ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

武田邦彦と生物多様性0

2011-06-18 22:06:05 | 武田邦彦
 お久しぶりです。最近は忙しさにかまけて記事を書いていませんでした。武田邦彦が生物多様性分野で不適当なことを書き散らかしています。とうとう、「生物多様性のウソ」という本まで出版されました。今、読んでいますが、いろいろと笑える出来ですね。この本の書評はまた後程として、彼がブラックバスについてあからさまに調べていないので突っ込みを入れてみます。

「生物多様性」の偽善 ブラックバスが不人気なのは味のせい

外来種についても同様で、日本では外来種は駆除して在来種は守るのは当たり前のことのように考えられているが、そもそも日本の生物が多様なのは、四季があり、寒い地域と暖かい地域の両方から外来種が入ってきたからである。


そもそも、外来種をどういう意味で使っているのか不明。まさか、人により持ち込まれたもの以外も含んでませんか?あいにくと、外来種が入ってきて生物多様性が多様化したなんて日本どころか世界レベルでも聞いたことがありませんが。ここで言う多様化というのは単純な種数の話ではなく、生物間の相互作用、それが織りなしてきた進化的歴史も含むのですけど。外来種問題の根本である生物学的均一化についても書いてみましょうか。


日本にブラックバスが入ってきてすでに1世紀近くが経つが、この魚が嫌われるのは食べてもあまり美味しくないという理由だけである。フナより美味しくて高額で売れるのなら、喜んで繁殖させるはずである。

うん、ごめん、あなた取材してないでしょ?ブラックバスって美味しいから。皮に臭みがあると言われるので、皮をはいできちんと処理したブラックバスは淡泊で美味しいです。琵琶湖博物館のレストラン「にほのうみ」ではブラックバスの天丼がメニューにあります。僕も今までに3回食べていますが、非常に美味しいですね。琵琶湖博物館に行った際にはぜひどうぞ。
話がそれました。このような文章を書くということは、裏を返せば実際に現地に赴いて食べてみるということもせずに想像で語り、下調べも碌にしていないということです。
さて、もう一つ指摘しておきましょうか。ブラックバスが嫌われる理由というのは在来の魚類、昆虫類などを捕食するからです。漁業という面で見れば、有用魚種であるワカサギ等の捕食も含まれますか。欺瞞云々いうなら、せめてワカサギは良くてなぜブラックバスがダメなのかという論理展開の方がまだそれらしく見せられますけどね。
ブラックバス問題に口をはさむなら、せめて環境省のオオクチバス小委員会の資料に目を通さないと現在では話にもならないのですが、この人を含めブラックバス問題に異議を唱える人がそれに目を通した形跡がかけらもないのはなんとも。

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31 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (symbioticworm)
2011-06-21 21:24:55
はじめまして。

>あいにくと、外来種が入ってきて生物多様性が多様化したなんて日本どころか世界レベルでも聞いたことがありませんが。

外来種が生物多様性に一役買っているとされる例は全くないというわけでもないようです。
http://e360.yale.edu/feature/invasive_species_reconsidered_finding_a_value_in_non-natives/2373/

ただ、生物多様性というものをどう定義するかにもより、人為の絡まない状態を多様性の最上とするか、あるいは人間の存在を計算に入れた上で新たな生態系観を構築するかという立場の違いによって、上記の例の評価も変わろうかとは思います。自分としては「外来種が多様性に貢献している例があったとしても、多くが侵略的かつしばしばコントロールできないものであることを鑑みれば、外来種を多様化のために積極的に利用することは難しいだろう」といった面白みのないスタンスになりましょうか。

