2011年7月6日21時32分
九州電力玄海原子力発電所(佐賀県)の運転再開問題を県民に説明するために国が主催した6月下旬のテレビ番組で、九電幹部が再開賛成の意見を電子メールで送るよう、自社や子会社の社員らに働きかけていたことが6日わかった。九電の真部利応(まなべ・としお)社長は同日、会見して謝罪した。
定期検査で停止中の原発は全国的に運転再開のめどが立っておらず、玄海は「再開第1号」の有力候補だったが、メール問題で今夏の再開は絶望的になった。
6日には海江田万里経済産業相が、全国の原発を対象に新たに安全性評価(ストレステスト)をすると発表。7月中にも再起動の可能性があった玄海をはじめ、全国の原発の再開が先延ばしになる見通しだが、九電のメール問題でさらに遅れそうだ。
番組は定期検査で止まっている玄海2、3号機再開の是非を判断するために制作された。真部社長は会見で「国の説明の信頼を損なわせた。おわびしたい」と話した。
九電によると、6月22日に本社の原発関連部署の課長級社員1人が会社名で、原発関連業務を担当する子会社4社の社員に運転再開の立場から意見を送るよう電子メールで指示した。西日本プラント工業、九電産業、西日本技術開発、ニシム電子工業の4社で、社員は計約2300人いるが、最終的に指示された人数はわからないという。
ほかにも玄海原発や川内原発(鹿児島県)など九電の3事業所にも、同様のメールで意見送信を呼びかけていた。会社のパソコンではなく自宅から送るよう求めており、九電関係者とわかりにくくさせていた可能性もある。
番組は6月26日、佐賀県内のケーブルテレビで放送され、インターネットでも配信された。国の担当者が県民代表の7人からの質問に答える形で、原発の安全性などを説明した。
番組にはメール473件、ファクス116件の意見が寄せられ、ネット配信への書き込みも1452件あり、一部は番組で紹介された。「電力不足で熱中症が心配」「原発の廃止で産業が海外流出する」といった運転再開に賛成の立場の意見もあったが、九電の指示で送られたものが実際に紹介されたかどうかは分かっていない。
真部社長は「説明会は中立的であるべきなのに、結果的に手を加えることになった」と発言。自身の関与は否定したが、「責任は私にある」と述べた。
国には6日に事実関係を報告し、再発防止を指示された。海江田経産相は「様々な立場からの率直な意見や質問に答えるという番組の趣旨を、根本から損なう言語道断の行為で、極めて遺憾」との談話を出した。
この「やらせメール」問題は、6日の衆院予算委員会で、共産党の笠井亮議員が指摘。菅直人首相は「もし本当なら、けしからん話。しっかりとさせていきたい」と答弁した。
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九州電力が記者会見で明らかにした、「協力会社本店 各位」にあてたメールの文面の概要は次の通り。
「関係者に対して(中略)可能な範囲で、当日ネット参加へのご協力をご依頼いただきますよう、御願い致します」
「説明会ライブ配信websiteにアクセスの上、説明会の進行に応じて、発電再開容認の一国民の立場から、真摯(しんし)に、かつ県民の共感を得うるような意見や質問を発信」
「是非、ご自宅等のPCからのアクセスを御願い致します」(いずれも6月22日付メール)
「なお、ご意見はメールあるいはファクシミリで受付されるとのこと」(同月24日付メール)