経緯度座標系での正方格子の直角さは、平面直角座標系に移すとどのくらい損なわれるか

経緯度座標系での正方格子の直角さは、平面直角座標系に移すとどのくらい損なわれるか、数値実験してみました。結論からいうと、一般にはかなり損なわれます。
Web 用のシームレスなマッピングシステムでは、EPSG:900919 と揶揄されるように、メルカトル系の投影が使われます。メルカトル系の投影の利点は、煎じ詰めると同一経度、同一緯度が同じ座標におちることです。このため、経緯度座標系の格子は、縦横比の変更程度で、メルカトル系の座標系の格子に収まります。
ところで、空中写真系のオルソ画像は平面直角座標系で仕上がってくるのがふつうです。画像は、極力リサンプリングを避けることが重要です。そこで、平面直角座標系から格子切り出しをして、それをメルカトル系の格子と見なせるのは、格子がどのくらい小さい場合か、という問題が発生します。
この問題に目の子の解答を与えるために、数値実験をしました。

場所の選定

座標系原点から遠くなるにつれ、投影上の不都合が大きいと思うので、日本の平面直角座標系において、座標系原点から非常に遠い地点を選定します。http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/patchjgd/download/Help/jpc/jpcmap.htm を見ると、択捉島の東端はかかり座標系原点から遠い気がしたので、
ラッキベツ岬付近 北緯45度30分 東経149度53分
を実験場所として選定しました。

実験

13系の原点及び上記実験場所において、経緯度幅 60秒、30秒、15秒、7.5秒の正方格子を平面直角座標系13系に座標変換したときに、南北方向の辺の東西方向へのずれ、東西方向の辺の南北方向へのすれをm単位で計算します:

# -*- coding: utf-8 -*-
require 'rubygems'
require 'sequel'

class App
  def initialize
    @db = Sequel::connect('postgres://fitter:happier@localhost/more_productive')
  end

  def close
    @db.disconnect
  end

  def run(lng, lat, kei)
    @epsg = kei + 2442
    [60, 30, 15, 7.5].each {|sec|
      zure(lng, lat, sec)
    }
    close
  end

  def zure(lng, lat, delta_sec)
    delta = delta_sec / 3600.0
    r = @db["SELECT ST_X(ST_Transform(ST_GeomFromText('POINT (#{lng} #{lat})', 4326), #{@epsg})) AS x0, ST_X(ST_Transform(ST_GeomFromText('POINT (#{lng} #{lat + delta})', 4326), #{@epsg})) AS x1, ST_Y(ST_Transform(ST_GeomFromText('POINT (#{lng} #{lat})', 4326), #{@epsg})) AS y0, ST_Y(ST_Transform(ST_GeomFromText('POINT (#{lng + delta} #{lat})', 4326), #{@epsg})) AS y1"].first
    print [delta_sec, r[:x1] - r[:x0], r[:y1] - r[:y0]].join(', '), "\n"
  end
end

print "13系原点\n"
App.new.run(144 + 15.0 / 60, 44, 13)
print "ラッキベツ岬付近\n"
App.new.run(149 + 53.0 / 60, 45 + 30.0 / 60, 13)

この結果は、次のとおりとなりました。

13系原点
60, 5.71313857390082e-13, 0.135045657231763
30, 2.85635214149926e-13, 0.0337614139253316
15, 1.4281217807974e-13, 0.0084403534595717
7.5, 7.14047317398824e-14, 0.00211008836235704
ラッキベツ岬付近
60, -130.316595826996, 91.7658352890285
30, -65.1536413980066, 45.8488164410228
15, -32.5756564839976, 22.9158830369997
7.5, -16.2875371770351, 11.4558102400042

つまり、原点付近であれば、1分の正方格子で10cm, 30秒の正方格子で 3cm, 15秒の正方格子で 1cm 以下のずれとなりますが、原点から大きくはなれた場所では、1分の正方格子で100m以上のずれとなるようです。つまり、経緯度での正方格子は、原点から離れたところではかなり倒れたものとなります。

結論

平面直角座標系で作成された画像を、メルカトル系の正方格子にはめ込む場合、画像座標系からの単純な格子切り出しでごまかせるのは原点付近のわずかな地域だけで、一般的にはリサンプリングは避けられません。

考察

楕円体面を、距離と面積を正しく保つように工夫しつつ平面にうつしこむ矛盾が、原点からその地点まで累積されて、その地点の方位のずれとして現れるものであるから、そのくらいずれるものなのだろうと思います。
間違っていたらすみません。