日本の暫定基準値が世界的に緩いとは必ずしも言えない
原発事故以降、日本の飲料水や食べ物の放射線暫定基準値が引き上げられました。
巷ではWHO基準の数百倍だ!殺人だ!というような声もあり、私もなんでそんなことするんでしょう?と思っていました。
そういう中である水産系の学者さんのTwitterでのつぶやきが目に止まりました。
日本の基準が世界的に緩いとは必ずしも言えない。EUはセシウムを1250Bqまで許容していた(http://bit.ly/iekPvi)が、4/12に、日本からの輸入食品の上限を日本の基準に合わせて500Bq/kgに削減。 http://bit.ly/fqLDaq
http://twitter.com/#!/katukawa/status/73979903946653696
へぇぇ、と思ってみてみるとたしかにそのようにかいてありました。なんとEUではチェルノ以来ずっと同じ基準で変更してなかったんですね。先程のリンク先にもありますが、実際どういう数値なのか並べてみましょう
こちらが変更前
こちらが変更後
そして、ジェトロのサイトにはこうかかれています。
<現行規則の見直しの必要性>
EUがウェブサイトで8日に公開した日本からの輸入食品のQ&Aによると、輸入食品の放射能に関するEUの現行基準は、1986年のチェルノブイリ原発事故翌年の1987年に定められたもので、24年間変えられてこなかった。基準値は年間の個人の食品の消費の10%がこの値の汚染レベルにある場合を想定しており、放射線への暴露が年間で1ミリシーベルトを超えないように設定されている。また、基準値は国際機関(WHO、FAOなど)のガイドラインに沿って作られている。
欧州委員会のバローゾ委員長は5日、欧州議会で、食品の安全基準が高い日本では、上限がEUよりも低く設定されていることから、EUもさらなる科学的分析の結果がでるまで、暫定的に日本の基準を適用すると説明した(9. Question Hour with the President of the Commission)。そのうえで同委員長は、この変更はあくまで慎重を期した決定で、予防的な措置であることを強調した。EUは、6月30日までに科学専門家委員会(EURATOM条約31条)への諮問を行う予定で、さらなる科学的分析の結果を踏まえ、3954/87の基準値を正式に改定する見込み。
EUに関してはそうかもだけど、ほかのところはどうなのよ?それも気になります。
世界での基準値を調べているサイトがありました。
日本の暫定規制値
<放射性ヨウ素>牛乳・乳製品300(乳児用は100)、飲料水300(乳児用は100)、野菜類2000、魚介類2000
<放射性セシウム>牛乳・乳製品200、飲料水200、野菜類500、穀類500、肉・卵・魚・その他500
米国
<放射性ヨウ素>170 <放射性セシウム>1200
カナダ
<放射性ヨウ素>食品1000、生乳100 <放射性セシウム>食品1000、生乳300
EU(欧州連合)
<放射性ヨウ素>乳幼児食品150、乳製品500、飲料水等500、その他食品2000
<放射性セシウム>乳幼児食品400、乳製品1000、飲料水等1000、その他食品1250
※日本から輸入される食品については基準値引き下げ。
コーデックス委員会(WHO:世界保健機関/FAO:国連食糧農業機関合同食品規格委員会)
<放射性ヨウ素>乳幼児用食品100、乳幼児用以外100
<放射性セシウム>乳幼児用食品1000、乳幼児用以外1000
出典
これを見る限りでは日本の基準ってそんなにひどいわけではなさそうです。
そうはいっても、ほんまにこの数値大丈夫なんか?っておもいますよね。しかも、暫定っていったいなに?ということなのですが、それについてはNHKのかぶんブログにあった説明が一番分かりやすいようなきがします。
国際的な基準としてはWHOの水道に関するガイダンスがあります。
WHOの基準では、ヨウ素131=10ベクレル/リットル、セシウム137=10ベクレル/リットルとなっています。
日本ではこれまで各地域の水道事業者がこのガイダンスに基づいて独自に検査を行うなどしていました。
これに対し今回の原発事故後に厚労省が通知した指標は、
大人は放射性ヨウ素で300Bq/リットル、乳児は100Bq/リットル
放射性セシウムについては暫定基準値の飲料水と同じ、200Bq/リットル(大人と乳児の区別はありません)
この数値は大きいように感じます。しかし、実はWHOの基準は平常時を想定した値です。WHO自体がガイダンスの中で、原子力事故が起きた場合、事故直後から1年間はIAEAやWHOの緊急時の基準を使うこととしています。(ヨウ素131では乳児を想定して飲料水で100ベクレル/kg)
食品や水の安全基準は元々、非常に厳しく作られます。食品や水は日常生活で誰もが心配なく口にすることを前提にしているからです。これは放射性物質でも変わりません。ただし平常時は「限りなくゼロに近づける」ことが目標で、非常時は「健康に影響が出ないレベルを維持する」というのが目標となります。
と、いうことでこの暫定基準値は一年間だけの基準ということになりますね。
じゃぁよく比べられるチェルノブイリ事故の時ってどうだったんだろう?
