非国民通信

ノーモア・コイズミ

煽りや脅しは、深刻な害をもたらします

2011-07-15 23:16:56 | ニュース

「過剰反応」の声の中、もっと遠くへ…何が親を動かしたのか(産経新聞)

  ところが、事故はなかなか収束しない。インターネット上とテレビで報じられる“情報の差”にも不信感が募った。

 例えば、都内で放射線量数値を公表している個人サイトでは3月15日以降、数値が急上昇。しかしテレビなどでは報じられず、「経済活動を停滞させないため、政府は『安全だ』と言わざるを得ないんだろう」と感じ、「自分の身は自分で守らなければ」と、自主避難を決めた。夫も「旅行気分で避難すれば」と賛同したことから行き先を検討し、友人が住む石垣市内に行くことにした。石垣島は原発から約2千キロ。安全と安心のため貯蓄を取り崩し、両親からも援助を受けた。

 「夫がいないのは寂しい。子供も父親がいないので精神的に安定していない。でも、子供の健康が大事。二重生活で月10万円から15万円ほどかかるが、1年は暮らすつもり」

(中略)

 石垣市では、民宿やゲストハウスのほか、「テントで生活をしている母子もいる」という話が広がった。このため、7月3日に市役所と住民が協力して被災者・避難者を支援するネットワーク「ちむぐくる」が誕生した。同市によると、把握できただけで6月末現在、東京、神奈川、千葉など首都圏から10世帯19人が自主避難。また、180人が参加した「ちむぐくる」の交流パーティーには首都圏から避難した親子30人が参加した。

 本人は大真面目なのでしょうけれど、こういう事例を聞かされると不謹慎は承知で失笑せざるを得ないところがあります。例えばあの地下鉄サリン事件が起こってからしばらくの間、オウム真理教は単に糾弾の対象であるだけではなく、日本中に笑いのネタを提供する存在でもありました。何かを盲目的に信じている人々の取る行動は、その信仰の「外」にいる人間にとっては少なからず滑稽なものなのでしょう。冒頭で挙げた例によると「都内で放射線量数値を公表している個人サイト」の情報を信じて、はるばる一家離散で沖縄まで飛んできた人がいるようです。私なんかは母親のヒステリーに振り回される子供のことを心配すべきではないかと思えるところすらありますが、飛行機に乗れば当然ながら被曝しますので、放射線はどんなに微量でも危険なのだという流行りの主張を鑑みて、ちゃんと移動には飛行機ではなく船を使ったかを心配した方が世間のウケは悪くないでしょうか。

 まぁ色々と不安を煽る人も多いだけに、謂わば福島在住者は世論やメディアによって絶えず脅しをかけられているようなものです。そこでパニックに陥る人が出てしまうのは、一概には責められないものなのかも知れません。でも、そうした煽り報道によって冒頭の記事で紹介されたような福島の母親が「騙された」というよりは、やはり主体的にヨタの方を「信じた」のだと言わざるを得ないところもあります。そもそも個人サイトなんて「そういう考えもあるか」ぐらいに見ておくべきものであって、間違っても真に受けるべきではないでしょう。「ネットで真実」よろしく専門家の説明ではなくネット上で流布される真偽不明の情報を探してきては鵜呑みにするのは、それこそカルトに嵌るのと大差ないように思います。で、周りの人が何を言っても聞く耳を持たなくなる、自分が選んだ情報を唯一無二の「真実」として信奉してしまうわけです。ネットや週刊誌の情報に踊らされるのも個人の趣味に止まる範囲なら勝手にしろとしか言えませんが、これに周りが巻き込まれるとなると困りますよね、例えば子供までもが付き合わされたりとか。

