ブルーレイレコーダー、1年で半値のワケ
ブルーレイ・ディスク(BD)レコーダーの販売価格が急落している。同じような機能を搭載した機種が、1年間で半値近くに落ち込む例もある。家電量販店やメーカーの販売競争が厳しさを増しているのに加えて、外付けのハードディスク駆動装置(HDD)などを使ってレコーダーなしで録画できる薄型テレビが割安感から人気を集めていることも値下げ圧力になりつつある。
実質5万円前後の製品も
「予想よりはるかに安くてびっくりした」。都内の家電量販店にBDレコーダーを購入しにやってきた30代の男性はほおを緩める。売れ筋の500ギガ(ギガは10億)バイト容量のHDDを搭載した製品では、8月下旬時点で、量販店のポイント還元を考慮すると実質5万円前後の製品も出てきた。昨年同期には、同じ容量帯の製品で10万円以上する例も珍しくなかった。
▽ブルーレイディスク・レコーダー(単位千円) | 8月下旬 | 7月中旬 |
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BD-HDW53(シャープ) | 61.8~69.8 | 67.8~75.6 |
DVR-BZ130(三菱電機) | 48.6~58.8 | 55.8~62.8 |
DMR-BW680(パナソニック) | 69.8 | 79.8~85.0 |
BDZ―RX35(ソニー) | 62.8~64.6 | 67.1~72.8 |
▽DVDレコーダー | ||
RD-X9(東芝) | 59.8~64.8 | 64.8~68.5 |
▽液晶モニター付きDVDプレーヤー | ||
SD―P75S(東芝) | 15.1~16.6 | ― |
DVP-FX730(ソニー) | 16.4~19.3 | 15.8~17.0 |
BDレコーダーは需要自体は堅調だ。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2009年度のBDレコーダーの国内出荷台数は323万6千台と前年度比70%増加。今年4月以降も前年同月の実績を大幅に上回り続けている。薄型テレビの購入に併せて、ハイビジョン放送に対応していないDVDレコーダーから買い替える例も多い。
ただ、最近は外付けや内蔵のHDDなどを使い、レコーダーなしで番組を録画できる薄型テレビも増えている。調査会社のBCN(東京・千代田)によると、薄型テレビの販売に占める録画機能付きの機種の割合は8月に26.3%に達した。「録画可能な機種が売り上げの6割を占める」(ソフマップ秋葉原本館)店舗もあり、レコーダーの需要の一部を奪っているとみられる。
外付けHDDに録画できるテレビが人気
人気の要因は「レコーダーに対する割安さ」(大手量販店)だ。例えば500ギガバイト容量の外付けHDDは1台5千~7千円程と、同容量のBDレコーダーの1割程度の価格で買える例が少なくない。録画した番組はBDに保存せず一度見たら消す、という使い方をするのであれば、はるかに少ない投資で済む計算になる。
録画機能付きテレビにはHDD内蔵型やBD内蔵型など様々なタイプがあるが、最も人気が高いのが外付けのHDDに録画できる製品だ。東芝は2007年にUSB接続のHDDに録画できる液晶テレビを世界で初めて発売し、現在では8割の機種に同様の機能を搭載している。テレビの画面上に表示される番組表から録画する番組を簡単に選べるなど使い勝手も良好で、売り上げを伸ばしている。
需要喚起狙い、さらなる値下げも
シャープは今年7月に発売した「アクオス クアトロン」シリーズの一部機種でUSB接続のHDDへの録画に初めて対応した。日立製作所は07年にカセット型のHDDに録画できる薄型テレビを世界で初めて発売し、現在発売中の機種のほとんどが同様の機能に対応している。
外付けHDDに録画できるテレビは「年末商戦に向けて他社が追随して発売することもあり得る」(BCNの道越一郎アナリスト)との見方が多く、存在感はますます高まりそうだ。一方、競合する形になるBDレコーダーは長時間録画や番組編集機能など優位な点も多いが、需要を喚起するためにさらなる値下げを強いられる可能性もある。
(商品部 蛭田和也)
モノやサービスの値段にまつわる「なぜ?」を様々な角度から掘り下げる連載。商品の種目ごとに細かく担当を受け持つ日経記者が、その担当の商品・サービスの値段の変化がなぜ起きたのか、日本だけでなく世界のトレンドまで鋭く切り込みます。