たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

アルバム「放課後ティータイムII」という青春の軌跡を、真剣に聞こうか!

放課後ティータイムII」は、かなり変則的な二枚組アルバムです。
ご存知の人も多いと思いますが、一応説明すると普通の新曲集である「Studio Mix」と、『けいおん!!』23話「放課後!」で録音されたカセットそのものを再現した「Cassette Mix」の二枚組。限定版だと本当にカセットもついてます。
で、この「Cassette Mix」が本当に凝っている! 単に音質劣化させただけじゃないよ。
ちゃんと一発録りを再現しているので演奏そのものも、歌も全くの別録り。
だからこそ、今までのCD全部持っている人ほど「Cassette Mix」が面白い!
 
アニメを見ていた人ほど感慨深い「Cassette Mix」。何度も聴きこんで覚えているレベルの人ならその演奏や歌のちょっとした差が楽しいですし、そうじゃなくても曲を聞くたびに一期・二期の記憶がぐいぐい蘇ってきます。
じゃあアニメを見ていなかった人は全く楽しめないのか?
否!
けいおん!」シリーズの曲はかなりしっかりと「女子高生が演奏する体裁の、かつ音楽が分かっている子が作曲した曲」として作られているので、そこを理解しておけばしっかり芯の通ったガールズロックとして聞くことが出来ます。
とは言っても単純に絶賛してもそれはあくまでも「けいおん!ファン目線」なので、ちょっと冷静に……はなれないけど、音楽としての面白さの面+「けいおん!」エピソードを交えつつ、それぞれの曲を紹介・レビューしてみようと思います。
「Cassette Mix」の方の「今撮っています!」感がこのCDのキモだと思うので、そちらをメインに、足りない部分は「Studio Mix」からあげていきます。
 

●1、Introduction●

曲ではないです。カセット録音練習をしている放課後ティータイム一同の録音の様子をおさめたものです。
これは「けいおん!!」23話を見ていないとなんのこっちゃさっぱり分からないと思うのですが、逆に見ていると一回上書きしたりした部分もしっかり再現されているので、かなり凝っているのが分かると思います。
で、録音するときは、ボタンを押しこんで録音開始するタイプ(録音ボタンと再生ボタン同時押し型)なので、必ず「ガチョッ」という音がします。このCDで唯が録音開始・停止をする部分は必ず入っているので、注目して聞くと彼女たちがどう動き回っているのが脳内に浮かぶと思います。
 

●2、ふわふわ時間

個人的に「けいおん!」の一番のテーマソングは「ふわふわ時間」だと思います。一番最初に澪とムギが作ったのがこの「ふわふわ時間」であり、二年生の学園祭ライブで全員の絆ができたのもふわふわであり、梓が新歓ライブで演奏するために純・憂と練習して引き継いだ曲もふわふわ。まさにふわふわにはじまりふわふわに終わる、という名曲でありテーマです。
ふわふわ時間」がよくできているのは、楽器を始めたばかりの人が最初に挑む曲としてかなりよく調節されている、ということ。一番・二番までだったら、多分リードギターリズムギター・ベース・ドラム・キーボード、共に導入編としてはもってこいだと思います。超絶簡単、とは言わないですが、うまくごまかしながら合わせるにはもってこいなんですよね。特にギター・ベースの入門編としては本当によく出来ていると思います。慣れてきたら間奏も頑張ろう!
また梓加入前と加入後で全然曲調が違っているのも楽しいところ。歌がコーラスになっているのも長く楽しめるポイントになっている、本当に愛されソングだと思います。
一番の特徴は唯と澪が交互に歌っているということ。これは今回初!
最初は賛否両論あったラップ部分、確かに「はっ?!」というびっくりっぷりなんですが、澪が一年生の時に出たCDからかなり変わって演じなれてきているのか、今回のバージョンは無理にはっちゃけているでもなく、非常に味のあるパートになっています。澪の「そう、寝ちゃお」は今までの「ふわふわ時間」で一番落ち着いていて、ジワジワこみ上げてくる出来。
制作スタッフからの「是非楽器に触れてみて!」というメッセージのようなこの曲を最初に持ってきたのは、「けいおん!」らしさの現れだと思います。
ちなみに律のカウントが「ワン、ツー」ですぐ唯が入れるようになったのは、彼女たちの演奏の成長の証です。
 