 さらに報道によると、石垣島には「東京、神奈川、千葉など首都圏から10世帯19人が自主避難」、「交流パーティーには首都圏から避難した親子30人が参加した」そうです。これが多いのか少ないのかは判断を保留しますが、首都圏から避難とは、まさしく「サバイバルごっこ」とでも呼ぶほかありません。どこぞやの「教祖様」に入れ知恵でもされたのでしょうか。本人は危機を本気で信じているのかも知れませんが、それはその人の頭の中の出来事でしかないわけです。北朝鮮の粗大ゴミ発射実験の際には日本各地で「防衛」のためミサイルが配備されたりして、それを見物しに人が殺到したなんてこともありましたけれど、これと似たような、ある種の高揚感が避難者を突き動かしているような気がします。本当は何も身に迫ってはいないのに自ら危機意識を膨らませ、嬉々に立ち向かう自分というシチュエーションで躁状態になっているのが実際のところではないかと。福島の人がパニックになるのは同情できますが、東京近辺の人にはねぇ……


放射能研究センター/放射能から子供を守る勉強会

~子どもたちの健やかな未来を創るために~

幼い子ほど、体に入った放射能で、ガンや白血病の進行は早まります。 チェルノブイリ周辺では、事故の5~10年後に、小児甲状腺ガンの発症が約100倍になりました。大人でも5倍以上です。
 
5月26日の「特ダネ」(フジテレビ)で「放射能から子どもたちを守れ!」の特集が組まれたように、多くの方が「何かおかしい」と気付いており、実際には東京も大量に汚染されています。
 
勉強会では、今回の原発事故に関する正確な知識を伝えます。 子供たちや仲間を守るために、チェルノブイリでも用いられた、体内に累積する『放射能』を除去できる、最新テクノロジーもご紹介します。 輝ける未来のためにも、ぜひ、この勉強会にご参加してみてください。 放射能の真実についてが、わかります。 次世代のことを真剣に考えている方、特にお子さんをお持ちの方は、必聴です!!
 
放射能の影響で起こる主要な症状

•鼻水が止まらない
 •だるい
 •吐き気
 •下痢
 • 胃の調子が悪い
 •鼻血が出る
 •頸筋や背中のあたりが重い
 •頭痛
 •おでき
 •今年から「花粉症」になった
 
日本に住んでいる全ての方に関係ある内容です。ぜひご来場ください。

 さて、こんな催しもあったようです。こういう文脈の中で持ち出された辺りを差し引いても流石に怪しいと感じる人が多いと思いたいですが、いかがなものでしょうか。だいたいにおいて放射線とか放射性物質ではなく放射「能」という言葉を持ち出している論者や団体は、ほぼ確実に非科学的なトンデモの類ですから相手にしない方が良いです。実際、この「放射能研究センター」がどういう団体かはリンク先に掲載されている連絡先の電話番号で検索してみれば明らかだったりするのですけれど、まぁ似たようなメッセージを発信している人は他にいくらでもいるのですから手に負えません。

 バーナム効果と呼ばれる代物があります。実は誰にでも該当する曖昧で漠然とした説明を、自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう心理学の現象ですね。典型的な例が血液型占いで、「あなたはこういう性格です」と、もっともらしいことを言われると何となく当たっているような気になってしまうわけです。これと似たトリックが「放射能」の影響を喧伝するのに使われているフシはないでしょうか。ちょっとした体の不調は誰にでも起こりうるものですし、今まで健康だった人でも被災地に近ければ震災によって相応のストレスを受けて体調を崩す人も多いはず、それは至って自然な変化なのですけれど、この手の変化を「放射能の影響です」と力説している人は少なくないように思います。

 「放射能に効く」と称して未認可薬を売りさばいては摘発される業者も散見される他、AERA辺りを筆頭としてみのもんたばりの民間療法を説くメディアも多々あるわけです。それが全くのプラセボであればまだしも、うがい薬を飲むような真似をすれば健康被害が心配されるところですし、高額な「放射能対策グッズ」購入のために大枚をはたいて家計に深刻なダメージを与えるような事態もあり得ます。家族が新興宗教に嵌って(高額な壺を購入するようになったり!)家庭崩壊みたいな話は時に耳にしますけれど、家族がネット(or週刊誌)で真実に目覚めて高額な放射能対策グッズを買い漁るようになったら、まぁ悲惨な話です。

