【2月7日 AFP】韓国で開催される平昌冬季五輪への北朝鮮選手団で団長を務める元吉宇(ウォン・ギルウ、Won Gil-woo)体育省次官が、訪問先の選手村でボランティアの名札に書かれた氏名を読み上げながら、一人一人に笑顔であいさつした。だが、ある女性の名札を目にして凍り付いた。

 その若い女性は、高正恩(Ko Jong-Un)さんといった。名は北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長と同じだ。元氏は一瞬、沈黙した。

「(元氏は)こちらを向いて私の名札を読み始めると、固まってしまいました。数秒間、一言も発しませんでした」。高さんは聯合ニュース(Yonhap News)の取材にこう語った。「それから『あなたの名前を声に出すのは恐れ多い』と言われると、その場は一斉に温かい笑いに包まれました」

 北朝鮮を3代にわたって支配する金一族は国内で崇拝され、金正恩氏は通常「最高指導者」や「将軍様」と呼ばれる。子どもたちは幼い頃から、正恩氏の父である金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記や、祖父で北朝鮮を建国した金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席の功績を教えられて育つ。すべての家庭、そして国中のプロパガンダ掲示板には、2人の肖像が掲げられている。

 朝鮮語の名前には、男女どちらにも使われる名前があり、「正恩」もその一つで、女性に使われることが多い。

 さらに北朝鮮代表団の一人が高さんに職業を尋ねると、ソウルにある西江大学校(Sogang University)でアメリカ文化を専攻していると述べた。「すると高官は『ヤンキーには全員パンチを食らわせないと』と答え、さらに笑いが起きた」と高さんは語った。(c)AFP