環境保護団体を標榜(ひょうぼう)するシー・シェパードのメンバー6人が11日、岩手県の三陸海岸にある大槌町で、地震と津波に遭遇していたことが分かった。「イルカ保護のため」として、同地を訪れていた。6人全員が無事だった。リーダーのスコット・ウェスト氏は手記を発表し、甚大な被害に驚き、心を痛めると同時に、自分たちに向けられた「日本人の親切さと温かさ」を強調した。

 津波が押し寄せた時、メンバーらは、イルカ処理施設を見ることができる高台にいた。そのため、巨大な津波が街を破壊する様子を目の当たりにした。夕方になり、残骸(ざんがい)の上で漂流する女性が助けを求めている悲鳴を聞き、ロープを投げるなどしたが届かず、道路に出て消防車を呼んだ。消防隊員が救出しようとしたが成功せず、女性が乗る残骸は海の方にゆっくりと流されていった。あたりは暗くなり、女性の声も聞こえなくなった。ウェスト氏は「ショックだった。信じられなかった」とつづった。

 11日夜は、メンバーが乗ってきた自動車の中で過ごした。外気はセ氏0度程度に冷え込んだが、ガソリンが十分にあったので、凍えることはなかったという。夜明けごろに山火事が発生し、人々が逃げてきた。周囲の道路は自動車が走行できる状態ではなかったので、徒歩で脱出した。その後、安全な内陸部に向かうことにしたが、警察官に事情を話したところ、遠野市にあるホテルを手配してくれた。約50キロメートルの道のりだったが、歩くしかなかった。大槌町の市街地は壊滅状態で、レンタカーを利用することも、不可能だったという。

 すると、住民男性のひとりが、遠野市に向かう自動車2台を手配してくれた。運転してくれたのは、経営していた商店が津波で流されてしまうなど、「すべてを失った人だった」という。ウェスト氏は「この日、われわれに向けられた親切と寛容さを、書きつくすことはできない」、「日本の人々は暖かくて親切だと、これまで以上に確信することになった」と記した。

 ただし、クジラやイルカ漁に反対する立場は変わらず、「イルカなどの虐殺をやめれば、日本は海洋保護のリーダーになる可能性が大いにあるのだが」との考えを示した。(編集担当:如月隼人)



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