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『新古典派経済学の正体(前編)①』三橋貴明 AJER2012.11.20(3)

http://youtu.be/QZuYIh3S234

『新古典派経済学の正体(前編)②』三橋貴明 AJER2012.11.20(4)

http://youtu.be/mU3kutVIQjY
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【11月29日(木)国家ビジョン研究会シンポジウム(司会:三橋貴明)】
http://www.kokka-vision.jp/
 日時:11月29日(木)13時~17時 会場:衆議院第一議員会館
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藤井聡京都大学教授 平成24年度総選挙に向けてのFacebook発信記録
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/general-election
是清プロジェクト開催中!(場所が変わりました)
https://m-keizaijuku.com/event
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 前回の最後に、日本のマネータリーベース(日銀・政府が発行した日本円の通貨)及びマネーストック(社会全体のお金の量)が増えている状況にも関わらず、コアコアCPIが下落している「不思議な現象」を書きました。特に、マネーストックが増加している状況で物価が下がるという現象は、本当に不思議ですね。


 「社会全体のお金の量>モノ・サービスの量」になれば、物価(モノ、サービスの価格)は必ず上がるように思われます。とはいえ、現実には上がっていない。


 理由は、「マネーストックの拡大=モノやサービスへの消費、投資としてお金が使われた」には必ずしもならないためです。モノやサービスへの消費、投資(サービスへの投資というのは無いですが)として使われるお金の量が増えれば、これは間違いなく物価上昇をもたらします。とはいえ、マネーストックの拡大=消費、投資に使われたお金の量の拡大、にはならないのです。

※ここでいう「投資」とは、具体的に企業の設備投資、民間住宅投資、そして公共投資を意味する


 例えば、「金融経済の世界」で取引が増え、マネーストック(社会全体のお金の量)が増えていったとして、物価は上昇するでしょうか。上がりません。お金が「金融経済の世界」でどれだけ動いても、消費と投資という「実体経済の世界」に落ちてこなければ、物価には影響を与えません。


 あるいは、一般企業や家計が銀行融資で「土地」を購入した場合も、マネーストックは増えますが、物価に影響は与えません。土地の購入は、消費でも投資でもなく「所得の移転」に該当します。何しろ、土地とは日本国民の労働により生み出されたものではないためです。日本国の土地は、日本の国土的条件として初めから備えられていたものになります。(物価に影響を与えない取引は、他にもあります。分かるかな?)


 物価に影響を与えないということは、消費や投資の「お金に換算した価値」が上がらないという話です。そして、消費や投資の「価値」が上がらなとは、「所得の価格」が上がらないという意味でもあります。何しろ、所得とは、
誰かが働き、モノやサービスという付加価値を生み出し、それに消費、もしくは投資として支払いが行われた結果、獲得したお金
 という定義になります。


 所得の価格が上がらないとは、皆さんの「労働の価値」が高まらないという話でもあります。
 デフレの本当の恐ろしさは「物価下落」ではなく、皆さんの所得が縮小し、労働の価値が日に日に下がっていくためなのです。


 アメリカの量的緩和第二弾は、「長期米国債」をFRBが購入するというスタイルでした。約6000億ドル分の長期米国債がFRBに買われ、ドルが供給されたわけですが、物価にはほとんど影響を与えず、つまりはアメリカの大元の問題である「雇用改善」にほとんど貢献しませんでした。なぜでしょう。


 理由は、FRBから供給されたドルが国内の設備投資に回らず、先物取引といった「金融経済の世界」を動き回る傾向が強かったためです。結果的に、原油先物や食料先物が上昇し、途上国を中心にコストアップ型インフレをもたらしました(日本は円高のせいでほとんど影響を受けませんでしたが)。


 問題なのは、先物取引でトレーダーが年に100万ドルの所得を稼ごうが、1000万ドル稼ごうが、必要な「雇用」は一人分ということです。1000万ドルの所得が製造業や建設業などで生まれれば、一人10万ドルの年収と考えても、100人分の雇用が創出され、アメリカの失業率が下がります。製造業や建設業で雇用が生まれるとは、要するにこれらの産業の企業が「投資」をしたという話です。国内の企業の設備投資という「実体経済の世界」に中央銀行が発行したお金が落ちてこなければ、国内の雇用改善には役立たず、国民の「中間層」の所得が創出されることはありません。(ついでに書くと、ご想像はつくでしょうが格差は拡大します