いささか脇道に反れたコメントになってしまいましたが、エントリー自体の主旨である「武田邦彦の生物多様性に関する主張はおかしい」「ブラックバスは日本の既存生態系にとって侵略的である」という点については自分も全く同意するところです。駄文失礼しました。
Unknown (Unknown)
2011-06-21 23:28:34
琵琶湖博物館まで行かないと美味いブラックバス食えねえとか超意味ねえww
Unknown (マルボロマン)
2011-06-21 23:59:14
いや、そんな事はないです、食べる気があるのなら、自分で釣って自分で調理するのが手っ取り早い、新鮮だし。
皮と皮下組織の処理さえ丁寧に出来れば後は普通の白身の魚と同じと考えて良いです。
別に難しくは無い、"丁寧に"ポイントはそこだけです。
Unknown (ななし)
2011-06-23 21:10:30
ブラックバスはかなり前から食えるけど面倒って言われてるよ
前の仕事してたときに、休みになると山中湖へ釣りに行く釣りキチの先輩が言ってた。
アレは日韓WCの前頃だったから…それぐらい昔。
symbioticwormさん (梨(管理人))
2011-06-23 23:35:03
論文紹介ありがとうございます。梨のつたない理解力だとポリネーターは送粉により、受粉をより促し、樹木はより多くのハビタットを作るということでしょうか。
とはいえ、本来数百、数千年以上の単位で判断しなければならないものを数十年で判断するのも早計と考えますがいかがでしょう?
Unknown (マルボロマン)
2011-06-24 00:02:46
ななしさん
面倒と言ってしまえば面倒なのかもしれません。
でも手間自体は他の多くの魚と変わりません、もっと面倒な魚は沢山いますし。
好みや調理法でも違ってきますが、素材の味自体で言えば鯉や鮒よりも数段上だと思います。
おかしな表現かもしれませんが、普通に旨いですよ。
こればっかりは実際に捌いてみないと、食べてみないと絶対に判らないと思いますが。
ブラックバスが経営的になりたつか? (食品流通業者)
2011-06-24 02:15:35
外来生物を食品として商売にするのはとても難しいです。
事例がないわけではないのですが・・・
 北海道のレイクロブスター(ウチダザリガニ)
 儲かっているか聞いたら、笑われました。


そもそもですが、
『その種がいなくなること』
『経営として継続した収入を得る』

という目的が、対立構造となるのでは?
せっかく設備を導入しても、いなくなってしまえば、投資回収できません。

あとは、それが売れるかどうかですね。
確かに、ブラックバス美味しいです。でも処理が面倒でした。自分で釣ったのであれば食べますが、商流に乗るとそれなりの値段になってしまい、わざわざ買うほどの価値があるかと言うと微妙なところですね。
武田先生のおっしゃる『味が不味い』とは、もしかしたらそういうことかも知れませんね(愛のある解釈すぎます??)。

レイクロブスターは、高級レストランで使われる食材ですが、一般消費者は生きているものは手に入らないし、ブラックバス同様に処理も料理もメンドクサイです。味も美味しいけれど、その価格で買うか?というと難しいです。

Unknown (マルボロマン)
2011-06-24 14:09:59
>そもそもですが、
>『その種がいなくなること』
>『経営として継続した収入を得る』
>という目的が、対立構造となるのでは?
需要があれば最終的には養殖になるのでは。
ティラピアや鱒類のように。
すごい解釈だ (daku)
2011-06-24 21:16:02
>この魚が嫌われるのは食べてもあまり美味しくないという理由だけである。

少なくともこの解釈はおかしいですね。
どんな感覚だ。

私はある溜池で水落としてさらうのに立ち会ったんですが、4世代ぐらいのブラッフバス百数十匹と、大型のコイ一匹と、なぜかヨシノボリ一匹とモクズガニが一匹、あとは何もいない状況でした。
これはあかんわと思いましたね。水生昆虫見つけられないんです。

こういうことで嫌われているんだと思いますよ。

基本的にブラックバスがスズキ科でまずくはないですね。
Unknown (symbioticwrom)
2011-06-25 13:22:12
>>梨(管理人) さま
>論文紹介ありがとうございます。梨のつたない理解力だとポリネーターは送粉により、受粉をより促し、樹木はより多くのハビタットを作るということでしょうか。
>とはいえ、本来数百、数千年以上の単位で判断しなければならないものを数十年で判断するのも早計と考えますがいかがでしょう?

