写真●日本マイクロソフトの吉川顕太郎サーバープラットフォームビジネス本部クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部ディレクター(写真:中根 祥文)
写真●日本マイクロソフトの吉川顕太郎サーバープラットフォームビジネス本部クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部ディレクター(写真:中根 祥文)
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 「企業がビッグデータを活かすには大きく3段階ある。第一に大量データを高速処理する基盤を整備し、第二にデータを現場で利用するための基盤を整える。そして第三に、ビジネスシーンへ実際に適用していくことだ」。都内で開催中の「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」で、日本マイクロソフトの吉川顕太郎サーバープラットフォームビジネス本部クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部ディレクター(写真)はこう述べた。

 吉川氏の講演は「ビッグデータ」に対する企業の関心の高まりについて分析するところからスタートした。具体的には今日におけるビジネススピードの変革を背景に「よりタイムリーな意志決定が求められる中、“統計データよりも流動的なデータを見たい”、“年次や月次だけでなく日次のデータが欲しい”、“刻一刻と変わる消費者ニーズに対応した多様なデータを集めたい”といった企業ニーズが出てきている」と語った。

既存のシステムではユーザーのニーズを満たせない

 ただし、そうしたニーズがありながらも企業のビッグデータ利用においては理想と現実にまだまだ乖離がある、と吉川氏は話す。「調査会社のデータによれば現在、日次よりも鮮度が高いデータにアクセスできる企業は今のところ2割に満たない。より鮮度の高いデータを欲していても、既存のシステムでは対応できないから」(吉川氏)。だからこそ、まずは大量データを高速処理する基盤が必要というわけだ。
 
 こうした基盤を整備するための様々な製品を、日本マイクロソフトは揃えていると吉川氏は言う。「例えばHadoopを活用した非構造データの高速バッチ処理システムも、従来の構造データにアクセスするためのデータウエアハウスアプライアンスも用意してある。ビッグデータ時代におけるRDBMS不要論を唱える人もいるが、実際にはこれらが両輪となって使われていくはずだ」と、同氏は主張する。
 
 続いて講演では、ビッグデータを高速処理し活用していくための基盤として、2012年上半期のリリースを予定する次期SQLサーバー「SQL Server 2012」(開発コード名Denali)が紹介された。吉川氏は同製品の特徴としてまず、データを高速に処理できる「カラム ストア インデックス」という新機能をアピール。「データを列単位でまとめて圧縮して格納するので、データベースの不要なI/Oを削減できる。特に日時や月次での集計でパフォーマンスが向上する」と説明した。

 また、もう一つの目玉である「SQL Server AlwaysOn」についても「可用性向上や災害対策、負荷分散などをコモディティ化したハードウエア上で実現できるのがポイントだ」と語った。AlwaysOnは現行の「SQL Server 2008 R2」が備えるフェールオーバー機能やミラーリング機能を拡張したものである。
 
 さらにSQL Server 2012の先行評価を紹介するため、吉川氏はソフトバンクモバイルの柴山和久モバイル・ソリューション本部情報企画統括部長を壇上に招いた。同社は、出荷前のSQL Server 2012製品を事前検証する早期導入プログラムの参加企業だという。柴山氏の部門ではネットワーク設備やユーザーからのフィードバックを基に、携帯電話のエリア計画を立案・実行している。「季節や場所、時間帯によって変動し続ける電波状況をきっちりと解析し、エリア改善を戦略的に進めていく。そのためにはビッグデータをいかに素早く効率的に分析できるかどうかが最重要課題になる。その鍵を握るツールがSQL Server 2012だった」と、柴山氏は製品導入の狙いを語った。「これまで電波状況の分析に用いていた専門的なGIS(地理情報システム)ソフトが不要になるなどシステムコストの削減効果もある」(柴山氏)。

データマイニングの普及にはスキルやユーザー教育が課題


 
 その後に再び登壇した吉川氏は、国内企業が手元にある各種データをどれだけ有効に活用しているかについて話を展開。「多くの企業がBIツールを導入済みだが、データマイニングまで実施しているのは全体の2割に満たない。ツールのコストが高く操作性に難があることや、利用者側のスキルやユーザー教育の不足などが原因になっている」と分析してみせた。
 
 その上で同氏は、ビッグテータを現場社員が活用するための道具として、SQL Server 2012の新機能「PowerView」にも触れた。これは、ExcelやWebブラウザを操作して使えるレポーティング機能であり、続けて「構造データと非構造データを組み合わせて分析する」などのデモンストレーションが行われた。例えばERPから取得した新製品の販売データと、Twitterでその製品に関するつぶやきの数との相関関係を表示する、といった内容である。
 
 講演の後半ではソフトバンクモバイル以外のSQL Server 2012導入企業の中から、コニカミノルタビジネステクノロジーズと名古屋銀行の取り組みもゲストスピーカーによって紹介された。コニカミノルタでは同製品を、1万人規模のカスタマエンジニアから上がってくる大量の行動履歴を分析し、生産性向上のための施策に役立てていく。同社がSQL Server 2012を採用した理由は、追加開発コストが低く、ユーザビリティの面でも現行システムとの親和性が高いことだと言う。もう一方の名古屋銀行は6年前にSQL Server 2005を導入し、その上でCRM基盤を構築・運用してきた経験を踏まえ、SQL Server 2012に対しても安定性や信頼性を高く評価する。さらにこの半年間の検証を通じて、現場社員が手軽に扱えるBIツールとしても期待を寄せている。

 最後に吉川氏はビッグデータ利活用のポイントについて総括。「“データを捨てないで活用する”という前提に立ってデータを高速に処理できるようなシステムインフラを構築し、現場がデータを柔軟に活用するための仕組みを用意することが重要だ」と締めくくった。