 すなわち、アメリカ政府は量的緩和第二弾を実施すると「同時」に、国債発行と財政出動でお金を「実体経済の世界」に送り込まなければならなかったのです。一応、やってはいましたが、共和党の反対などを受け、不十分に終わりました。ポール・クルーグマンは、オバマ政権の「財政出動の小ささ」を批判しています。
 
 というわけで、正しいデフレ対策は「通貨を発行し、政府が借り入れ、所得・雇用が生まれるように使う」になります。無論、いつまでもこのプロセスを回せという話ではなく、「デフレ脱却」が実現するまでで構いません。具体的には、インフレ率(できればコアコアCPIで見るべき)の目標(例:3%)を定め、「目標を達成するまで」量的緩和と国債発行、政府の雇用・所得創出を続ければいいわけです。


 上記の「正しいデフレ対策」について、かつての「超デフレ期」であった大恐慌期に世界に先駆けて実施し、我が国を恐慌経済から救い出した人物こそが、まさに高橋是清なのです

(参考「コレキヨの恋文 」)


【図1 戦前の東京小売物価指数(対前年比%)の推移
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_39.html#TOKYOCPI


 図1の通り、1920年の大正バブル崩壊以降、元々デフレ傾向だった日本は、1929年のアメリカNY株式大暴落に端を発する大恐慌により、東京小売物価指数がマイナス10%超という凄まじいデフレーションに陥りました。同じ製品を同じ数売っても、売上が10%以上下がるというわけで、企業の投資は完全に凍り付き、失業者が増大しました。


 犬養内閣の大蔵大臣として再々登場させられた高橋是清は、「日銀の国債買取」「政府の財政出動」という正しいデフレ対策を世界に先駆けて打ち、我が国をデフレから立ち直らせます。1935年には、高橋是清は日本が「完全にデフレから脱却した」と判断し、財政引締めを開始しました。


「デフレ期にはデフレ対策を。インフレ期にはインフレ対策を」


 高橋是清は、まさに「環境変化に応じた政策」を打っていったに過ぎません。しかも、是清が凄いのは、デフレ期には政友会に「デフレ対策」を主張させ、選挙に勝ち、インフレ期には民政党に「インフレ対策」を主張させ、またもや選挙に勝ってしまったことです。(是清は岡田政権期に政友会を追われ、民政党に移りました)


 すなわち、高橋是清は常に「民意」を獲得した上で、デフレ期にデフレ対策を、インフレ期にインフレ対策を打っていったのです。とはいえ、当時は「ピストル」がモノをいう時代でした。軍部主流派の意向に逆らい、「インフレ期の軍事費削減」を貫いていった是清は、226事件で命を落としてしまいます。


 さて、是清の死後、新たな大蔵大臣となった馬場 鍈一は、軍事費を対前年比で30%超も増やす「インフレ期のデフレ対策」を始めました。折しも支那事変が始まり、日本は軍事の「需要」が拡大し、供給能力が次第に需要に追い付かなくなり、インフレ率が上昇していきます。特に、対米開戦以降の日本は、さすがに需要に供給が全く追い付かなくなり、インフレ率は50%「近く」にまで達しました。


 とはいえ、大東亜戦争終盤においても、インフレ率は「わずか」50%未満に過ぎなかったわけです。


 さて、昨日、ご紹介した記事において、野田総理は、
「日銀に直接引き受けさせることは、戦後の日本のハイパーインフレなどの教訓があって、日銀の独立性が知恵として出てきたのにそういう禁じ手まで使う。二重の意味であってはならない経済政策だ」
 と語っていました。


 おお! 吃驚した! 戦争中は50%にしか「満たなかった」我が国のインフレ率が、戦後に13000%を突破したとは。というわけで、戦後のインフレ率をグラフ化しました。


【図2 戦後の東京小売物価指数(対前年比%)の推移】
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_39.html#TOKYOCPI2


 あれれ・・・・? 米軍に国土を焼け野原にされ、供給能力が極端に落ち込んだ1946年の日本であってさえ、東京物価指数は対前年比で500%「程度」でしかないのですが・・・・。


