

 その際、「ファイル名とフォルダー環境をルール化し整理するだけで、情報の共有環境はよくなる」(富士ゼロックス BPMソリューション営業部 ビジネス推進部 ドキュメントエキスパート営業推進グループの奈良浩子グループ長)。こうしたルールがあれば、一時的な資料も扱いやすくなる。

図1●ECM(企業コンテンツ管理)ソフトウエア「OnBase」の画面
図1●ECM(企業コンテンツ管理)ソフトウエア「OnBase」の画面
米ハイランドソフトウエアが開発し、日本国内ではPFUが提供。スキャナーでデータ化した文書の管理、関連文書の検索やひも付け、業務フローの管理と業務ルール適用の自動化、ERPとの連携、操作履歴のログなどの機能を備える。また自社の業務に合わせてカスタマイズ可能。
[画像のクリックで拡大表示]

 また、社内の関連各部に順次転送され、情報が追加・更新されていく契約書などの電子ドキュメントの場合は、業務プロセスと結びつけて扱う必要がある。こうしたシーンでは、ECM(企業コンテンツ管理)ソフトウエアを活用するのが一般的だ。例えば、PFUは大規模向けに「OnBase(オンベース)」という製品を提供している(図1)。ドキュメントを業務処理の工程と結びつけたり、ERP(統合基幹業務システム)などと連携させたりできる。第3回で紹介したリコーリースのシステム事例がそれに当たる。

 富士ゼロックスも、「DocuShare(ドキュシェア)」というECMソフトを提供している。特徴は、複合機と連携する機能を備える点。一般的な複合機は、スキャンしたデータをファイルサーバーの決まったフォルダーに放り込むだけだが、DocuShareはさらに高度な機能を提供する。例えば、目的別にフォルダーを振り分けたり、検索用のキーワードとして使える属性情報を追加したりといったことが可能で、データの共有・再利用性が向上する。

 こうした市販のECM製品を使う以外にも、独自でシステムを構築する例もある。事例として紹介した野村総合研究所の「DevNet(デブネット)」は、自社開発のECMソリューションである。

図2●ドキュメント活用ソフトの例
図2●ドキュメント活用ソフトの例
実際の紙と同じような使い勝手が可能なように工夫されている。PFUの「楽2ライブラリ」は、文書表示のほか、中小規模のECM機能も備える。富士ゼロックスの「DocuWorks」は、同社のECMソフト「DocuShare」などと連携できるようになっている。
[画像のクリックで拡大表示]

 小規模向けのECM/ファイリングソフトを利用する方法もある。PFUの「楽2(らくらく)ライブラリ」や富士ゼロックスの「DocuWorks(ドキュワークス)」などがそれ(図2)。これらはファイルの保管・管理の機能だけではなく、ページをめくったり、付箋やメモ書きを追加したりといった、紙と似た使い勝手を実現できる。

 なお、同社はDocuWorks文書やPDFを閲覧できるiPhone/iPad用ビューアー「DocuWorks Viewer Light for iPhone/iPad」を2011年1月末にリリースした。アップルの「App Store」から無料でダウンロードできる。