「完全主義」という言葉のイメージは、日本では必ずしも否定的ではないでしょう。

しかし英語での完全主義(「perfectionist」)は、「自分自身や周囲を評価するときに、過剰なまでに完全性を求めること」という解釈。あまりいい意味では用いられないのだと、『今の働きが「しんどい」と思ったときの がんばらない技術』(西多昌規著、ダイヤモンド社)では説明しています。たしかに日本の社会では、完璧で隙がないことは美徳のように思われがち。しかし著者は、「誤った完全主義は、イノベーションの力を削いでしまうだけでなく、個人のエネルギーをもダウンさせてしまいます」と問題意識を投げかけます。また、「ほんの少し考え方を変えるだけで、精神的に肩の力が抜けて、効率的に結果が出せ、合理的に成功に近づくことができる」とも。

例えばいい例が、ルーティンワークに100%のエネルギーをつぎ込むことの無駄。なぜならそれは(脳を使わなくてすむだけに)、ひらめきや直感からますます遠ざかることになってしまうから。

なるほど、そのとおりかもしれません。そして本文中、特に説得力を感じさせるのは、「まったく『予定のない』予定を入れる」という項目です。一日の作業内容を書き出して視覚化し、そのなかに「まったく予定を入れない」予定、すなわち「ひらめきのための時間」を設定しようという提案。

Step 1 自分の1日の行動を書き出してみる。

Step 2 その中で、ルーティンワークに費やしている時間をマーカーで色づけしてみる。

Step 3 自分の一日がいかにルーティンワークで占められているか、視覚化する。

Step 4 スケジュール帳の中に、1週間に1回、それが無理なら1カ月に1回、30分程度の「予定のない予定」を組み込んでおく。

Step 5 その時間は、カフェなどでボーッとする「ひらめきの時間」にあてる。

『今の働きが「しんどい」と思ったときの がんばらない技術』(108ページ)

完全主義的思考に捕らわれすぎると、なにが大切なのかがわからなくなってしまいがち。そういう意味で、「忙しいときにこそ、あえて15分ほどボーッとする時間を設けてみましょう」という著者のアドバイスは的を射ているように思えます。

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(印南敦史)