ベラルーシにおける法的取り組みと影響研究の概要というレポートが京大原子炉実験所のサイト内に保存されていました。
ヨウ素の数値がないのですが、参考までに。
これによると
86年の基準値
<セシウム> 飲料水 370 Bq/L ,ミルク 370 Bq/kg 野菜,果物,イチゴ 3700Bq/kg 等
88年の基準値
<セシウム> 飲料水 18.5 Bq/L ,ミルク 370 Bq/kg 野菜,果物,イチゴ 740Bq/kg 等
91年の基準値
<セシウム> 飲料水 18.5 Bq/L ,ミルク 370 Bq/kg 野菜,果物,イチゴ 600Bq/kg 等
ベラルーシは90年に独自の基準を設定しています。
<セシウム> 飲料水 18.5 Bq/L ,ミルク 185 Bq/kg 野菜,果物,イチゴ 185Bq/kg 等
こんな感じだったようです。
と、いうことで、なんとなく日本の基準ってそんなにひどいものではないということが伝わりましたでしょうか。
それじゃぁ今はどうなってんの?というのを次のブログに書くことにします。
(追記)
コメントいただいたデータの数値の部分を画像にしましたので、貼っておきます。10日目の数字が驚愕です。
こんにちは。チェルノブイリ事故での飲食品暫定基準については、以下の文献(のp71あたり)が詳しいです。
http://es.scribd.com/doc/51087283/98/National-radiological-criteria-and-standards
TAL-86(文献によってはTPL-86)には事故から10日後に設定された131-I用のものと、事故から約一ヶ月後に設定されたベータ放射体全体用のものと2種類あります。
MEDSI
2011年7月1日 at 4:08 AM
>MEDSIさん
ありがとうございます!
10日後(1986/5/6)の飲料水 3700Bq/Lはすごいですね、、、、。DairyProductsってなんに当たるんでしょう。最大74000ってのには驚きました。魚は37000。ウランをまき散らしてしまったチェルノと福島を比べるのには無理があると思っていましたが、この数字は驚愕です。
chemicalcherry
2011年7月2日 at 1:23 PM
ありがとうございました。「世界もおどろく日本の基準値」http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.htmlのサイトの数値があまりにべらぼうに違っていたので、びっくりして自分なりに信頼性を探っているところで出会いました。平常時と暫定基準時を比べているからこんなことになっているのですね。ただこのサイト、英語版も作って世界中に広まっているので、日本の風評被害に繋がらないか心配です。
Dairy Products はチーズ、バター、クリームなど乳製品です。チェルノブイリ、基準値凄いですね。牛乳に農集していたのを飲んで、白血病や甲状腺癌が広がったとも聞きました。
情報を自分でも精査しながら、恐れるべきところは正しく恐れて行こうと思います。守るべき子どもたちがいますので。
YU
2011年7月5日 at 3:14 PM
>YUさん
コメントありがとうございます。
そうなんですよ。NHKのかぶんさんのブログにもあるように
平常時は限りなく0に近づけること。
緊急時は健康に害が出ないことを目標にしているので数字がちがってくるんですね。
日本の牛乳管理にかんしては
http://www47.atwiki.jp/info_fukushima/pages/30.html
ここのリンクが詳しいです。
日本の政治家はいまいちですが、農家の皆さんの努力はすごいです。
お子さん、心配ですよね。新聞やTV雑誌からの情報もいちいち本当かどうかを調べる必要があるような状態です。私もすこしでも情報提供のお手伝いができるように、ただの噂ではなくて事実として数字が確認できるようなものを提供していければと思います。
chemicalcherry
2011年7月6日 at 2:46 PM