Facebook経済圏とでも呼ぶべきエコシステム(生態系)の急拡大は、日本のソーシャルメディア陣営にも影響を与える。ミクシィやグリー、サイバーエージェントといった国内大手は、対抗するのか、協業するのか、独自路線を貫くのか。各社は明確な戦略を打ち出す必要に駆られている。7億人近い利用者が集い、世界中の企業がビジネスチャンスをうかがうFacebook経済圏が、日本のソーシャル市場に変容を迫る。3社の社長が現在の心境を語った。

 国内ソーシャルメディアの先駆けで、2300万人超の会員を抱える「mixi」を運営するミクシィ。笠原健治社長は「当社はFacebookを見ながら戦略を立てているわけではない。自らのやり方でソーシャル化を進めていく」と語る(写真1)。その言葉は、強烈なライバル意識の表れともとれる。

オープン化で追撃するmixi

写真1●ミクシィの笠原健治社長
写真1●ミクシィの笠原健治社長
(写真:中島正之)

 Facebookへのライバル意識の象徴が2010年9月、ソーシャルグラフを開放したことだ。外部の企業がAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を利用してmixiのソーシャルグラフ(ユーザーの交友関係情報)にアクセスし、Webサービスを開発できるようにした。

 「例えばショッピングサイトにソーシャルグラフを組み合わせれば、現実社会で友だちと一緒に買い物を楽しむように、ネット上でもコミュニケーションを楽しみつつモノを買えるようになる。ネットでの購買行動が大きく変わるだろう」(笠原社長)。mixiにとって最大の財産であるソーシャルグラフを開放することで、他の企業も巻き込んで、mixiそのものを活性化させていく狙いだ。

 だがソーシャルグラフを外部に開放するといったオープン化は、Facebookが先んじている。ミクシィが2010年9月に導入した「mixiチェック」ボタンも、Facebookの「いいね!」ボタンと同様の機能だ。

 「Facebookとは根本思想が違う」。笠原社長は強気の姿勢を崩さない。「mixiは顔見知りと濃密なコミュニケーションを取るための基盤を目指している」。オープンな交流の場であるFacebookとは方向性が異なるので、すみ分けが可能との認識だ。

 mixiの魅力を高めるために、手を緩めるつもりはない。国内でFacebook利用者数が急増してい理由の一つは、サービス開発の速さにある。対抗するには、利用者が望むサービスを迅速に開発し続ける必要がある。ソーシャルメディアの国内王者として、この点を誰よりも強く認識しているはずだ。