書籍・雑誌の貸与権

木々ノ日記@livedoorblog:レンタル本屋はやろうと思えば(たぶん)できる(はず)。(きっと)(マジメにやろうとしたら)面倒だけど。 - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/livenhk/archives/50548073.html

上記エントリをはてなブックマークにブックマークしたときに、次のコメントをつけた。

貸与権が適用されなかった時代は、誰に断ることなく、営利の貸与が可能だったが、昨年から許諾が必要になった。だから逆。

そのことについて、5月31日付のダイアリにコメントをいただいたので、改めてここで取り上げたいと思います。

その前に、上記の「木々ノ日記」のエントリは、

発想日記:なぜレンタル本屋がないのか?
http://blog.livedoor.jp/dogmanage/archives/50593098.html

このエントリに対してのものなので、こちらも併せて先に読んでいただきたい。

「木々ノ日記」のエントリでは次の様に書かれています。

以前はたしか法律の問題で貸本業が難しかったのだと思います。
が、これは書籍にも貸与権が認められることで一応クリアされました。
CDやレコードに認められていた貸与権を書籍なんかにも広げましょうって話です。

ブックマークでのコメントは、基本的にこの部分に対するものです。

2004年12月31日までは、書籍・雑誌には貸与権は適用されていませんでした。
2004年の著作権法改正で書籍・雑誌にも貸与権が適用されるようになり、2005年1月1日から施行されました。

さて、「貸与権」とはどのような権利か、改めて確認します。条文はこれです。

貸与権
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

著作権は権利の束とよばれ、様々な支分権があり、「貸与権」もその一つです。
基本的に、支分権の「○○権」とは、権利者だけが「○○」できる権利を持っている、ということです。これは、権利者以外の人は「○○」できないと言うことです。そして、権利者は他者が「○○」することを禁止できる権利でもありまし、他者に「○○」することを許諾することができる権利でもあります。
著作権とは、許諾権であり、禁止権でもあるのです。

つまり「貸与権」とは、著作権者以外の者が著作権者に無断で貸与してはいけない、という権利であり、無断で貸与を行うことを禁止することのできる権利なのです。

2004年12月31日までは、書籍・雑誌には「貸与権」が適用されていなかった、すなわち、書籍・雑誌には「貸与権」は発生していなかったので、著作権者の許諾を得ることなく、誰でも自由に「貸与」を行うことができました。そして著作権者もそれを禁止することはできませんでした。

しかし、2005年1月1日からは、(非営利かつ無料の場合を除き)著作権者の許諾を得ることなく、書籍・雑誌を貸与することができなくなったのです。

ですから、2004年12月31日までは、法的な問題が無かったので、誰でも貸本業を行うことができたのですが、2005年1月1日以降は、法的な問題が発生したため、貸本業を行うことは難しくなったのです。
なお、ブックオフがこの法改正に併せてレンタルブック店を閉店したとの報道もありました。

Copy & Copyright Diary - ブックオフのレンタルブック閉店
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20050117/p1

以上が、ブックマークのコメントについての補足です。

なお、「木々ノ日記」のエントリの他の箇所で気になる点もありますので、それについてもふれていきたいと思います。

書籍なんかにもひろげましょうか、ってはなしが出たのは、たぶんマンガ喫茶がたくさんできて、無料でマンガ読まれちゃったら商売あがったりだぜ的な考えが出版側に生まれたからだと思う。

マンガ喫茶には貸与権は及びません。
マンガ喫茶は、その店の敷地内でマンガを読ませているだけで、それは著作権法上の「貸与」には該当しません。
当初マンガ家や出版者側は、おっしゃるように「貸与権」でマンガ喫茶を規制できると考えていた節がありますが、「貸与権」ではマンガ喫茶を規制できないと気づき、一度振り上げたコブシの落とし先として、一部のレンタルCD・DVD店がマンガを置き始めたことを取り上げ、レンタルコミックがターゲットとされた、という経緯があります。

あー、図書館は公貸権とかいうのがあるらしいです。初めて知った。

「公貸権」は日本の法律には存在しません。
ヨーロッパを中心とした一部の国で、導入されてる権利で、作家が図書館の貸出に応じて補償金を受け取ることのできる権利のことですが、国によって制度はだいぶ違いますし、導入されていない国もたくさんあります。
ほとんどの国においては、著作権法とは別の法律を作って定めています。
繰り返しますが、日本においてはその権利は存在していません。


さて「発想日記」の最初のエントリ「なぜレンタル本屋がないのか?」に対して、少なくとも2004年12月31日までは、法的な問題は存在しませんでした。
それなのになぜ「レンタル本屋」が無かったのか、あったとしても少ないのか、というと、私は「儲からないから」「利益がでないから」だと思います。
DVDやCDに比べて(一部の廉価版DVDを除いて)本の値段は「安い」場合が多いです。
その「安い」本をさらに安い値段でレンタルしても、利益はほとんどでないのではないでしょうか。また1冊の本が何回借りられるかについても、DVDやCDに比べて少ないのではないかと思います。本は何回も読まれると汚れますし、破損します。そう考えると、DVDやCDのレンタル業は成り立っても、「レンタル本屋」難しいのではないかと思います。