「欧州にこたつを」初の販売会、日本愛に満ちたフランス人男性の挑戦。

2011/11/22 14:35 Written by Narinari.com編集部

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日が短くなり、暖房器具が手放せなくなってきた冬のフランス。椅子に座ってパソコン作業をするには不向きな季節で、ふと日本を、そしてこたつを思い出していた頃、“ヨーロッパ初”の触れ込みでこたつの展示販売会が開かれているとの情報を聞きつけ、ナリナリドットコムのフランス特派員はさっそく会場を訪れてみた。

「私は日本の家具で一番好きなのがこたつなのです」。こたつを販売するル・ヴレ・ムーブル・ジャポネ(=“日本の本物の家具”の意)社のオリビエ・カラメル代表は、流暢な日本語で話し始めてくれた。こたつだけでなく、ヨーロッパで日本の家具はそれほど知られておらず、彼の談によればその良さがわかるのは「1,000人いて1人くらい」の状況だという。オリビエさんは20年にわたり、日本とフランスの間で日本の家具について学んだそうで、その深い造詣からは、日本の職人仕事、本物志向についての深い愛情を感じさせる。

今回、展示会で販売されているこたつ「和み」は、その本物志向のこだわりが見られる一品だ。香川で作られたという重厚感のある机部分は、サントリーのオーク樽の素材を使用。ウレタン塗装された天板は高級感のある仕上がりで、そのきめの細かさには驚かされる。脚の部分にはオリビエさんのこたつに対する思いを込めた“和み”の文字が彫られており、ヒーター部分は出っ張りのないとてもモダンな仕上がりだ。

布団部分にも一切の手抜きはない。岡山で作られた高級布団に、京都の布団カバーを組み合わせている。ソファを使う家庭も想定に入れ、コーヒーテーブルとしての使い方も提案しているが、「やはりこたつを愛する者として、布団はとても大事なのです」とのことだ。

価格は一式すべてのセットが2,885ユーロ(約29万9,000円)とかなりお高いが、このモデルは日本でもかつて16万円という価格帯で販売されていた高級こたつで、日本製品が国内の3倍程度の価格になってしまうフランスの事情を考えると適正ともいえるだろう。

「今、日本なら『ドン・キホーテ』などに行けば、こたつは5万円くらいで手に入るかもしれない。パリでも布団を扱うお店などはあるが、私は本物でないと思っています。私は日本の素晴らしい『本物』を伝えたいのです」(※編集部注 実際には日本では1万円程度のこたつもある)と、オリビエさんは微笑みながら、日本についての愛情を語ってくれた。

ちなみにヨーロッパと言えば、部屋の中でも靴を履いているイメージが強いが、オリビエさん曰く「正確ではないが、部屋の中でも靴を履く家庭とスリッパの家庭は半々くらいではないでしょうか」。つまり、ヨーロッパの家庭にも、こたつが入り込む余地はあると見ている。現在のところ日仏カップルの家庭や、日本に駐在していた経験のあるフランス人などから注文があったそうだ。

お話を聞かせてもらっている間、こたつにずっとあたっていたが、その間も何人かのフランスのお客さんが興味深げに話を聞いていた。ただ、靴を脱ぐことに抵抗があったり、そもそもこたつ自体が何かがわからないこともあり、実際に試す人は多くはない。

オリビエさんはほかのサイズの販売についても準備を進めているものの、フランスの安全基準審査を受けるには高額な審査料が必要なため、バリエーションを増やすには少し時間がかかるという。そして、彼は最後にこんな言葉を残してくれた。

「こたつは中国にも韓国にもない、日本独自の文化。皆を和ませることの出来る素晴らしい家具だと思います」

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