 専門家よりも個人サイトや自称「ジャーナリスト」の類を信奉する傾向が高まると何が起こるでしょうか。自分あるいは子供が体調を崩したとき、適切に医師の診察を受けるようであればいいのですが、「きっと放射能のせいに違いない」「あの医者は本当のことを話していないに違いない」と信じて専門家ではなく自分で探した民間療法や代替医療の類に嵌り込むとなれば、事態は本当に深刻なものとなってしまいます。ある種の医療ネグレクトであり、紛れもない児童虐待の一種を、結果的に行っている親も出ているのではないかと危惧されるところです。

 政府/専門家/電力会社は真実を隠している云々と陰謀論が隆盛を極める時代ですけれど、その陰謀論的世界観に振り回される人々もまた少なくないとすれば、それは由々しき問題です。政府その他の情報公開や説明が100点満点とは言いませんが、だからといって不足分を勝手に妄想で乗り換えたような単なる煽り文句を信奉するようになれば、それは上で書いたようにカルトに嵌るのと一緒なのです。「自分の身は自分で守らなければ」とは勇ましいですけれど、単なる独りよがりになってしまっては元も子もありません。政府報道を鵜呑みにしないで自分で調べてみる姿勢は結構なことであるにせよ、一方で煽り報道や怪しげなネット情報の類を信じ込んでしまうようでは、やはり事態を悪化させるばかりです。まぁ被災地域の住人に冷静さを要求するより、安全なところから危機を煽っている連中に黙れと言うのが筋なのかも知れませんが、他人の口はふさげませんので……

 

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27 コメント

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Unknown (リンデ)
2011-07-16 07:44:55
本当に自分や子供の身を守りたいのであれば、放射線の知識を勉強して自分で判断できるくらいのことをした方がいいんでしょうね。「気持ち」だけで守り切るのは難しいと思います。
Unknown (はぬる)
2011-07-16 09:51:26
放射能の汚染に敏感な東京の人たちが、豊島に築地市場を移設しようとしている、いやしくも今回の地震を「天罰」と仰せられた
某石原慎太郎陛下
を批判どころか、選挙で当選させてしまうのは、私の目には非常に滑稽に写ります。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-07-16 13:28:43
>リンデさん

 自分や子供を守りたいという「気持ち」だけがあっても意味はないですからね。ちゃんとした知識を持つことも必要なのですが、なぜか誤った知識や煽り情報のばかりを仕入れて、正しい知識の方を捨ててしまう人がいる、何とも由々しき事態です。

>はぬるさん

 豊洲でも計ってみたら放射線量が高かったなんて言う真偽不明の噂もありますが、元より飛行機に乗ったり温泉に入ったりは気にしない人たちですからね。放射線量に敏感なのではなく、単に流行に敏感なだけなのだろうと思わざるを得ません。
Unknown (IBA)
2011-07-17 01:20:41
 すいません、書きたいことが山ほどあるんですが……

 この世の終わりとか、人類滅亡とかは、下層部特有の貧乏臭い発想だと思うんですが。逃げた人だけ生き残って、逃げなかった人は全員死んで欲しいんですかね。

 なんでわざわざ、太陽光が強い南日本に逃げるんですかね。北海道のほうが……北海道と東北の違いも分からないんですかね?

タバコ吸ってるのに原発に反対してる人は、一から十まで何一つ信用できません。


放射能で体の不調って。この間、水戸市の千波湖行ったら……市民ランナーが元気に走り回ってましたが、なにか?(笑)都合が悪いことは無視の方向で。
Unknown (東 武志)
2011-07-17 09:16:42
ネット上の情報が全て正しいとは思いませんが、現状では大手新聞やテレビが必ずしも正しい情報を流しているとは思えません。あなたは権威にすがるタイプですね。 爆発が起きた時にキチンとした情報がマスコミから報道されれば多くの方が初期被爆を回避出来たのです。政府の情報を記者クラブが垂れ流して独自の情報を正確かつ真摯に報道していれば被害は少なかったはずです。現在も東京や千葉の一部は放射線量が高い地域があります。身体への影響は今後何十年も先に表れます。絶対大丈夫と言い切れるでしょうか?年間被曝量を空間線量のみで計算している政府や大マスコミを信用できるはずがありません。最近のセシウム牛の問題で明らかになりましたが着実に体内被曝が進行しています。今後ジワジワと身体的な影響が出始めても沖縄に移住した方々のことをあなたは笑うことができますか?逆に笑われない事を祈ります。因みに私の兄は読売新聞の政治部記者ですが、浜岡原発の場所すら知りませんでした。今の記者のレベルはそんなものなのです。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-07-17 11:41:51
>IBAさん

