Sunday, January 9, 2011

ドクターG?

週末はクリニックがお休み。のんびり過ごしています。

さて、アメリカでは衛星放送などでTVジャパンというチャンネルがあり、NHKをはじめ日本のテレビが有料でみれます。

今日は「 総合診断医ドクターG」という番組を偶然やっていたので見てしまいました。
Website http://homeroom-doc.com/g/g-index.html

私の通うメディカルスクールではこのような鑑別診断の練習を、二年生のときからスモールグループの形でやっています。 「総合診断医ドクターG」という番組では、症状や身体検査所見からずばり鑑別診断を出していく形式ですが、メディカルスクールのディスカッションは症状、身体所見に基づいた鑑別診断をはじめ、オーダーすべき検査なども考える練習をします。そして検査結果などを踏まえながら、鑑別診断をし、治療方針などのディスカッションまでもっていきます。「与えられた臨床情報をもとに、次に何をすべきか」という考えかたを養っていくわけです。

さて、日本でも「総合医」や「プライマリケア医」などの言葉を耳にするようになりました。
でも「家庭医学」や「かかりつけ医」などと意味が混同されることもあるようです。


今日は少し、この辺の分類について書いてみたいと思います。



まずはアメリカでお医者さんにかかる場合、日本と少し事情が違います。

日本では病気になったら、直接専門医のところにいくのが普通です。
湿疹が出れば皮膚科、骨折を疑えば整形外科、女性特有の病気を疑うなら婦人科などにいきますね。

アメリカでは、このように患者さんが直接専門医のところに行くことはまずありません。
病気になった場合、まずは事前に選んである’「プライマリケア医」のところにいきます。

アメリカでは大きく分けて「プライマリケア医(Primary Care Physician)」と「専門医 (Specialist)」がいると思ってください。

「プライマリケア医」はいわゆるジェネラリストであり、あらゆる病態の初期診断を行います。

病気になったり、体調が思わしくないとき、まず最初に自分の「プライマリケア医」のところに行くのが普通です(命にかかわる緊急事態の場合は、緊急医療にかかります)。プライマリケア医は入院の必要がない、基礎的な病態(風邪、糖尿病、高血圧症、定期検診、簡単な外傷など)を診断・治療します。複雑な病態で専門科の助けが必要であれば、プライマリケア医が「紹介状」を書きます。これがあって始めて、患者は専門医に診てもらうことができます。米国ではプライマリケア医はよく「ゲートキーパー」という言われ方をすることもあります。

日本とおなじく「専門医」は「皮膚科」「リュウマチ科」「外科」「泌尿器科」などの、臓器別や病気別、治療手段別で専門化している医師のこと。上記のようにプライマリケア医の紹介をうけて、詳しく病気の診断や治療を行います。

それでは「内科」は「プライマリケア」でしょうか「専門医」でしょうか?

アメリカで「内科(Internal medicine)」といえば通常は「一般内科」であり、様々な病態を診断・治療する「プライマリケア医」をさします。
そして内科は「大人」の患者さんのみを扱います。

「循環内科」「腫瘍内科」「消化内科」といった「専門医」になるには、一般内科の研修(通常3年間)を終えたのち、フェローシップのかたちでさらに1年から3年の研修プログラムを終了しなくてはなりません。そして「専門医」になる前に内科医はみな「一般内科」をみっちりやらされます。すなわち「専門医」でも、プライマリケア医として対処するためのトレーニングを受けるわけです。

またメディカルスクール教育も、よき「プライマリケア」ができる医師を育てるということにフォーカスが置かれています。よき「専門医」になるには「プライマリケア」がきちんとできないといけないという考え方です。

子供の疾病は、米国でも「小児科医」にかかります。小児科も大きくわけて「プライマリケア医」と「専門医」がいます。子供が病気になると、やはりまずは小児科の「プライマリケア医」のところにいきます。そしてさらに専門家にかかる必要があれば、「紹介状」を書いてもらうわけです。


それでは「家庭医」っていったい何でしょうか?米国でいう"family medicine"は通常「プライマリケア医」であり、診る患者さんは新生児から大人、老人まで全ての年齢です。妊婦さんや精神科の患者さんもみます。家庭医は「広く、浅く」とよく言われますが、様々な症例を扱うのでとても重要視されています。また多くの場合、家族全員を患者さんとして診ることになるので、身体的な病気だけでなく精神的な面にも気を配ることができます。家庭医は、最も「包括的」な医療を提供する医師と言えるでしょう。

4 comments:

  1. ドクターGは私も何度か見たことがありますが、確かに、参加しているインターンの人たち、鑑別診断はしているけれど、確定するために何が必要か、どんな検査をオーダーする必要があるか、という意見は述べていなかったような…? そこ、実際の医療現場ではすごく重要なことですよね。番組でもそこまで取り入れてもらえると、検査はすればするほどいいって訳ではない、という事が視聴者に伝わるかも、なんて思っちゃいました。

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  2. おっしゃるとおりですね。でも検査内容もディスカッションに含めると、テクニカルになりすぎて視聴者の方に難しすぎるかもしませんね。まゆみさんのおっしゃるように、やり方次第によっては「検査すればするほど、いいって訳ではない」のメッセージも伝えるの重要だと思います。本当に鋭い診断医は、有益でない検査を極力さけますが、経験が浅かったり「念のため」のアプローチをとる医師は、過剰に検査をする傾向にあると思います。検査にたよりすぎちゃうんですね、きっと。

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  3. 日本にも家庭医はいるところにはいます
    ご参考まで
    http://www.scribd.com/doc/20418743

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  4. リンクをどうもありがとうございました。日本には米国のような家庭医の「研修医プログラム」もあるのですか。ご存知とおもいますが、米国ではは3年間のレジデンシープログラムを終えたのち、Board受けるて初めて「家庭医」となのれるのですが。

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