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「マックが主軸」から「クラウドが主軸」へ?!(1/3ページ)

2011年6月16日

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写真:画像1:アップルのCEO、スティーブ・ジョブズ氏。闘病中と伝えられているが、基調講演には元気な姿を見せた(西田宗千佳撮影)拡大画像1:アップルのCEO、スティーブ・ジョブズ氏。闘病中と伝えられているが、基調講演には元気な姿を見せた(西田宗千佳撮影)

写真:画像2:アプリやウインドウを切り替える機能である「Mission Control」。これまで使われていた「Spaces」「Expose」「Dashboard」を統合し、ジェスチャーで切り替えられるようにしたもの(西田宗千佳撮影)拡大画像2:アプリやウインドウを切り替える機能である「Mission Control」。これまで使われていた「Spaces」「Expose」「Dashboard」を統合し、ジェスチャーで切り替えられるようにしたもの(西田宗千佳撮影)

写真:画像3:自動保存されたファイルのうち、過去のものを一覧する「Versions」。ファイル版「TimeMachine」といったところ(西田宗千佳撮影)拡大画像3:自動保存されたファイルのうち、過去のものを一覧する「Versions」。ファイル版「TimeMachine」といったところ(西田宗千佳撮影)

写真:画像4:iOS 5の通知機能。バッジ型告知のデザインが大幅に変更された上、画面もうまく活用。告知専用の画面も用意された。機能的には、Androidのそれに近くなった印象(西田宗千佳撮影)拡大画像4:iOS 5の通知機能。バッジ型告知のデザインが大幅に変更された上、画面もうまく活用。告知専用の画面も用意された。機能的には、Androidのそれに近くなった印象(西田宗千佳撮影)

写真:画像5:iOS 5から搭載される新メッセージングサービス「iMessage」。チャット的なコミュニケーションができる(西田宗千佳撮影)拡大画像5:iOS 5から搭載される新メッセージングサービス「iMessage」。チャット的なコミュニケーションができる(西田宗千佳撮影)

写真:画像6:これからの「デジタルハブ」+「クラウド」構想。中核はクラウド(iCloud)となり、データはネットワークを介して分配される形で利用される(西田宗千佳撮影)拡大画像6:これからの「デジタルハブ」+「クラウド」構想。中核はクラウド(iCloud)となり、データはネットワークを介して分配される形で利用される(西田宗千佳撮影)

写真:画像7:アプリもクラウド上に保存。購入したばかりの曲も、CDからリッピングした曲も、自分が持っているすべての機器で楽しめる(西田宗千佳撮影)拡大画像7:アプリもクラウド上に保存。購入したばかりの曲も、CDからリッピングした曲も、自分が持っているすべての機器で楽しめる(西田宗千佳撮影)

 毎年アップルは、6月のこの時期に開発者向けの国際会議である「World Wide Developer’s Conference(WWDC)」を米国で開催します。今年も6月6日(現地時間)から5日間にわたって開かれました。今回はその初日の基調講演で発表された、マック、iPhone、iPadの今後について解説してみましょう。(西田宗千佳)

ジョブス氏講演のWWDC2011を写真で

新ハードは「なし」、でも重要な「3要素」 新マックOS「Lion」は7月発売

 先に、結論からお話しておきましょう。

 このところWWDCでは、iPhoneの新モデルが発表されるのが常でした。しかし、今年のWWDCでは新モデルでは発表されていません。すべての発表はソフトウエアとサービスに関わるもので、派手なハードウエアの発表は行われていませんでした。

 しかし、発表された内容の重要性は、新しい製品を発表するのと同じくらい大きな意味をもっていました。会見で壇上に立ったスティーブ・ジョブズCEOは、「ハードウエアが製品の頭脳や筋骨だとするならば、中心にあるソフトウエアは魂にあたる」と説明しました。今回のWWDCでは「魂」の発表に注力したことになります。発表されたソフトウエアとサービスは大きく3つに分かれており、それぞれが連携することで大きな価値を生み出すようになっているのです。

 発表されたのは「マックOSの新バージョン」「iOS(iPhoneやiPad、iPod touchで採用されているOS)の新バージョン」、そして「それらで採用されているアップルのネットワークサービス」の3つになります。

 まずはマックOSから話していきましょう。

 新マックOSは「OS X Lion」という名称になります。マックOS Xは、伝統的に猫科の動物を愛称に利用してきましたが、数えて「10.7」にあたる新バージョンではついに「百獣の王」に到達しました。発売は7月、意外ともうすぐです。

 Lionでは、OSの基盤部分にも色々と改善が行われているのですが、もっともわかりやすく見えやすいのは「操作方法の革新」です。具体体にいえば、「パソコンのお約束」を一部破り「iPadの発想を持ち込んだ」ことになります。

 例えば「マウス」。マックはパソコンで初めてマウスを実用化しましたが、現在のマックでは、販売のうち7割がノートパソコンであり、マウスがありません。デスクトップパソコン用の周辺機器としてタッチパッドも用意されています。タッチパッドでは、マルチタッチを使ったジェスチャーを使って使うのが一般的になっています。ですから、Lionからはタッチパッドに特化した設計になりました。スクロールバーが消え、タッチパッドで快適に操作できるよう改善されました。

「マルチウインドウ」という考え方も後退します。複数のウインドウを開いて複数の情報を確認しながら操作するのは、パソコンならではの要素ですが、他方で、複数のウインドウを管理するのは面倒でもありました。特にノートパソコンでは、アプリは1つずつ全画面で使い、各アプリの間を移動しながら使えた方が便利と感じる場面もあります。Lionでは、マルチタッチジェスチャーを使ってアプリを切り替える「Mission Control」(画像2)が搭載され、メールやウェブブラウザ「Safari」などのOS付属アプリの多くが「全画面表示が基本」となります。

 もう一つは「保存」。パソコンでは、ファイルを保存しないと「消えてしまう」のが基本。作業を終える時はもちろん、パソコンの異常停止に備えて、定期的に「保存する」必要がありました。しかしLion対応アプリケーションでは、AutoSave機能により、ファイルは自動保存されるようになりました(画像3)。保存されたファイルは履歴で管理され、「前のバージョンを呼び出して、その一部を再利用する」といった使い方もできます。

 販売・配布方法も、パソコンのルールというよりは「iPad的」です。OSの店頭販売は行われず、Mac用アプリのオンライン・ストアである「Mac App Store」でのダウンロード販売だけになります。価格も29.99ドル(日本では2600円)と格安。しかも「パソコン1台に1本(ライセンス)」ではなく、「持っているマックすべてで1本(ライセンス)」でOKなので、たくさんマックを持っている人であればあるほど更新費用の負担は小さくなります。

 実は、会見ではあまり強調されませんでしたが、名前にも大きな変化が生まれます。これまでは「Mac OS X」と言われていたのですが、名称から「Mac」がとれ、「OS X」とのみ呼ばれるようになります。

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プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)、「iPad vs.キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)がある。

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