●3、カレーのちライス●

放課後ティータイムメンバーお気に入りと思われる「カレーのちライス」。アニメ本編では歌まで含めてちゃんと演奏されているシーンは一度も出ていません(イントロと終わりだけは出てます)。しかしことあるごとに「カレー、カレー」と演奏したがる曲なので二番目。
ほんと見事なまでにキーボード(ムギ)がはっちゃけた曲です。かなりロック色が強く、非常にスピードの早い曲です。メタルではないですが、ロックオルガンがとてもくっきりと目立っているため、聞いて一発で覚えられるイントロがとても印象的。
バンドをイメージするとき、どうしてもキーボードがいないことが多いので影が薄くなるキーボード、それに焦点をあてて「キーボードかっこいい!」と思わせる作りになっているのはスタッフの目論見かもしれません。だとしたら大成功ですね!このキーボードのイントロ弾きたいもの。
ロックキーボードパワーが本当に厚みがあるので、70〜80年代ロックのような曲調なのもポイント。歌詞はガーリーですが、音はぶっといロックンロールになっています。ディープ・パープルとかを連想させる曲です。
そしてマイナーではなく、徹底的にアッパーな曲調で終始しているので、「けいおん!」を知らない人でも聴きやすい曲だとも思います。
演奏レベル的にはかなり高度なものを求められる曲ですが、逆に言えば高校生で練習しまくって到達できるギリギリなレベルだとも思います(GO!GO!やUtauyoは別次元)。ライブでやると掛け声もかけられる汎用性の高い曲です。多分HTTの子達も「ごはんはおかず」の前はこれで観客のハートをキャッチしていたんでしょうな。
だからこそ、いろんな時に「カレーやろうカレー」とやたらこの曲にこだわっていたのかもしれません。
 

●4、わたしの恋はホッチキス●

HTTの曲の中では逆に異色な感じのロックバラード。アッパーな曲ぞろいなので、その中では比較的落ち着き目。
しかしこのタイトルからよくぞこんな名曲と名歌詞ができたと思いますよほんと。これも「けいおん!」を知らない人が最初に違和感なく聞ける作りです。
これも唯と澪のダブルボーカルの交代制になっている貴重なトラック。無印「放課後ティータイム」を持っている人こそ楽しめること間違い無し。
全体的にどのパートも、「ふわふわ時間」よりワンランク上の演奏を求められる曲です。そこまでめちゃくちゃ難しいわけではないですが、要練習な曲。リズムキープも難しい曲なので、律がよく「走りがち」と言われるのはこの曲なんじゃないかと踏んでいます。
サビの盛り上がり感は非常に透き通っていて、聞いている側としては横ノリしたくなるタイミングまで計算されて盛り込まれています。また他の曲よりちょっとテクニカルな背伸びしている感じがあるため、演奏する人にも人気のある曲。いろいろなことしているので飽きないんですよ。また締めの部分、全員がうまくあわせる一体感を感じられる曲でもあります。
この曲があったからこそ、最終回の「天使にふれたよ!」があったともいえるかもしれない、そんなステップのような曲です。
さわ子先生が「若いということは恥ずかしい事だらけですからね」と曲のあとに語っているのは非常に印象的です。確かに「恋」が「ホッチキスで綴じちゃおう」というのはなんとも照れくさい。しかし歌詞をよく見ると恋だけではなく「悩み」「願い」すべてをホッチキスで綴じていったらものすごい分厚くなって蓄積されていく、というまさに青春そのもののような非常によい文なんです。
 

