沖縄県知事選挙のことはきのうで終わりにしようと思っていましたが、やはり書きます。
去年、タヒチに行きました。楽園の名に恥じない世界的なリゾート地ですが、この島をふくむ仏領ポリネシアには、かつてフランスが核実験を繰り返したムルロア環礁があり、住民はいまだに健康被害に苦しんでいます。フランスがそれと核実験の因果関係を認め、補償に応じる構えを見せたのは、まさに私が滞在していた時でした。それまでフランス「本国」政府は、自国の核実験はクリーンで(!)、住民への悪影響はない、と言い続けていたのです。タヒチでは、さまざまな立場からフランス政府にたいして核実験反対の運動をしてきた人びとの話を聞きました。
その中で、「タヒチの経済はどうなのですか? 独立という話は出ないのですか?」と訊ねたところ、フランス「本国」政府の経済援助や税制優遇、にもかかわらず本国並みに完備した社会保障に慣れてしまって、独立を唱える人はまずいない、フランスあってのタヒチ経済という体質になってしまっている、そして、覇気がないからなかなか地元資本が育たず、観光産業も外資頼みだ、というあきらめきった答が返ってきました。「やる気さえあれば、自然に恵まれているし、ほんとうは自立してやっていけると、僕は思う」と付け足した通称ガビさん(こちら)は、反核運動のかたわら、貴重なオーガニックのバニラを栽培したり、伝統的有機農業を若者に伝授する学校を経営したりして、がんばっている方なのでした。
琉球新報は11月24日に、米軍基地についての全国首長アンケート結果を発表しました(こちら)。「米軍移転78%拒否」という見出しからも明らかなように、全国の首長たちの間では、これが迷惑施設であるとの認識が圧倒的です。「沖縄に集中していることはやむをえない」と答えた石原東京都知事は、正直と言えばいいのでしょうか。質問項目の中で、おや、と思ったものがありました。沖縄への地域振興策を、沖縄県外の首長たちの38%は「充実すべき」と答えているのにたいして、沖縄県内ではたったの5%止まりだった、というのです。県外よりたくさんの沖縄の市町村長さんたちが振興策拡充を望んでいるかと思いきや、事実はそうではないのです。
米軍基地は沖縄に押しつけ、その迷惑料を振興策としてあてがっておけばいいというのは、防衛省や外務省を始めとする官僚や、内閣や地方自治体の政治家たちの発想、つまり沖縄県外の発想であって、沖縄は、そんなものはいらない、と言っているのです。沖縄は、補助金漬けで自存自立の志を失ってしまったタヒチとは違う、と思いました。だったら、きっと沖縄の市町村長さんたちは、沖縄振興特別措置法を恒久化して「沖縄新法」を制定する、という仲井真候補の政策を、覚めた目で見ているのではないでしょうか。片や、産業振興を掲げるまでは共通するものの、伊波候補はそうした国からの補助をひっぱってくることをまず約束するのではなく、なんといっても米軍基地撤去を経済活性化と福祉の充実につなげることを政策の筆頭に挙げています。それに類する公約が仲井真候補にはないということは、「沖縄新法」の背後には「米軍基地の新設と恒久化」というオバケが隠れているのではないでしょうか。
仏領ポリネシアは、今でこそフランスの海外準県ですが、実質は植民地です。ジャブジャブの補助金で「本国」に縛りつけられ、その見返りに核実験場という迷惑施設を押しつけられ、いいように利用されてきました。核実験は行われなくなっても、気の抜けたような社会を、外資による華やかな観光施設が覆い隠しています。沖縄がそんなタヒチのようになるのはいやだという市長さん、町長さん、村長さんたちの思いはしごくまっとうです。その意思が実を結ぶかどうか、きょうの選挙はきわめて重要な通過点になると思います。
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去年、タヒチに行きました。楽園の名に恥じない世界的なリゾート地ですが、この島をふくむ仏領ポリネシアには、かつてフランスが核実験を繰り返したムルロア環礁があり、住民はいまだに健康被害に苦しんでいます。フランスがそれと核実験の因果関係を認め、補償に応じる構えを見せたのは、まさに私が滞在していた時でした。それまでフランス「本国」政府は、自国の核実験はクリーンで(!)、住民への悪影響はない、と言い続けていたのです。タヒチでは、さまざまな立場からフランス政府にたいして核実験反対の運動をしてきた人びとの話を聞きました。
その中で、「タヒチの経済はどうなのですか? 独立という話は出ないのですか?」と訊ねたところ、フランス「本国」政府の経済援助や税制優遇、にもかかわらず本国並みに完備した社会保障に慣れてしまって、独立を唱える人はまずいない、フランスあってのタヒチ経済という体質になってしまっている、そして、覇気がないからなかなか地元資本が育たず、観光産業も外資頼みだ、というあきらめきった答が返ってきました。「やる気さえあれば、自然に恵まれているし、ほんとうは自立してやっていけると、僕は思う」と付け足した通称ガビさん(こちら)は、反核運動のかたわら、貴重なオーガニックのバニラを栽培したり、伝統的有機農業を若者に伝授する学校を経営したりして、がんばっている方なのでした。
琉球新報は11月24日に、米軍基地についての全国首長アンケート結果を発表しました(こちら)。「米軍移転78%拒否」という見出しからも明らかなように、全国の首長たちの間では、これが迷惑施設であるとの認識が圧倒的です。「沖縄に集中していることはやむをえない」と答えた石原東京都知事は、正直と言えばいいのでしょうか。質問項目の中で、おや、と思ったものがありました。沖縄への地域振興策を、沖縄県外の首長たちの38%は「充実すべき」と答えているのにたいして、沖縄県内ではたったの5%止まりだった、というのです。県外よりたくさんの沖縄の市町村長さんたちが振興策拡充を望んでいるかと思いきや、事実はそうではないのです。
米軍基地は沖縄に押しつけ、その迷惑料を振興策としてあてがっておけばいいというのは、防衛省や外務省を始めとする官僚や、内閣や地方自治体の政治家たちの発想、つまり沖縄県外の発想であって、沖縄は、そんなものはいらない、と言っているのです。沖縄は、補助金漬けで自存自立の志を失ってしまったタヒチとは違う、と思いました。だったら、きっと沖縄の市町村長さんたちは、沖縄振興特別措置法を恒久化して「沖縄新法」を制定する、という仲井真候補の政策を、覚めた目で見ているのではないでしょうか。片や、産業振興を掲げるまでは共通するものの、伊波候補はそうした国からの補助をひっぱってくることをまず約束するのではなく、なんといっても米軍基地撤去を経済活性化と福祉の充実につなげることを政策の筆頭に挙げています。それに類する公約が仲井真候補にはないということは、「沖縄新法」の背後には「米軍基地の新設と恒久化」というオバケが隠れているのではないでしょうか。
仏領ポリネシアは、今でこそフランスの海外準県ですが、実質は植民地です。ジャブジャブの補助金で「本国」に縛りつけられ、その見返りに核実験場という迷惑施設を押しつけられ、いいように利用されてきました。核実験は行われなくなっても、気の抜けたような社会を、外資による華やかな観光施設が覆い隠しています。沖縄がそんなタヒチのようになるのはいやだという市長さん、町長さん、村長さんたちの思いはしごくまっとうです。その意思が実を結ぶかどうか、きょうの選挙はきわめて重要な通過点になると思います。
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