「放課後ティータイムII」を聴いた。その2

前回の続き。

Honey sweet tea time」

個人的に本アルバム最大の問題作。3話で歌詞なしのAメロが披露され、歌い出しの詞だけ作中で出来ていた曲。ムギが歌うことを前提に、澪からみたムギの世界が描かれている。全体的には表面的なムギのイメージどおりの、ふわふわしたファンタジックな詞なのだが。

道に迷ったら お茶にしましょう
願いはキャディースプーンに
切なさはティーポットに
(中略)
悩みも 迷いも とけて
きっと 明日も 晴れますように

放課後ティータイム・作詞:稲葉エミHoney sweet tea time』ポニーキャニオン 2010年

物語を都合よく進めるための装置として、非リアルな設定を持つキャラクターがムギ。その反動のように、自分がお嬢様であることへのコンプレックスとその克服など、人間味の部分が丁寧に描かれたキャラクターでもある。ムギの明るさが、「悩み」や「迷い」を飲み込んだ上で出てくるものだと、澪は知っている。おそらく他のメンバーも。ふだん声高に言うことではないけれど、詞で形にできたということ。もしかしたら、ムギが心の中に隠している部分を歌にして出しちゃおうよ、という澪からのメッセージなのかもしれない。自分がムギなら、こんな詞を書いてもらったら泣く。名曲。

  • お菓子、動物(野良猫)、文房具(絵の具)、空、光、街。作詞家・秋山澪の得意フレーズが一つ残らず詰め込まれている。
  • 「時計はラング・ド・シャ」(猫の舌)を2番の「野良猫ザッハトルテ」に掛けるとか、動物が出てきてもスランプではないようだ。ザッハトルテということは黒猫ですね。
  • Aメロ、ドラムとピアノと歌だけのところ。ムギと律は後ろでフロント3人を見るという意味で同じ立場なので、この2人だけのパートがあるのは嬉しい。1期12話のムギの仕掛けに最初に反応したのも律だったし。
  • ボーカル本職じゃない的な素朴な歌い方なんだが(特にCassetteMix)、声の表情やニュアンスの変化で聴かせるあたり、中の人がめちゃくちゃ歌が巧いのがバレバレである。ちなみにムギの歌のベストは「桜が丘女子高等学校校歌[Rock Ver.]」だと思う。
  • Special Thanksにクレジットされているので、歌い出しの歌詞は3話脚本の吉田玲子によるものではないかと思う(タイトルも?)。まあ、澪なんだけど。

「五月雨20ラブ」

  • 聴いてすぐ連想したのがREBECCAの「Love Passion」と「RASPBERRY DREAM」だった。これは決してパクリということではなく、本来の意味でのインスパイアじゃないかと。自分の世代には懐かしい感じを受ける曲。1期開始当時の山田監督のインタビューで、バンドブーム世代も狙ってると言ってたはずなので、狙ってやっていると思っている。編曲もベテランの小森茂生さんだし。いや、ムギとHTTがアレンジしてるんですけどね。
  • 「20ラブ」の意味が最初わからなかったんだけど、「もうすぐ18粒」で年齢のことだとやっとわかった。18歳の誕生日前に書いた詞ということか。この曲も「街」「光」「筆」など、澪ワード頻出。*1
  • 唯のギターが地味なバッキングに徹していて、逆に成長を感じる。ムギのオルガンも歯切れよくなった。律のドラムはやっぱり走りたがってる感じ。
  • たぶん梓のギター、トレモロのエフェクトを使ってるので、やっぱりさわ子先生のギターのお金で機材を買ったのでは?あのあと、律のドラムもフロアタムが増えてたし。

続きは、また。

*1:放課後ティータイム・作詞:稲葉エミ『五月雨20ラブ』ポニーキャニオン 2010年 より引用