●5、ふでぺん〜ボールペン〜●

これもまあ……よくぞこの歌詞からこんな名曲ができたもんです……! 歌詞はホッチキス以上に澪イズム全開。むずかゆさをそのまま押し切っています、が、曲と合わせるとなんでこんなに聴きやすくてすんなりくる音楽になるんでしょう。これが化学反応なのか。
この曲も唯と澪の交互ボーカルになっています。二年生学校祭で澪が唯のかわりにしっかりと歌い上げた、自分の殻にこもらなくなった記念すべき曲でもあります。
唯が夏の海合宿でどうしても弾けなかったのがこのイントロ部分。実際「ホッチキス」同様に、「ふわふわ時間」よりも少しだけ難しくなった背伸び曲になっています。最初にふわふわを練習したあとに、ふでぺん……というのは非常にステップアップとしては最適。高校生が演奏できる最適な難易度だと思います。
この曲もサビ部分が非常にしっかりしていて、メインメロディラインの歌唱力が引き立つ作りになっています。ムギは作曲でサビ部分を引き立たせるテクニックをよく知っているようですね。
加えて演奏する場合、特にベースラインが特徴的ではきはきしているので、ツーフィンガーで弾いていてノリノリになれるんじゃないでしょうか。
他の曲にも言えることですが、「泣かせるポジティブ」が詰まった象徴的な一曲だと思います。ギターもないとるしね。
 

●6、ぴゅあぴゅあはーと

二期の澪ファンクラブで初披露された、その時のために作られた曲。
なので、ボーカルの澪を引き立てるようなメロディラインと曲の構成をわざと狙っているのが面白いところ。サビに向かってまさに上昇気流のように舞い上がっていって、「あい☆Don't mind!」で思い切り上に突き抜けていく構成が、本当に「聴く人のためにつくられた!」という明確な意図を感じます。しかし「あい☆」って文字で書くと恥ずかしいな!「I」じゃないのね!
さすが三年生の時に初めて作られたというか、他の曲(ふでぺんなど)に比べて最初から難易度は高めで、かなり慣れている人が演奏するための曲になっていると思います。キーボード、ギターに見せどころがあるのもポイント。
あとりっちゃんはドラムで三連符を多用するんですが(ダダダ・ダダダという感じ)そういうドラムのおかず部分が非常に多い曲でもあります。りっちゃんもこの曲に挑む状態の時は、ふわふわよりも技術的に余裕があって遊びが出来るレベルに達しているであろうことが伝わります。
一部で言われいたものに「軽音部に新入部員が入らないのは、彼女たちの演奏レベルが高くて引け腰になっているからじゃないか」という説があるんですが、この曲なんかはまさにそんな感じ。「ふわふわ」よりも小技が随所で個々の楽器で使われているので、「わ、なんかすごい」と圧倒されるかもしれません。
とはいえ練習すれば高校生で演奏できるレベルではあると思います。曲調が優しいので忘れそうになりますが、結構早いです。
 

●7、いちごパフェが止まらない●

今回発表のの完全新曲としては一番最初に聞くことになるのがこれ。「Studio Mix」でも一曲目ですね。3年の新勧の時に演奏されたことになっている曲です(情報に感謝!)
ものすごくアッパーで、ギターとベースのシンクロが気持ちイイ疾走感あふれる曲です。
どちらかというと放課後ティータイムの曲というよりも今まで出ていたキャラソンに近い(「ギー太」とかに近いです)かなりテクニカルなメロディーラインと、高度な演奏テクニックを要求される曲。これボーカルが音程取るの結構難しいです。
そのせいか、かなりハイテンションになれる縦ノリの曲に仕上がっています。彼女たちの技術的に見ても、三年生の学園祭とかで演奏するために作られたかなり高校時代後期の曲なんじゃないかと思います。
唯が歌っているためかなりアニメ声っぽいんですが、曲調は他のJ-POPな曲と違って洋楽に近いテンションだと思います。これ歌う人変わったら全然雰囲気の変わる曲なので、澪バージョンもちょっと聞いてみたいです。
ただ、澪はいちごパフェを恋愛に例えていそうなんですが、唯は「いちごパフェうまー!」で貫き通しているので、その唯の脳天気さが疾走感に置き換えられた曲だと思います。
「かわいいものと甘いモノが大好きで、全力疾走する女の子を描いてください!」というコンセプトで生まれてきたような、テンション上げるにはもってこいな歌です。
 

