調律師なのでたまには基本の“調律”の話題を。

ピアノの調律というのは、弦の張り具合を変えて音の高さを調整する作業です。
弦は強い力で引っ張られているため、大きく狂っている状態からは
どんなにしっかり音を合わせてもすぐに狂ってしまいます。

そこで、不安定な状態を少しでも早く解消してなるべく安定させるため、
調律の前に“準備”調律を行います。


調律というのは調律前のもともとの状態が良ければ良いほど調律後の音程も安定します。

準備調律はこの“良い状態”を作り出すためになるべく音程の合った状態に近づけておく大切な作業です。


といっても準備調律で音程をピッタリに合わせたところで、結局その準備調律が終わった頃には狂ってしまっていて、
それでは準備になりません。

そこで準備調律では、準備がおわった状態で音が正しい高さになっているように、
狂う分を見越してわざとずらして音を合わせます。

そうすると不思議!準備調律が終わった頃にはピアノの音全体がだいたい音程の合った状態になっているんです。

服を買う時に、洗って縮む分を考慮して少し大きめのサイズを買うのと同じようなことですね。

この“わざと”の量をどのくらいにするのかということが一番テクニックの必要になるところです。
もちろん音域によっても狂わせる量を変えていかなければ、1台のピアノの中で合っている部分とズレている部分ができてしまい、
結局は不安定な音程になってしまいます。

「かなり大きめサイズの服を買ったら意外に縮みが少なくてブカブカなまま・・・。」
とか、
「ちょっとだけ大きいサイズにしたら縮みすぎて着れない・・・。」
また、
「袖だけ縮んじゃった・・・」

では困りますよね。

もともとのそのピアノの狂い方や量を見極めて作業する準備調律。
やはり何事にも下ごしらえは大切です。


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