 ある意味、終末思想と言いますかハルマゲドン願望みたいなのがあると思うんですよね。加えて、福島の人がこのまま普通に生きていれば、彼らの信じてきたこと(放射能の害云々)が嘘っぱちだということが照明されてしまうわけで、そうなる前に福島の人には避難してほしいみたいなところもあるのではないでしょうか。

>東 武志さん

 それを言うなら東さんはオカルトにすがるタイプなのでしょうね。「多くの方が初期被爆を回避出来た~」と仰いますが、チェルノブイリと違って問題となるレベルの被曝をした住民はいないようですが。実際に福島の避難対象区域外の住民が浴びた放射線量を問題視するなら、それこそ国際線に乗ったり温泉につかることすら心配しなければならなくなります。また基準値超えのセシウムが検出された牛肉に関しても、それこそ200グラムのステーキを365日食べたら年3~4mSvの域であって、基準値を超えたものがあったこと自体は好ましくないにせよ健康に影響のある範囲ではありません。これで体内被曝が云々と言うのは針小棒大ですし、ましてや移住という極めて負担の重い対策を採るなら本末転倒です。
某省で対応してますが (NS)
2011-07-17 13:22:10
信じられないなら、自分で調べて欲しいと思います。
実際のところ、調べる手段は政府も1個人もたいして変わりません。
IAEA,CODEX,米国、EU等、様々な機関が報告書出してますし、研究報告も教科書もたくさんあります。
私も日本語・英語・ロシア語等の文献数千ページ読み漁りました。
確かに政府・県の発表にも疑問なところはありますが、そもそも「失笑もの」の人たちは信じたいものを信じてるだけで、科学的にどうかということは無視してるような気がします。
人まかせで後悔はいやですね (淫獣夜叉)
2011-07-17 13:35:40
極端な行動にみえますが各自、リスクを引き受けての行動、親として「サバイバルごっこ」もありだと思います。
放射能の影響などは将来どのうように出るかわかりません。後になって、あの時、避難していたらと後悔しても、誰も、助けてくれませんし、極端な行動を笑った人達が10数年後、助けてもくれませんし。
Unknown (通りがかりの者です)
2011-07-17 13:57:58
この研究センターの住所でググると出てくるValiant Univ.なるものはロン・ハバード、つまりサイエントロジーの「大学」の日本校。
http://valiantuniv.jimdo.com/valiant-university%E3%81%A8%E3%81%AF/
あぶない、あぶない。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-07-17 14:20:58
>NSさん

 そう、本当に信じたいものを信じるばかりで、本人は調べているつもりでも実は何も学んでいないばかりか、自らの思い込みを深めるばかりだったりするのですよね。何とも不毛なことにしか思えませんが、それを周りが煽っているかと思うと……

>淫獣夜叉さん

 人の噂に振り回されて、「あのとき軽はずみなことをしなければ良かった」と後悔する確率の方がずっと高いのではないでしょうか? 影響はない可能性の方が圧倒的に高いものを避けるために一家離散とは馬鹿げた話です。「リスクを引き受けての行動」とは言いますが、本当にリスクを評価した上での行動なのか、単にパニックを起こしているだけなのかは区別すべきです。

>通りがかりの者ですさん(次回からは個別のハンドルネームをご使用ください)

 結局のところ、科学的であることを放棄する人々が続出する中で、世間がサイエントロジーの類と同水準にまで落ちてしまったところもあると思います。ここで挙げたもの以外でも、カルト的なものが密かに影響力を強めているところはありそうです。

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