●8、Honey sweet tea time●

2期3話でムギが作った幻の曲がついにここで! しかもムギのソロボーカル!
ムギのための曲です、と言い切ります。歌詞も別にムギオンリーじゃないんですが、ムギの感じている楽しい世界そのものです。二期でサブキャラ状態から最も目立つキャラまで上り詰めたムギの行動原理、「何もかも全部楽しい!幸せ!」という思いがそのまま詰め込まれています。
しかし、この曲割とバラード調の優しい曲になるかと思いきや、意外なことにりっちゃん張り切りまくっているため、かなりアッパーな曲になりました。多分しっとり弾き語りできる曲だと思うんですが、それよりも「よしみんなで走ろうぜ!(律)」「はしろー!(ムギ)」というノリで、何気にかなりハイパワー。もちろんキーボードがメインになっていてギターも引き気味にサポートにまわっているんですが、ドラムがいろいろ面白いことしでかしてます。
ここでA面終わり。澪の「再開します」が二回入っているのが、さすがカセット生撮り。
 

●9、ときめきシュガー●

今回の個人的ヒット! 
歌ってることは砂糖まみれで甘々なんですが、演奏の仕方でギターがソロでもかなりキメていますし、ブリッジミュート(ギター弦の根元の張っている部分(ブリッジ)に手をあてて「ズンズン」と細かく切れる音にすること)がかなり決まっており、メタル色の濃い一曲になっています。ベースのイントロもかっこいい! このへんが、澪のちょっと受身だけど自己主張はしっかりした性格を表してますね。
まあメタルと言い切れるほどメタルでもないんですが、今回のCDの中では一番メタル。ガールズメタルとでもいえばいいのかしら。ムギのキーボードもかなりロックしてます。
メロディー自体は複雑なことをしておらずPOPなんですが、とにかくギター! すこぶるギター! エレキギター音に惚れ惚れしてしまう人の耳に訴えかけてくるパワーがあります。ドラムもかなり高速でがんがんに叩きまくってますね。シンバルがっつんがっつん響いてます。
他の曲は割とギター一本でも二本でも応用がききますが、この曲はギター二本必須。最後のサビループ部分でギター二本・キーボード・ドラムがぴったり合う部分は、もう最高に爽快。そこを駆け抜けるずっしり効いた重低音。この部分、全員が顔をあわせて笑顔で演奏してるんだろうなあと思わせられる、音を通じて人間関係の手をつないでいる良曲です。
これは「けいおん!」全く知らない人でもガチで楽しんで聞けると思います。
 

●10、冬の日●

一転してシャッフル気味の跳ねるリズムが気持ちイイ、ついつい体が動きそうになる曲。
で、歌詞ですよ問題は。この歌詞は一期番外編の澪が作って律がボツにしたはずの曲!(律がラブレターと勘違いしたため)
歌詞だけ見ると切ないバラードになりそうなんですが、ポジティブでハッピーな曲調にしているのが作曲家ムギ流。全く不安さや切なさが入っていません。「ちょっとせつないね」と言っているのに、すっげー楽しそうなんですこの曲。
この曲の構成がまさに「けいおん!」という作品の姿勢だと思います。どんなに悲しいことや切ないことでも、全部「楽しい」に変えてしまう。それが軽音部5人の思考なんです。だから常に笑顔。貪るように今この瞬間を楽しんでいる。「せつない」も「うれしい」も、気づいたら「楽しい」に変わる。
かなり意表を突かれた曲でした。あの歌詞からこのメロディとリズムが出てくるとしたら、作曲のムギはすごい強固な思いの持ち主か、もう根っから「楽しい」を全身で体現しているかどちらかでしょう。
跳ね気味のリズムを全員が捉える必要があるので、演奏レベルは高め。多分演奏コピーするのが非常に楽しい曲だと思います、聞いて楽しい演じて楽しい。楽しいの弾丸。
 

