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ロンドンwikileaks事件/続報

拘束された邦人と中東イスラム社会の関係


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ロンドンで身柄拘束された菅原潮氏(46)についてだが、その後、既に釈放されていることが分かった。ただし、身柄拘束はないものの未だ当局の監視下にあり、米・英捜査機関の聴取を受けている模様だ。
聴取は主に、合衆国国土安全保障省(DHS)とFATFが主導しているが、前者はテロ活動資金、後者はマネーロンダリングを監視、規制する政府機関である。
この事件を読み解くには、いくつかの謎解きと知識が必要と思われるので、系列立てて説明したい。
【写真ウサマ・ビン・ラディン】

中東イスラム社会とイスラム金融
中東イスラム地域には石油資源によって得られる潤沢な資金がある。そして、その資金の流れにおいては、厳格なイスラム教義に則ったイスラム金融というシステムが介在している。
イスラム金融の基本はリバー(利子)の禁止とシャリーア(人道の実践)にもとずく金融である。
ただし、利子という概念は許されないが、結果としての利潤は認められているため、イスラム系銀行から、非イスラム銀行への出資金融と信託金融が盛んに行われている。
では、なぜ菅原潮氏(監視者であるが、容疑者ではないため敬称をつける)は米捜査当局に目をつけられるほどイスラム金融と深い関係にあったのか?彼がイスラム教徒でないことは確認されている。

石油取引とイスラム金融
イスラム金融の概念において、食肉産業、アルコール産業、その他教義で禁じられている関係への出資は認められない。
そこで、安定した利潤のえられる石油取引事業へ巨額なイスラミック・マネーが使われることになる。
自分たちが神から与えられた石油によって得た金を、取引する者へ出資し、利潤の還元をはかること、まさに、イスラム金融最高のモデルである。そのため、石油取引に関しては簡単に低コストで資金調達ができる仕組みになっているのだ。

イスラム金融におけるとバーレーンとロンドン金融市場
さて、菅原氏の口座情報にバーレーン王子、アブドラ・ビン・ハリファ氏の名前があったことは既報のとおりである。
バーレーンは中東イスラム金融の中心として30年以上機能し、世界初のイスラム債を発行するなど特別な存在の国である。
サウジアラビア等中東の主要石油産出国のオイルマネーは、まずバーレーンを経由して、ロンドン金融市場へ流れ、様々な金融商品へ派生していくことになる。
あまり意識されていないが、中東とは英国を中心とした地域概念であり、その金融システムもロンドンが基準となっている。
また、イスラム社会にとってアメリカは最大の敵であり、その敵国の通貨USドルは悪の金なのである。従って、石油取引決済に使われる多くはユーロなのである。

マイケル・ジャクソンとイスラム教 ロンドンwikileaks事件/続報_a0175782_19294672.jpg
右の写真はバーレーンの首都マナーマで撮られたものであるが、アラブの伝統的衣装アバヤを身に纏ったマイケル・ジャクソンである。
彼は、2008年、正式にイスラム教へ改宗しているが、その背景には、彼が母国アメリカで受けたバッシングや訴訟問題があると思われる。 そこには、アメリカを敵とみなしているイスラム社会への共感があったのかもしれない。
また、マイケルの寄付や慈善活動の内容から、何かイスラム教の教義に通ずるものを感じずにはおれないのである。
また、彼の死については、様々な憶測が流れているが、その中には、マイケルの平和をもとめる活動とその影響力を恐れたアメリカ政府が謀殺したとする説もある。

イスラム原理主義組織とテロ活動資金
9.11事件はウサマ・ビン・ラディン率いる「アルカイダ」の起こしたテロであるが、これを機に世界中の金融当局が連帯してテロ活動資金の監視と封じ込めを強化するようになった。
イスラム社会すべてが、テロ活動を支持している訳ではけっしてないが、潤沢なオイルマネーによる支援が後を絶たないのも事実である。
イスラム原理主義組織はアメリカ政府にとって脅威であることに間違いはない。また、石油は戦略物資として扱われ、その取引自体も監視対象なのである。

wikileaksのもたらした結果
今回wikileaksが公開した文書によって、合衆国政府機関がテロ活動資金とマネーロンダリングの疑いが少しでもあれば徹底的に監視するということが分かった。
菅原氏は、調達コストの低いイスラミック・マネーと、秘匿性の高い銀行を使っていたこと、バーレーンのハリファ氏、そして、マイケル・ジャクソンと関係していたため目立ってしまった。
wikileaksが文書を公開しなければ、何もなかったかも知れないが、公開されてしまったからには、当局も放っておくことができなくなったのだろう。
果たして、真実がどうなのかは未だ分からない。今後の進展に注意したい。
by digitalonline | 2010-12-14 20:31