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1勝9敗でいい リクルート流ネット事業の育て方

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 「ネットサービスなら、1勝9敗でも十分に元が取れる」――。新規事業開拓にとりわけ意欲的な企業として知られるリクルート。同社では2年前、新規事業提案制度にネット事業専用コースを設けた。事前調査などで成功確率の高いものを絞り込むのではなく、失敗リスクの高いものも含め、様々なアイデアをどんどん試行し、顧客の反応を見たうえで、事業化の可否を決められるようにした。「ネットはスピードが命」との発想が根底にある。

リクルートの新規事業提案制度「New RING(ニューリング)」。結婚情報誌「ゼクシィ」やフリーペーパー「R25」などを生み出してきた同制度に、2010年からネット事業専用のコースが加わった。

ネット専用コースの特徴は、事業化の可否を決定する前に試験サービスの期間を1カ月ほど設けること。経営企画室経営企画グループの今井直樹氏は「まずはサービスを走らせて、利用者の反応をうかがいながら事業の可能性を探る。いわばテニスの壁打ち練習のようなもの」と説明する。

10件以上のサービスを試験できる予算を確保

試験サービスの期間は、従来の制度であれば市場動向や広告出稿企業の反応を探る調査を重ねていた時期に当たる。ネット専用コースを新設して評価プロセスを変更したのは、ネットサービスのスピード感を意識したからだ。

ネットでは意外なサービスが利用者の"口コミ"によって広まり、あっという間に後発を寄せ付けない人気を獲得することも少なくない。そこでコンセプトが優れていれば、企画が十分に固まっていない段階でもサービスを始め、"壁打ち"をしながら利用者の反応が良好なものを選んだ方が効率的だとリクルートは判断した。

試験サービスを幾つも走らせれば、当然ながら人気が上がらずに終了する失敗作も出る。サービスの開発費やサーバーなどの設備費が無駄になりそうだが、今井氏は「ネットサービスの投資費用は相対的に低く、1勝9敗でも十分に元が取れる」と明かす。実際に10件以上のサービスを同時に試験できる予算を確保してあるという。

また、最終審査の評価基準も変えた。既存の制度では調査で得られた広告主の反響といった定性情報を主体に評価している。一方、ネット専用コースでは、ネットサービスで様々なデータを取得できる点を生かし、利用者の需要を想定したKPI(重要業績評価指標)を設定。壁打ちでこれを達成したかどうかで主に判断する。

壁打ちの期間を経て事業化した最初の事例は、コミュニティーサイトの「bestmania(ベストマニア)」だ。ある利用者が、他の多くの利用者にとっても興味深い「お題」と、それにマッチした書籍やDVDなどのベスト3を投稿。その投稿をきっかけに利用者同士が交流するサービスである。

例えば「これぞ成功者!!日本を支えた経営者の苦労が書かれたノンフィクション書Best3」という題目を決めて、3冊のビジネス書を選ぶ。この投稿に「ササる(共感する)」と感じた他の利用者が投票してランキングを作っていく。サイトの広告収入に加えて、投稿者が推薦した書籍やDVDを販売するEC(電子商取引)サイトに利用者を誘導し、アフィリエイト収入を得て、投稿者にも還元するというビジネスモデルだ。2011年4月に運営会社のエモーチオ(東京都中央区)を設立し、同年11月にサービスを開始した。

試験サービスだからこその気づきを得る

事業の提案者であるエモーチオの林晃佑代表取締役社長は6人のメンバーと2010年8月のニューリングに応募し、500万円の予算を勝ち取った。ただしこの時期の事業モデルは、サイト運営者がテーマを投げかけて、利用者からお勧め情報を募るというシンプルなもの。利用者によるお題設定やベスト3といったコンセプトはなかった。

同年12月から翌年1月にかけて壁打ちを実施した。リクルートのネットメディア「Web R25」が1周年記念のキャンペーンを実施していた時期で、同サイトの一部を"間借り"してお勧め情報サイトを運営した。すると2カ月間で約5000件の書き込みがあった。「この過程で現在の事業につながる気づきを得られた」と林社長は話す。

