ある日突然、「虐待」で通報された親子のトラウマ

本当に必要な対策とは何か?

突然子どもたちが「保護」された

「児童相談所です。お子さんたちを保護させていただきました」

今から4年前、2月最後の月曜日だった。

Bさんはいつものように小学4年生と5年生の年子の子どもたちを学校に送り出し、自宅で今日締切の原稿を書いていたところだった。

Bさんは翻訳家。夫も同業だ。

午前11時ちょうどに、Bさんの携帯電話が鳴る。そして、突然、何の前触れもなく告げられたのは冒頭のひと言だった。

「ちょっと待って下さい。子どもが保護されたって、どういうことですか?」

Bさんは混乱した。保護ってどこへ? 兄弟ふたりとも一緒に? 児童相談所って?

 

次男は先週インフルエンザに罹患し学校を休んでいた。今朝は治癒証明を持っての久しぶりの登校だった。

次男の体調も心配だが、長男は発達障害を抱えていて、環境の変化には適応できない。不安は募る。

学校に電話をして担任を呼んでもらうように頼んだ。が、児相が絡んだ案件は担任とは話ができないという。管理職以上、つまりは副校長や校長としか話せないのだ、と。

日々の子どもの様子を知っている担任と話せないなんて。そこで初めてBさんは自分が置かれた立場が想像以上に厳しいことを理解する。

「ご両親お二人で児童相談所に来て下さい」

〔PHOTO〕iStock

打ち合わせ先から急遽戻って来た夫とともに児童相談所に行くと、その児相に子どもたちはおらず、児童相談所に付属した一時保護所にいるというが滞在先は教えてもらえなかった。

そして、子どもたちが保護された理由をこう伝えられた。

「複数の方から『子どもが虐待されている』と通報があったんです」

もちろん、虐待しているのはBさん夫妻と決め打ちだ。

長男は小さな頃から育て難い子だった。時折金切り声を上げる。泣き止まない。

「虐待と間違われることもあるかもしれないね」と夫婦で冗談を言ったこともあった。

親としては悩む。市区町村の育児支援を担う「子ども家庭支援センター」にも幾度も相談に行き、発達に関する診断テストを受けた。結果、発達障害と診断された。診断は決して軽微なものではなかった。

親の勉強会にも積極的に参加し、パニック時の対応等も学んだりもしていた。

実は、以前2回ほど子ども家庭支援センターにもBさん夫婦が「虐待している」との通報があった。

その都度担当者から連絡が来て話をしたが、長男の事情も知っている子ども家庭支援センターは通報内容とは乖離があるとして特に問題としなかった。

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