安西氏「風評だけで評価」「不信は頂点」 NHK人事
会長就任「拒絶」の発表文全文
11日、NHK会長への就任を拒絶した安西祐一郎・前慶応義塾長が報道機関に配布した発表文の全文は以下の通り。
日本放送協会(NHK)会長職について、12月19日に小丸NHK経営委員長から就任の要請がありましたが辞退し、さらに22日にも辞退しました。しかし、12月23日に、NHK経営委員会の総意として、小丸委員長からあらためてNHK会長への就任を要請されました。
これに対して、私としては任が重すぎるため重ねて辞退しましたが、小丸委員長からその後もさらに要請が続きました。こうした中で、NHKが将来さらに良いものになりそれを通して日本が浮上する一助になればと考え、27日に、小丸委員長および経営委員会の全面的協力を前提とすることの了解を小丸委員長から得たうえで、まったくの善意で内諾の意向を伝えました。
なお、会長就任の要請から内諾時、さらに今日まで、一部報道にあるような条件を提示した事実は一切ありません。内諾するにあたって仕事の環境について説明を求めたことはありますので、そのことが条件をつけたと曲解されて伝わったのではないかと想像しますが、仮にそうであれば、曲解すること自体が問われるべきことだと思います。
さらに、1月5日午後1時半から開催予定であった経営委員会打ち合わせ会合に出席してほしいとの小丸委員長からの懇請があり、それを受けて、同会合に同日午後2時半過ぎから出席しました。その場で、経営委員会が一致団結してNHK改革に取り組むことがNHKを良くするには必須だということを述べました。また、いくつかの条件をつけたという一部報道は事実ではないこともそこで述べました。これに対して質問はなく、またNHKの将来に対する私の考えに対しても具体的な内容を問う質問はありませんでした。
この間の経緯を垣間見るに、小丸委員長が私に対して会長就任の要請を何度も続けてこられたことが、実は必ずしも経営委員会の総意とは言えないことが判明してきました。また、経営委員の方々は、私のこれまでの経営・学術・教育改革等に関する活動や会長としての私に期待することなどを、十分に理解して要請したと認識していたのですが、実はそうではなく、要請しておいてから後になって、いわれなき中傷を含む風評だけで私を評価するようになったことも判明してきました。その一方で、小丸委員長に申し上げた情報が、曲解された形で流布され続けました。この間、小丸委員長に伝えた情報がまったく曲解された形で流布されることが度々起こりました。さらに、小丸委員長がいったん就任要請をし、私が内諾したにもかかわらず、今度は一転して私に辞退の勧告をするということも起こりました。この辞退勧告については、私は回答を留保いたしました。一部報道にあるような、経営委員会が会長就任要請を撤回したということは、私の知る限りまったくありません。
こうしたことが前提となって、私の小丸委員長および経営委員会に対する不信は頂点に達しました。とくに、一貫した対応姿勢をまったく持たない小丸委員長、および風評に依存して動く経営委員会では、仮に私がNHK会長に就任しても、NHKをさらに良いものにしていくことは困難であると判断します。
以上に鑑み、今般小丸委員長を通じてNHK経営委員会から要請のあったNHK会長就任につきましては、不本意ながらこれを拒絶することを、小丸委員長に通知いたしました。
なお、上記の件は、会長選任にかかわる経営委員長および経営委員会への不信と、それに基づくNHK会長就任辞退の理由に関するものであり、NHKの活動全般についての件ではありません。NHKの発展はこれからの日本にとってきわめて大切であり、NHKの活動につきましてはこれからも応援させていただく所存です。