質の高い本を読むと、いろいろと得るものがあります。ただ、読んでも頭の中を情報が素通りするだけで、きちんと記憶できないときはイライラしますよね。実は、こうした時に記憶力をぐんと向上させるメソッドがあるのです。

Q&A サイト「Stack Exchange」にいた"本の虫"が、クイズゲームにも勝てる知識を身につけるコツについて教えてくれました。私は、自分が興味を持ったトピックに関するノンフィクションをよく読むのですが、本で得た情報をきちんと覚えていられないのが悩みです。

例えば、1年前にトーマス・ジェファーソンの伝記を読んだのに、今となっては、彼が生まれたのが1743年だということ以外、何も覚えていません。ジャーナリストのクリストファー・ヒッチンス氏や、作家であり神経科学者でもあるサム・ハリス氏といった私が憧れる書き手たちは、読んだ本の内容を当たり前のように暗記して引用しています。ヒッチンス氏に至っては、記憶だけを頼りに、ページ数まで含めて本の中身を引用するところを目撃しました。

可能であれば、何度も本を読み返さずに、こうした人たちのように情報を記憶しておきたいのです。本からもっとも効率的に情報を引き出し、記憶するためにはどんな方法が有効でしょうか?

以下、"本の虫"のひとり、TRdHさんの回答から。

記憶力を高める3ステップ

記憶は、以下の3つの要素からできています:

  1. 印象
  2. 関連づけ
  3. 反復

この3要素のうちどれかひとつを活用するだけでも、何かを記憶するのに十分です。でも、記憶する事柄を確実に頭に刻み込みたいなら、この3つを組み合わせた方法が一番効果的です。では、それぞれの要素について解説していきましょう。

(1)印象

何かに強烈な印象を受けた時(ここで言う「何か」とは、人の考えや絵画、音、人の顔、文章、状況など、さまざまなものが考えられます)、その事柄について覚えていられる可能性はぐんと高まります。例えば、子どものころにショッピングモールで迷子になった経験がある人なら、その時の様子について、かなり正確な記憶が残っているのではないでしょうか。

本についても同じです。トーマス・ジェファーソンの生涯について、本当にあなたの心に残る事柄があれば、その要素について覚えていられる可能性は高まります。幸い、本を読んでいる最中に、この印象を強化できる方法があるのです。

例えば、本を読むのをいったんやめて、本で描写されている場面を頭の中に思い描いてみるのもひとつの手です。その際、心に描くイメージの印象を強くするため、その状況の特徴的な部分を意図的に強調してみましょう。より暴力的にするとか、その人の偉大さをさらに強めるとか、あなたにとって衝撃的なものならどんなものでもいいでしょう。また、想像した場面に自分を登場させてみるのも手です。トーマス・ジェファーソンがあなたの助けに感謝しているとか、彼にひどい目に遭わされるとか、記憶に残るなら何でもかまいません。こうすれば、印象がさらに強烈になるはずです。

また、文章を音読するのも、印象の強化に役立つ場合があります。周囲の迷惑にならない程度の大きな声で読んでみるのも良いでしょう。個人差はありますが、目から入ってくるもの(書かれた文章)よりも、耳から入ってくるもの(音読する声)のほうが印象に残りやすい人もいるのです。

(2)関連づけ

自分が読んでいる内容とすでにもっている知識を結びつけられれば、その事柄が記憶される可能性はさらに高まります。その効果はときに、驚くほど強烈です。例えば、トーマス・ジェファーソンの生まれた日がたまたまあなたと同じ日付だったら、きっと簡単に覚えられるはずです。あなたが目にしたデータと、すでにあなたが確実に知っている事柄をリンクさせられるので、今後も決して忘れないでしょう。

これはつまり、新しい知識(=本で読んだジェファーソンの誕生日)という"ロープ"を、記憶の"木"(=すでに知っているデータ、ここではあなた自身の誕生日)に結びつけるようなものです。だからこそ、そのトピックについて詳しくなればなるほど、さらに多くの知識を難なく身につけられるのです。

(クリストファー・ヒッチンス氏やサム・ハリス氏が自分の専門分野についてとても詳しいように、)そのトピックについてすでに多くの知識があれば、ロープやそれを結びつける木は山ほどあるわけですから、強固な結びつきを作るのがとても簡単になります。というわけで、基本的な事柄を知り、本の背景にある事情について詳しくなれば、記憶にも残りやすくなるはずです。

(3)反復

1冊の本を10回繰り返して読めば、かなりの部分を覚えられるでしょう。これは何も本だけに限った話ではな、料理のレシピ、ふたつの場所を結ぶルート、歌詞、電話番号など、あらゆる事柄について当てはまります。何度も繰り返せば、それだけ記憶に残るというわけです。

本を最初から最後まで何度も読むのが面倒なら、記憶したいところに印をつけて、その部分だけを繰り返し読むようにしてみてはどうでしょう。この方法なら、覚えたいところを効率よく記憶できます。さらには、その本の印をつけた部分以外を覚えておく手がかりにもなるはずですよ。

ここまでをまとめると、頭の中に強烈なイメージを描いてしっかりと印象を残し、自分が知っている事柄と関連づけ(そのためにも事前に基礎知識を身につけておきましょう)、さらに同じ箇所を繰り返し読むと記憶に残りやすい、ということです。これらのメソッドを意識して記憶力を高めれば、どんなものでも自由自在に覚えておけるようになりますよ。

Andy Orin(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)

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