Facebook社も活用、従業員評価システム『Rypple』

米Facebook社では、従業員が大量のフィードバックを頻繁に受けることが、迅速で効率的な業務につながっている。同社が利用する従業員評価システム『Rypple』について紹介。
Facebook社も活用、従業員評価システム『Rypple』

Facebook社では従業員の満足度が高いが、その秘密は何だろう? それは、同社では従業員が大量のフィードバックを受けられるということだ。

Facebook社はすでに、従業員の満足度が最も高い企業のひとつと評価されており、同社の経営陣はこうした違いが確実に定着するよう望んでいる。同社はこれまで、数カ月にわたって『Rypple』というサービスをテストしてきた。これは、従業員が多数のフィードバックを得られるようにするサービスだ。同じチームで働く人たちが互いに感謝の気持ちを交換しながら、目標への経過をリアルタイムで確認し、必要と感じるときにはいつでも同僚からの情報提供を求めることを可能にする。

米Facebook社内での9カ月に及ぶ試験運用を経て、米Rypple社は6月20日(米国時間)、『Loops』という製品を公開した。

「職場での生産性を紙の書類を使って評価するような体制は、50年前から変わっていない」と、Rypple社の共同設立者で共同CEOのダニエル・デボウは言う。「現在は、もっと高速で継続的な学習やフィードバックが可能だ。われわれは従業員同士のソーシャルな交流をとらえてそれをデータに変え、リアルで便利なフィードバックを可能にする」

Ryppleでは、従業員は4種類のフィードバックを得る。上司によるコーチング、目標までの進歩状況に関する情報のほか、匿名または記名による同僚たちからの情報、同僚たちからの「感謝」のメッセージだ。従業員1名につき1カ月あたりの価格が9ドルに設定されているLoopsでは、これら4種類のフィードを1つにまとめ、パフォーマンスに関する継続的でリッチなレビューを提供する。基本的なフィードバック・ツールだけの「フリーミアム版」もある。

Facebook社の開発部門責任者で、同社の従業員としては45番目だというボブ・トラハンは、「われわれの会社は常に、フィードバックのループを中心に構築されてきた」と語る。「開発業務のすべての作業が評価されている。Aという技術者が、Bという技術者の作業を評価する。評価の機会を週2回設定し、コーディングの速度と時間に関するパフォーマンス指標をチェックしている。だからRyppleは、われわれの社風にぴったりとマッチした」

また、同社の新卒者採用部門で、27人のリクルーターからなるチームを率いるアダム・ウォードは、これまでリクルーターたちの評価は1年に1回だったが、Ryppleを使って2週間に1回のチェックが可能になったと語る。「もし会社が過度に大規模になり官僚的になるのを避けたいのであれば、つまり、Googleや「~ソフト」で終わるような名前の企業になるのを避けたいのであれば、リアルタイムの継続的なフィードバックは重要だ。迅速に動き、官僚的になり過ぎることを回避するのに役立つ」

直属の上司だけでなく、一緒に働く多数の人々からの意見を求めるという「360度評価」は、1990年代に人気を集めた。従業員のパフォーマンスと可能性に対し、より綿密で有効な洞察を与えるという利点が期待されてのことだ。しかし実際にはさまざまな欠点があった。最も大きな欠点は、評価が頻繁に行われず、典型的には1年に1度しか実施されなかったということだ。

サンディエゴ州立大学で経営学を教えていたジェイ・ゴーペイドは2000年に、360度フィードバックに関して600件以上に及ぶ再調査を行ったが、従業員のパフォーマンスに改善が見られたのはそのうちの30%だけだった。ほかの30%については、フィードバックを見直した後でパフォーマンスが低下しており、残りはまったく影響がなかったという。

Ryppleの戦略は、より多くのフィードバックを、よりうまく整理し、従業員と雇用者の両方に対していつでも提供できるようにすることで、フィードバックをさらに効果的にするというものだ。データが継続的に供給されることは、フィードバックへのネガティブな反応を緩和し、より歓迎されるものにするとともに、より効果を上げる可能性がある。

TEXT BY THOMAS GOETZ

TRANSLATION BY TOMOKO MUKAI, HIROKO GOHARA/GALILEO