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東京の屋上に死の灰??ガイガーカウンターがついたウソ

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百聞は一見にしかずといいますが、6μSv/hをガイガーカウンターが指し示す動画のインパクトは強いようで、「杉並区の屋上に死の灰」というネット上の心配が広がりつつあります。

まずは、この動画を御覧ください。どうでしょうか?実は東京も、6μSv/hとかいう退避が必要な区域レベルの放射性物質があって、公的機関は情報を隠しているんでしょうか?公的機関の監視役をしている国際環境保護NGOグリーンピース は今回の公表値は概ね再検証して同じと発表しているのですが、グリーンピースも間違っているんでしょうか?はたまた、東京に局所的に値が高い場所が存在するんでしょうか?

その答えとして、前回のエントリー「東京の屋上で、5.4μSv/hrや0.5μSv/hrが計測された意味」で、広い面積に落ちた埃が濃縮されたためという見解を引用しました。ともかく、この6とか5.4μSv/hという値は、公的機関が発表する数字とは比べられず、東京が危険だという訳ではないという理解です。
そして、4/13の午後に以下の解説を放射性物質測定を専門とされる、 @kun_f さんよりいただき、この測り方では「地表の放射線量」の測定ができておらず、6μSv/hというのは参考にできない数字だということがわかりました。

飛散物に密着させ6μSvはそれほど驚くべき値ではない、ということです。空間線量率=6μSvではない。空間線量は線源からの距離の二乗に反比例。モニタリングポストは地面に密着してませんよね RT @sakamotoh: 局所的に放射性物質が濃縮された箇所がある という解釈が正しい
http://twitter.com/#!/kun_f/status/58049790847623168

地表の放射線量を調べるのに、地表に密着させてはだめで1cm離して測定する必要があるのです。地表には放射性物質がある可能性があり、その影響が距離の二乗に反比例することから、密着して例えば0.5mmの距離で測るのと、1cm(10mm)で測るのとでは 20x20=400 で、400倍もの値の増加がされうることになります。もちろん、0.5mmも離れずセンサーに密着していて 0.1mm なら1万倍です。

そして、センサーに放射性物質が付着してしまうとその後はどこで測ってもその付着した物質の影響を受けて値が高くなってしまいます。

そもそもガイガーカウンターが測れるものは、毎分のガイガー計数値(CPM)という、ある核種(放射性ヨウ素とかセシウムとか)がどれだけ計測されたかというデータでそれを、何を測っているかという想定からベクレルに換算し、さらにシーベルトに換算されて値が出ます。動画のガイガーカウンターはそこを自動でやってくれる高級機のようですが、想定に従って計算を自動化してくれるだけであり、実際の人体への影響度そのものを測れるわけではなく、取り扱い次第で値が大きく異なることになります。

@kun_f さんは、6μSv/hという値からそもそもどういう放射性物質があったのか、物質(核種)がセシウム137で最も影響の大きい経口摂取の係数 1.3×10-8 (mSv/Bq)を使って逆算し、461ベクレルを導きだされました。
http://www.tweetdeck.com/twitter/kun_f/~ABOYz

6.0×10-6(Sv)/1.3×10-8 (mSv/Bq)                     = 461Bq
  6μ (Sv)       ÷セシウム137の経口摂取実効線量係数 = 461ベクレル
ということです。そういう推定から、

測定物対象物の質量が不明ですのでどれだけ経口摂取しても平気かは判りませんが国の暫定規制値野菜類は2000Bq/kgまで、水道水は300Bq/kg暫定規制値と比較しても、映像のエリアの土を全量飲み込んだとしても制限値の水を1.5リットル飲むのとさほど変わりがありません。ですので高濃度部分に近づいたり座ったり触れることが危険というレベルではないと思います。

※モニタリングポスト等で公表されている値(μSv)等は「空間線量率」であり土壌・空間中・宇宙線等を全て平等に合算した数値です。それを平時と相対的に評価するためのものであり、線源と密着させた値と比較して意味がありません(モニタリングポストは地表から離れてますよね)

と結論づけられています。

そもそも、これだけの値が出るにも、ある程度面積がありそうな屋上の埃が濃縮されるようなことがあっての値であり、密着させてももっと低い場所もあることを考えると、4月上旬現在の東京の放射性物質量は問題なく、東電福島第一の処理の行方や退避地域の様子を心配する方がいいと思いました。

保育園の子どもを砂場で遊ばせていいのか?という不安をお持ちの方も多くいらっしゃり、専門家を探し出し見解を聞く、私なりに理解して分かりやすく伝えるということを努力しました。

この動画を撮影された方も人々の健康を心配して測定、撮影されたのだと思います。もとの撮影者の方はデータの引用は不本意とおっしゃっていますが漏れてしまった映像はすでに拡散しており不安は広まっています。その科学的意味を正確により広く伝えることが使命だと思いこのエントリーを書きました。この意図を理解していただければと考えております。

そして、東電福島第一の現場で働かれている方々、避難地域の方々と残された家畜やペットといった命あるものの、安全と健康、そして幸せを改めて遠い東京の力願わずにはいられません。

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