1つ目の気づきは利用者の行動分析から得た。書き込みが一部の利用者に偏り、テーマの閲覧しかしない利用者が大半だった。「文章中心の書き込みでは、作文能力の高い利用者以外は参加しにくいのではないかと仮説を立てた」(林社長)。

もう1つの気づきは、試験サービス期間に前後して、ネット業界で「キュレーション」と呼ばれるサービスに注目が集まり始めていたことだ。個人のセンスに基づいて、特定のキーワードや概念に関連する情報(ニュース記事やブログなど)を集めることを意味する。林社長らはこの動向に着目し、新規事業にキュレーションの要素を取り込むことを検討し始めた。

「新規事業を形にしたいと真剣になっていたから、情報への感度が鋭くなっていた。調査という位置付けだったら、『今やっているものは事業性がなさそうだ』と片付けていたかもしれない」(林社長)。失敗を許容して試験サービスを走らせたからこそ、気づきを得られた。

2011年2月の最終審査ではKPIとしてサイトへの来訪者や書き込み数を提示し、相応の手応えがあったことをアピール。同時にキュレーションの要素を取り入れたり、文章中心の書き込みを見直したりして、改善が期待できることを訴えた。

事業化は認められ、半年をかけてビジネスモデルを練り直してから本サービスを開始した。ベストマニアへの書き込みは2011年12月には50万件に上り、「2カ月で年間の目標に到達した」(林社長)。

このベストマニアだけにとどまらず、走りながら考えるスタイルでのネットサービス開発に、リクルートは今後も力を入れていく方針だ。

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【注目の戦略】 失敗を生かす「4つの条件」

経済成長が伸び悩むなか、国内の市場は飽和して価格競争が激しくなり、かつての基幹事業も十分な収益を生み出せなくなった。一方でネットなど絶え間ない技術革新が起こる分野では、ビジネスモデルの陳腐化が速まる。グローバル市場に打って出ても、国内と同じやり方では商習慣や価値観の違いに適応できない。

過去の成功体験を頼りにした「安全運転」では、新しい道は切り開けない。何度も転倒しながら成功確率を高めていく、失敗の戦略的活用が必要になる。家電量販店のノジマは、社員が失敗するための予算を設け、挑戦する風土の定着を図っている。本記事で見てきたように、リクルートはネット事業を加速させるために、新規事業開発プロセスを見直した。

失敗経験は社員の育成にも役立つ。ノジマの野島廣司代表執行役社長は「マニュアルで覚えた仕事は浅い。失敗を経験すれば、同じ間違いをしないように深く考えるようになるし、挽回しようとするモチベーションも生まれる」と強調する。

ただし野放図に失敗を許せば、経営の根幹を揺るがすような事態すら招きかねない。社員が責任の所在や原因に向き合い、失敗の連鎖を防いで致命傷を回避する仕組みが必要になる。エレクトロニクス商社の加賀電子は、会社に損害を与える失敗をした社員に減給など厳しいペナルティーを与える。一方で失敗の経験を生かした取り組みが成果に結び付いた場合には、表彰などの「褒める」制度で遇する。

最適解を目指して多くのプロジェクトを走らせると、当然成功に至らないものも多く生まれる。それを「良い失敗」と定義して組織内で共有し、別のプロジェクトで再利用しやすい環境を作ったり、適切なフィードバックで当事者が次回の挑戦に生かせるよう促したりすることが有効だ。

一方で組織としての学びを得られない「悪い失敗」は、リスクヘッジ策を講じて再発を防止しなくてはいけない。リーダーの独断専行や同じ失敗の繰り返し、コミュニケーション・ロスによる行き違いなどを未然に防ぐことが必要だ。

図3に、失敗を生かす4つの条件をまとめた。あなたの会社やチームはいくつの条件を満たしているだろうか。

(日経情報ストラテジー 小林暢子・島津忠承)

[日経情報ストラテジー2012年3月号の記事を基に再構成]

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