ボクらはみんなランボーだ!〜映画『リトル・ランボーズ』

■リトル・ランボーズ (監督:ガース・ジェニングス 2007年イギリス/フランス映画)


1982年のイギリス郊外を舞台に、映画『ランボー』を観てシビレまくっちゃった少年たちが「ボクらも『ランボー』になってランボー映画を撮ろう!」と大奮闘するお話です。観る前は子どもたちが主人公のほんわか系な成長物語かな、と思ってましたが、実際観てみると意外と複雑な要素も加味されたイギリス映画らしい佳作になっていました。

主人公は小学生のウィル。映画を観て最初「あれ?」と思ったのは彼が学校の授業でTVを見せてもらえない、ということでした。そして映画を観ているうちに判ってくるのは、彼の一家が"プリマス同胞協教会”という宗教団体(実在している)に所属しており、その戒律としてTVなどの娯楽を禁じられていたということなんですね。そんなウィルはノートや与えられた聖書いっぱいにマンガを描き込んでは空想に浸る想像力豊かな子です。そんな彼はある日学校でも鼻つまみ者の悪ガキ、リーと知り合い、彼の家で海賊版の『ランボー』のビデオを観て大興奮、すっかりランボーになり切っちゃったウィルはリーといっしょに”なり切りランボー映画”を撮り始めるんですね。最初ウィルを使いっ走り程度に扱っていたリーは次第にウィルと友情を深めていきます。そんなある日、フランスから交換留学生たちが訪れ、その中のエキセントリックな少年ディディエが映画撮影に興味を持ち出し、「俺を主役しろ」と言い始めたことからウィルとリーの友情にヒビが入りだすんです。

監督のガース・ジェニングスは『銀河ヒッチハイク・ガイド』を撮った人ですが、それ以前には様々な有名ミュージシャンのミュージック・ビデオを撮っていた映像作家らしいんですね。この映画でも、身の回りにある道具を駆使して一所懸命映画を撮ろうとする主人公たちに監督の少年時代が重ね合わされているようです。さらにイギリスの元PV監督らしく使われている音楽も80年代ブリティッシュニューウェーヴのバンドのものばかりで、ゲイリー・ニューマンデュラン・デュラン、スージー&ザ・バンシーズ、キュアなど、あの時代の音楽にどっぷり浸かっていた自分には懐かしいものばかりでした.。そういえばPV監督であり映画監督、というとミシェル・ゴンドリーを思い出しますが、この『リトル・ランボーズ』はゴンドリーの映画『僕らのミライへ逆回転』と同じく、映画作りについての映画、映画を撮ることの喜びと楽しさについての映画、という部分で非常に共通点がありますね。『リトル・ランボーズ』はそういった”創造することへの愛”を描いた映画だということも出来るんですね。

ウィルには父親がおらず、母親が信仰する宗教にはなんとなく息苦しさを感じてます。それが彼を空想の世界へ連れ出したひとつの要因かもしれません。リーもまた父親がおらず、母はいつも不在で、兄だけが信頼と崇拝の対象なんです。リーの学校での暴れん坊ぶりは、この孤独さから来ていたのでしょう。リーにしろリーの兄にしろ、フランス人の子ディディエにしろ、最初はなんとなく”嫌なヤツ”として描かれますが、ウィルが映画を撮り始めることにより彼の周りの世界が広がり、そして様々なものを受け入れてゆくことで、リーやディデイエとの関係はどんどんと素晴らしいものになってゆくんですね。また逆に、リーやディディエにとっても、ウィルと知り合えたことが、彼ら自身の内面を変えてゆくきっかけとなるんです。意外と友達って、最初「なんだコイツ?」と思ったヤツのほうが知り合ってみると後々面白かったりもしますよね。こういった、「人と関わることで物の見方や自分自身が変わってゆく」、登場人物たちの内面の変化の仕方に意外性のある物語としても面白い映画に仕上がっていますね。

ディディエの登場によりウィルとリーは決別し、「もうお前となんか映画を撮らない!」と吐き捨ててリーは去ってゆきます。しかしここである事件が起こり、映画は思いも寄らないクライマックスを迎えます。「そう来たか!」と思わせるラストは感涙必至でしょう。さてウィルの作った映画はどんな完成を見せるのでしょうか。

リトル・ランボーズ 予告編


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