●11、五月雨20ラブ●

なんつーかこの題名が澪イズムの権化ですね。初めて聞いたときはなんのことかと目玉丸くしたものです。
唯一、マイナーなメロディーラインで始まるこの曲、しかしサビ部分に入るとしっかりポジティブな音になっています。
裏打ちのリズムを取るキーボードがかっこよく、また歌声も澪ファンクラブの子が聞いたら卒倒するかもしれない色気満載。
にしても他の曲と比べてもこのメロディーの取り方はちょっと特殊。独特な掴み所のなさが歌詞とあっていて印象に残る曲になっています。J-POPにしても珍しいタイプです。
個人的にハイハットを駆使しまくっているこのドラムの奏法はなかなかクルものがあります。
歌のあとの「リコピン」は修学旅行ネタですが、これ20話のライブ後でも言っていたんですがやっぱり聞いている余裕は梓にはなかったみたいですね。ひとりだけ理解出来ていませんでした。
そういえば学園祭で唯作詩の「ごはんはおかず」「U&I」が採用されましたが、それを同時に澪の曲も……となっていたのがもしかしたらこのへんなのかもしれません。

 

●12、ごはんはおかず●

祭りと聞いてかけつけてきた放課後ティータイム
アンドリューW.K.さながらの超アッパーなパーティーソング! カレーといいごはんに執着を見せる彼女たちのこの曲、この常に笑顔が絶えず、毎日がパーティータイムなノリがこの「けいおん!」のキモであることを思い起こさせる一曲です。
ほんと、かきふらい先生の歌詞をよくここまで聞いている人を巻き込む曲に仕上げたものです。
途中の小芝居も、通常版だと照れくさそうにしているのんびり感に満ちていますが、やはり「Cassete Mix」は生録音の意識もあって、その小芝居すらも歌詞のように歌いきっています。
歌詞は唯イズムですが、とにかく曲が一回聞いたら忘れない上に周囲をアッパーにするライブ向けの典型のような曲。こういう曲は何曲か用意しておくとライブの時に重宝しますので、それでボツから救済されのかもしれません。ライブの構成を考えたのはムギなんじゃないか説に一票。 
 

●13、U&I

最後にどうしても唯が録りたい、といって録音したのがこれ。ライブと同じように締めに持ってきました。
憂との絆を描いた曲ですが、そういう作品の内容を知らなくてもダイレクトに相手の心に訴えかけてくるだけのパワーに満ちた最強のラブソングです。
誰が誰にかって? そりゃもう録音している、五人の仲間に対してであり、スタッフが作品に対してであり、そして作品が視聴者の僕らに対してであり。
全体的にポジティブで明るい曲がそろっている彼女たちの「私たちの記録」ですが、その中で特別級にこの曲輝いています。それは唯一「楽しい」だけじゃなくて「ありがとう」という思い出を曲にこめているから。間奏のキーボードソロと唯のボーカルから、一斉にみんなが入っていく部分は「反則だろ!」と言いたくなるほど。いやあ、こんなじわっとくる反則なら、許す!もっとやって!
実はこの曲めちゃくちゃ早いです。ドラムとベースのリズムを聞けば分かると思いますが、かなり高速。だからかなりグッと来るメロディーラインもあくまでもハッピーかつハイテンションで保たれています。これ多分ピアノソロアレンジとかにしたら、聞くだけで泣きそうになる曲になると思います。
曲の難易度的には他の新曲よりも簡単です。この曲で大事なのはうまく演奏することよりも、最高に「ありがとう」をこめることと、ジャッジャッジャッジャと全員が揃う部分を完璧に揃えること。音を合わせる楽しさをそのまま表に出した結果のような、彼女たちの集大成的な曲です。「私たちのアルバム」のラストに本当に相応しい。
これも「けいおん!」詳しく知らなくても聞ける曲だと思います。J-POPの王道よりもロック・メロコア色が強いため、間奏とのメリハリの強弱もやたら印象に残ります。
 