理解の拙さという点では負ける気がしません(笑)。それはともかくとして。

数百年のオーダーということだと、先に挙げた記事ではミツバチ(1600年代にイギリス人によって、養蜂目的で他地域に移出)が例として挙げられていますね。ただ、現代ならいざ知らず1600年代のミツバチ移入時点での各地の生態系がどのようなものであったかは、網羅的な記録としてはないのだろうから、ミツバチの移入が多様性増加に決定的な貢献をしたかどうかの判断には留保が必要でしょうね。ただ、数百ましてや数千年それ以上の時間が経過した後だと、ミツバチのようなある一つの種が及ぼした影響がどのようなものだったか、いなかった場合にはどのような生態系が構築されただろうか、というのは判断自体が困難になるかもしれません。一応、人為ではないものの他地域からの生物移入が千年以上のスケールで多様性を増しうることの傍証として、 http://www.nytimes.com/2008/09/09/science/09inva.html?pagewanted=1 こちらの記事(金科玉条のようにCarl Zimmerの記事ばかり紹介することになり申し訳ない)で、350万年前の温暖期に北極海へ他海域から貝類他の軟体動物が侵出した際、北極海の多様性は有意な低下を見せず、上昇したという研究結果が引用されています。ただこれも、引用元のこの研究者は昨今の温暖化で同様の多様性増加を期待しているなどいささか楽観的に過ぎるきらいがあり、上述の研究にもバイアスが入っている可能性、またそもそも人為移出入にそのまま適用できない点で、弱い傍証に過ぎないものではあります。

現時点で多様性増大に益していると考えられている種の(あるいはその逆も)いくつかも、今後の時間経過によって再評価されるということはありうるでしょう。ただ、原理的には人為による外来種と、人為によらず生息域を拡大させた種に、性質上の明確な区別は設けられず(傾向の違いはありますが)、後者では移入地域に新たな淘汰圧とニッチを提供、もしくはそれ自体も本来の生息環境と異なる地域に適応することで亜種~別種へと進化し、短期的なα多様性増加のみならず長期的にはβ多様性を増加させたことが想定されるならば、前者でも同様の現象が起きないとは言いきれない。数十年オーダーの経過観察ではそれを裏付けるアメリカでのタマリスク、プエルトリコでの非在来種植林他の例は、今後の観察ももちろん必要だけれども、現時点では自分としては積極的に否定する理由を持たない(単に自分が知らんだけかも)。

なんというか、「大進化が起こることは実験的に再現できないけれど、ガの工業暗化や植物等での小進化の再現を傍証として、正しいだろうと言える」という感じに近いでしょうか。「人間の生物移出入行為の総体はともかく、個別のケースである外来種それぞれについては、在来種と同程度に多様性に貢献するものがあり得る、また実際にいくつかの種が貢献的な影響を示している」というような主張に、論理的な整合性とある程度の傍証がありまた確たる反証がない限りにおいて、仮説として「正しかろう」という評価を暫定的に与えることには、自分としては吝かではないなあと(無論、大進化の確からしさとは雲泥の差ですが)。もちろん反証される可能性は依然として残っているし、反証されない場合でも外来種の全てが多様性増大に貢献するわけではなく侵略的性質を持っているものもあり、また貢献可能性を持っている種でも在来種との安定的な関係を構築するのを待たぬ頻度と量で移入されれば過剰な淘汰圧を与え、ある地域の既存の生態系に致命的なハザードを齎すことは、可能性と事実ともにあるのだから、生物移出の理由や言い訳としてこれらを論拠とすることはできないし、それにも関わらずいささかオプティミスティックに響き過ぎ「政治的」に利用されかねないこの種の論について、懸念と慎重な態度を持っていらっしゃる梨さまの意図も深く理解するところです。

http://togetter.com/li/153065
武田邦彦『生物多様性のウソ』、Twitterでも話題になっているようですね。件の本の全体的な評価はやはり浅慮浅学ということでおおむね一致しているようですが、本筋から離れて「生物多様性」や「外来種」をどう捉えるかに関しては色々な(トンデモではない)意見が交わされており、自分としても興味深いです。