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「はやぶさ」おつかいできたよ記者会見

はやぶさ」が持ち帰った微粒子が、イトカワ由来と判明しました!

11月16日13時より、JAXA東京事務所プレゼンテーションルームにて行われた記者会見です。

登壇者(左から)
  • 川口淳一郎JAXA月・惑星探査プログラムグループ はやぶさプロジェクトプロジェクトマネージャ)
  • 向井利典(JAXA技術参与)
  • 藤村彰夫(JAXA月・惑星探査プログラムグループ研究開発室教授)
  • 野口高明(茨城大学理学部地球環境科学コース教授)
  • 中村智樹(東北大学大学院理学研究科地学専攻 地球惑星物質科学講座准教授)
  • 上野宗孝(JAXA宇宙科学研究所ミッション機器グループ副グループ長)

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川口:《プレスリリースの内容を読み上げ》

川口:間もなく出張に出かけるため15分で退席させていただきたい。まずコメントさせてください。大臣の会見の中では「はやぶさは地球圏外からの初のサンプルリターン」とあったが正確なところはスターダストの採取がすでにある。小惑星からのサンプルリターンは初。スターダストは微粒子をジェルに吸着させたが、そのようなコンタミがない回収も初。

プロジェクトが始まって15年、飛行が始まって7年、夢のようなゴールを目指してきた。

1500個の微粒子がイトカワ起源と確認でき、さらにもうひとつの夢がかなった。

艱難辛苦、プロジェクトみんなで喜びたい。のべ40年以上にわたる日本の宇宙開発の歴史の成果。先輩たちとも喜び合いたい。

1年前にイオンエンジンが止まって再開したところから大きな成果に恵まれて本当に嬉しい。

《川口先生このあと中座のため、まず川口先生への質疑応答》

宇宙作家クラブ今村:はやぶさにどんな言葉をかけてあげたいか

川口:はやぶさが打ち上がってからずっと育て上げてきた、帰還できたのは共同して持って帰ってきたと思っている。

化学スラスタの燃料がないため燃え尽きる運命は予測していながら、カプセルや試料の回収を優先してそれを目指した。それがベストであると。

はやぶさ自身、たいへん喜んでいるだろうと思います。

ロイター通信:科学の成果はどこへつながるか

川口:科学的な話はこのあと詳しく…価格的な話ではないですよね(笑い)

ライター喜多:祝電が届いています。ご返答をお願いします。「サンプルの確認おめでとうございます。糸川英夫

川口:糸川先生のご努力に敬意を表します、これからもイノベーションを続けていきたい。

ライター林:どこでこの一報を聞いたのか。いつからイトカワ由来のサンプルがあると思ったか

川口:10月上旬から直接分析にかけられる回収を始めていた。向井さんが主催の分配委員会で情報共有してきた。

発表には私が一番慎重だった。逃げるわけではないのだから、初期分析が終わってからでもよかったのではないかと。

発表できるという見通しができたとき、本当に信じられない思いだった。

1500粒は「そんなにたくさんいらないのに」と思った(笑)

慎重になったのは、イトカワへのタッチダウン時に弾丸を撃ったと言ってからやっぱり発射していないと訂正した経験があったため。

心の底では一粒でもいいからあると信じて、帰りの運用をみなも支えられてきた。

そういう意味では、信じてきたのは昔からです。

《川口先生への質問は以上》

《「帰還カプセルの試料容器から回収された微粒子がイトカワ起源であると判断する根拠について」読み上げ(藤村)》

《質疑応答》

ライター大塚:添付1について、今回の分析で数字でいえることは? 5%と35%付近と見えるが具体的な数字を知りたい

中村:詳しい数字はこれからなのでここでは控えたい。簡易的な図であると理解してほしい

日経新聞:照射したものについて

中村:電子線を照射し、特性X線を励起させて検出、元素にどんなものが入っているかを調べた。

向井:補足として、電子顕微鏡の検査は比はわかるが定量的な分析は難しい。

藤村:このあと定量性のある分析をする。

赤旗イトカワ起源とわかったほかに新たな特徴など発見は

藤村:小惑星と隕石の関係を明らかにできる。隕石だけでわかっていたことと小惑星の関係について推定していたことがこれからわかるようになる。

また隕石は地球に落ちるときさまざまに変化する。そういった変化を経ていないものを我々は手にした。隕石の変成でなくなってしまったものが見つかるかもしれない。新たな学問の材料を手に入れることができた。

野口:小惑星の本当の表面にあるものである。隕石は固い部分で小惑星の内部物質。

太陽の放射線との反応などが記録されているだろう。隕石研究のデータと星の分光観測で得られるデータを活用できる。

中村:個人的にはまずしばらくはイトカワ本体の把握に集中したい。サンプルは表層物質なのでほかの天体の物質が降り積もっている可能性が高い。S型小惑星以外の、たとえば彗星の物質なども見つかってくることを期待している。

ITメディア?:初期分析なしで発表できた理由と、今後のスケジュールは

藤村:ひと粒これはとわかるまで発表できないと思っていたため初期分析が必要としてきた。今回たくさんの微粒子について組成がわかり、岩石質のものの中にも地球の物質が見つかっていないと。わかっていて話をしないのはマズイと思い発表した。