●天使にふれたよ!●

「Studio Mix」収録。
前日に「私たちのアルバム」を作るために遅くまで残っていたことを考えると、この曲を作って練習した期間相当短いです。下手したら卒業式前日の夜か、あるいは登校しなくていい日に来てみんなでこっそり練習したのか。
完全に梓のためのメッセージソングですが、二番を聞くことで梓だけではなく彼女たち同士、ひいては視聴者に向かっての別れについても歌い上げています。
歌詞は本当にストレートな、本当の意味での「ラブ」ソング。ラブっていっても男女間の恋愛だけじゃないですよ、あなたが大好きだよ、大大好きだよというまっすぐすぎる、大人になってからちょっと照れくさくなるものを、高校生達が自分たちで作って歌い上げているという設定をフル活用した強力な曲。
それを悲しそうにしない。メロディラインがポジティブであるがゆえに、涙腺を刺激するんです。
作中演奏は確かに「あんまりうまくないですね!」と言われる部分もちょっとあったかもですが、こちらは本当にうまく録音されているので、クライマックスに向かう曲の熱さを聞いていただきたいのです。
 

放課後ティータイム

J-POPカラーがものすごく強い一曲。逆に言えばあまりこの子達はライブなどではこの曲は演奏しないかもしれません。あくまでも自分たちのために作った曲という感じがします。
ムギが作ったメロディという枠ははみ出ないようにしながら、キャラクターソングのように全員が順番に歌う構成。
彼女たちの高校三年間をアルバムにするから曲を作ろう、じゃあどんな曲がいいだろう?となったときに生まれた曲なんじゃないかと思います。だから曲調は卒業ソングにも使えると思います。ロック調ですが、ピアノアレンジするとかなりしっとりした曲になるんじゃないかしら。
ただ、そこをロック調で通して「ハッピー」の枠からハズレないからこそ、「けいおん!」なんですよね。
 

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改めて全曲聞きなおして思いました。
本当に徹底して、ポジティブな曲しかない。
何もかも「楽しもう」という気迫で音楽を作り、歌い上げられたアルバムです。
スローバラードがあえてなく、一貫して元気の塊ががっつんがっつん打ち出されてくる、まさに「捨て曲がないアルバム」どころか「彼女たちの渾身の弾丸しかない」というアルバムになっています。
そういう意味では唯のアニメ声に抵抗さえなければ、「けいおん!」を全く知らない人でもテンションをアッパーにしまくる効果バツグンのアルバムだと思います。
演出としてはほんとギリギリのところを攻めていると思います。ある程度高校生でも演奏できるレベル、悲しい雰囲気にしない、全部が学園祭で発表することを前提にしたアッパー感。この制約の中で「私たちの軌跡」として詰め込んだ、彼女たちにとっての一生の宝ものをおすそ分けしてもらっている、というのが聞いているだけで伝わります。だからこそ、「けいおん!」見ていなくても音楽としては十二分に楽しめるけど、知っていると100倍以上湧き上がるものがでかくなります。
けいおん!」をそこまで知らない人は、まずは「Studio Mix」でガールズバンドの楽しさを味わうのが吉です。「けいおん!」を全部みている人、彼女たちの三年間に感動をした人は「Cassette Mix」はかけがえのない宝物になると思います。彼女たちの軌跡=自分たちの楽しんできた軌跡でもあるからです。さわちゃんの「あとからちょっと恥ずかしくなるけどそういうもんだ」という視点がさりげなく入っているのもうまい。
 
正直自分は作業中このCDかけられません。
引っ張られるから。
自分の大好きなモノが、「好きだ!」って叫んでいるの聞いたら魂そっちにもってかれちゃうんだよ!
聞いているといろんなもの思い出しすぎます。本当に「私たちの絆」。
大学に入ってから、あるいはみんなが大人になって仕事はじめてから、このテープを聞くときにどんな気持ちになるかを考えると……いいなあ。
これ聞いてる時、思いっきり青春してるよ、自分も。
 
それにしても、梓がすごく一生懸命落書きしようとして描ききれていないのがニヤニヤします。
ぶっちゃけ梓の描いた唯の似顔絵見るだけで元取れると思うまじで。