製油所閉鎖は震災も念頭に
石油会社が製油所の生産能力削減を本格化している。国内需要の減少に対応した設備過剰の解消は、石油業界が避けて通れない道である。
一方で、能力削減の結果、残った製油所が大都市に偏るようでは、震災などで受ける被害が大きくなり、石油を必要とする被災地の復旧が遅れかねない。大規模災害への備えも念頭に置いた、生産・供給体制の再編が欠かせない。
ガソリンや軽油など、石油製品の国内需要は減少が続いている。海外では大型製油所が相次いで稼働し、割安な製品が市場に流れ込んでいる。国内製油所の稼働率は7割に落ち込んでいる。設備過剰への対応は急務である。
出光興産は徳山製油所(山口県周南市)の設備を止め、コスモ石油は坂出製油所(香川県坂出市)を閉鎖する。9年間で1割減った国内の精製能力は2014年3月までにさらに1割減る見通しだ。
石油会社が効率の悪い製油所から閉じるのは当然だ。どうしても消費地に近い、大都市圏に製油所が残ることになる。1980年代に49カ所にあった製油所は27カ所に減り、その7割が太平洋側に集中している。日本海側に残るのは1カ所だけだ。
この傾向が強まれば、東海沖から四国沖に延びる「南海トラフ」沿いや、首都近辺で巨大地震が起きれば、全国で石油製品の供給が滞る事態になりかねない。
東日本大震災で得た教訓の一つは、被災地にガソリンや灯油をいかに迅速に届けるかだった。電力が送電線を必要とするのに比べ、ドラム缶に入れて運べる石油は緊急時に使いやすいエネルギーだ。
設備能力の削減と並行し、災害時に供給を続けるための備えを万全にしなければならない。そのためには、企業の枠を超えた協力が欠かせない。今国会で成立した改正石油備蓄法は、石油会社間で災害時の協力計画を作ることを義務付けた。加えて平時から生産や物流で連携できれば、各社の競争力の強化にもつながるはずだ。