FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

瞳の奥の秘密/ ファン・ホセ・カンパネラ監督

瞳の奥の秘密 [DVD]

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 生まれて初めてアルゼンチンのミステリ映画を見たが、めちゃくちゃ良かった。「えっ、これで終わりなの?」などと考えていたときに、突き付けられる重く意外なエンディングが好ましい。まだ二月だが、おそらく二〇一一年に見た映画のベストスリーには必ず入ることだろう。
 刑事裁判所を定年退職したベンハミンは、日々の空虚さを持てあましていた。やがて彼は、二十五年間決して忘れることができなかった一つの未解決事件を題材に小説を書き出す。
 それは銀行員リカルドの妻、教師であるリリアナの殺人事件に絡む物語であり、ベンハミンと上司イレーネとの恋物語であり、ベンハミンと部下パブロとの友情の物語だ。
 二十五年前。リリアナという女性が暴行されたあげく、殺された。同僚の、人権を無視した、いい加減な捜査に憤ったベンハミンは、酒浸りのパブロを協力者とし、独自に調査を始める。夫リカルドに見せてもらった写真の中で、ベンハミンは不審な男イシドロを発見する。ベンハミンは、イシドロを真犯人と睨み、追跡を始める。リカルドもまた、最愛の妻を殺害した犯人を自分なりのやり方で探し、追っていた。
 「長い年月をかけ、複数の人間を蝕んでいく事件」という当方好みのテーマと、衝撃的な結末を併せ持つミステリ映画。あまり詳しくは書けないが、あのオチを知ったとき、なぜ二十五年という、とても長い年月が必要だったのか、よく分かった。これが一年前だとか、三年前だとか、比較的短い期間だったのなら、この後味はなかった。
 見ていて、「この立場のある人が、こんなことできるんだろうか」という疑問が浮かんだが、それは検索して調べてみると、当時のアルゼンチンの政情的不安がもたらしたものの一つらしい。
 不倫もののラブストーリーとしての側面もあり。
 ミステリ好きには自信を持ってお勧めできる傑作。