絶対大丈夫ということを待つなら初期分析だが、わかった段階でできる限り早くお知らせしたく発表した。

向井:補足。一粒二粒では発表はできない。微粒子がたくさんあり、存在比をみることができて確信を得た。1500粒とたくさん見つかったことが重要なポイント。

今後の予定は:川口先生が言ったように微粒子はほとんどが10ミクロン以下。光学顕微鏡で見るのは難しい。電子顕微鏡の中で操作できるようなマニピュレータが今後必要。来年1月にできる。初めてのことなので初期分析にはもう少し時間がかかるだろう。

B室を開ける準備もしている。A室からマニピュレータで数十の微粒子を回収できている。B室を開けて初期分析にかけられるものがないか見ることになる。

ロイター通信:今回の発見は日本の宇宙科学にとって世界との競争の中でどういう影響を与えるか

向井:なかなかいばって言えることはありませんが(今村註:いばっていいよ!)…地球、生命の起源といった根源的な疑問に向かうのが宇宙科学の目標。始原的な物質を調べるアプローチにはアポロ、スターダスト、ジェネシス太陽風の採取)などがあり、その中ではやぶさ小惑星のサンプル回収を行った。

日本の隕石研究は盛んだし、重要な位置を示している。地球惑星科学、物質科学の面では他国に抜きんでているといえる。

サンプル自身はJAXAや日本のものではなく人類共通の財産であり、世界の科学者に今後分配をし分析してもらいたい。そのための非常に貴重な試料を得ることができた。

藤村:サンプルが世界中の科学者に配布されることを想定している。材料を提供できると我々は思っている。

日本テレビズームインSUPER:海外からの反応は

向井:発表したばかりなのでまだ聞いていない。はやぶさプロジェクトはNASAやオーストラリア政府との国際共同計画、今回の発表はNASAとの共同。NASAの研究者に発表すると連絡をしたところ「Very exciting」と。

ロイター通信:机の前の袋に入っているものは?

藤村:コンテナやサンプルキャッチャーの模型です。サンプルをしまうところは2つあり、あとからしまわれたほうを今見ている。(今村註:いま開けているA室は2回目、1秒間のタッチダウンで回収したもの。B室は最初の不時着のときのサンプルが入っていると期待されている)

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朝日新聞:微粒子は1500粒で十分なのか

向井:これからB室があるしマニピュレータで取った大きなものもある。

当初の計画では何百ミリグラムかあればと思っていた。1ナノグラムの微粒子が1500個集まってもマイクログラムオーダーなのでだいぶ少ないが、分析技術は向上している。

中村:想定していた分析にはやや少ないが、自分が担当している岩石・鉱物資源としての分析は全部できる。

ライター林:量がたくさんあったらどういうことができるのか

中村:微粒子には太陽系にあるほぼすべての元素が含まれていると考えられている。その中で含有量が少ない元素は測定器の検出限界を下回る。少ない元素を検出するにはある程度のサンプルの重さが必要になる。

赤旗:微粒子と一緒に入っていたガスについては

向井:今のところ発表は控えたい。

ライター喜多:このカプセルがもうちょっとこうだったら、ということはあるか

藤村:もっと大きかったら、あるいは小さかったら、もっときれいだったら、もっと扱いやすかったら、といろいろある。開けにくかったとかたくさんある。そういうことは次のミッションに的確につないでいかなければならない。

赤旗?:微粒子が見つかった、わかったとハラハラドキドキさせられたが内部の皆さんの心について

藤村:メンバー全員、回収やキュレーションで準備を重ねてきた。カプセルを開けた瞬間は全員「きれい」と真っ青になった。「どうしよう」と。

次に目に見えなくても微粒子が、と準備していたものの出番だと。少しやるとくたびれる作業。やはり見つからない、ここにありそうだと波瀾万丈、ハラハラドキドキ。そして最後にうまくいくというのがはやぶさプロジェクト。最後にこのようなうれしい結論にたどりつけた。まだ、へらでひとかきしただけ。B室はこれからであるし、まだあるだろう。

中村:私、へらを操作したんですけれど震えることなく、けっこう冷静に操作してました。スイープしたあと電子顕微鏡で確認をし始めて、添付2にあるへらの拡大写真、これは最初に見つけたかんらん石。

分析が進むにつれて確信を深めていった。

野口:数が増えていったというのがよかった。小さいものでもたくさんあれば。数が増えていったときは「これはハラハラドキドキのあとにいい結果が出そうだ」となっていった。

《終了》

広報の方によると、川口先生はこれからIAA(宇宙機関長会議)で立川理事長とともにアメリカへ旅立ったとのこと。いい手みやげができたのではないでしょうか。おめでとうございます!

追記

JAXA iへ行ってみました。入り口にはさっそく「微粒子がイトカワ由来と判明!」と貼り紙がされていました。

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奥にある「はやぶさ」メッセージノート。さっそくいくつもの「おめでとう」が。

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