 無論、インフレ率500%というのは、大変な数値です。何しろ、物価が一年前の六倍になるという話になります。とはいえ、フィリップ・ケーガンの「インフレ率が毎月50%を超えることがハイパーインフレーション」には全く及びもつかない数値です。野田総理。あなたは、
「戦後の日本のハイパーインフレなどの教訓があって」
 と公共の電波(NHK)で語っています。一体、あなたの頭の中で「ハイパーインフレーションの定義」は何パーセントになっているのですか。総理自ら、定義不明な「ハイパーインフレーション」という用語を使い、国民をミスリードしようとする。あなたは、政治家失格です。

 しかも、日本の戦後の高インフレは、瞬く間に終息し、1950年にはマイナスに突っ込んでしまうわけですが。


 恐らく、終戦直後の日本は、史上最もインフレ率が高かった時期でしょう。それにも関わらず、インフレ率が500%「程度」(全国はもっと低いです)だったという事実は、我が国が供給能力の蓄積が大きく、デフレになりやすい国であることを意味しています。国土が焼け野原にされ、供給能力の八割を失った1946年時ですら「500%未満」のインフレ率だった日本をつかまえ、
「はいぱ~いんふれ~しょんになるっ!」
 と言ってのけるとは。


 歴史も事実も数値データも全て無視し、国民を「自己の利益のため」にミスリードするべく奮闘する。恥ずかしいと思わないのですか、野田総理、民主党、そして日本銀行。


 ところで、上記のような「事実」を書くと、
「いや、ハイパーインフレーションはインフレ率が高いことを意味する。田中角栄の狂乱物価も、ハイパーインフレーションだった」
 などと、定義も数値も無視した暴論を叫ぶ変な人がいます。はあ、なるほど。田中角栄の狂乱物価ですね。


【1971年以降のコアコアCPI(対前年比%)の推移】
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_39.html#CoreCoreCPI


 ニクソンショック以降の金融緩和による流動性拡大。オイルショックによるコストプッシュ型インフレ。そして、田中角栄による「国土の均衡ある発展」に基づく不要な公共投資拡大。
 インフレ率を押し上げる三要素が三つもそろったため、さすがに1974年のコアコアCPIは対前年比で20%近くにまで上昇しました。とはいえ、その後の政府のインフレ対策により、物価上昇率はみるみる低下していきました。
 
 ポイントは、戦中だろうが戦後だろうが、あるいは戦前だろうが、日本が定義通りのハイパーインフレーションになったことは一度もないという事実です。しかも、日本史上最も「需要>供給能力」だった1946年でさえ、我が国のインフレ率は500%に至りませんでした。


 それにもかかわらず、現在のマスコミは、
「自民党政権がインフレ目標3%を達成するまで、無制限の日銀による金融緩和を実施し、建設国債で調達したお金を国土強靭化につぎ込むと、ハイパーインフレーションになる」
 と主張しているわけです。


 恥ずかしいと思わないのですか。「ハイパーインフレーション」「禁じ手」「制御不能なインフレ」などと、定義が不明な印象論、抽象論を語っている政治家、評論家たちは、わたくしが昨日、本日と解説してきた事実やデータを知っていますか。


 知らないということであれば、あなた方は二度と「経済」について語る資格がないという話になります。知っていたならば、あなた方は単なるプロパガンダを振り撒く悪質なミスリードをする「犯罪者」になります。真相はどちらですか。


 第一次世界大戦後、元々インフレ気味だったところに、フランス・ベルギー連合軍に国内の「最大の供給地域」であるルール地方を占拠されたドイツは、定義通りのハイパーインフレーションに陥りました。


 あるいは、第二次世界大戦末期に国内でソ連赤軍とナチスドイツの戦いが繰り広げられ、国内が無政府状態に陥ったハンガリーも、ハイパーインフレーションになりました。


 さらに、ムガベ大統領が白人優位だった国内の生産能力を極限にまで削減し、白人経営者たちを事実上、追放してしまったジンバブエもハイパーインフレとなりました。


 すでにお分かりでしょう。戦争をやっているわけでもなければ、国内を焼け野原にされたわけでもない日本が、「インフレ目標を達成するまでの日銀国債買入」を実施しようとも、ハイパーインフレーションはもちろん「制御不能なインフレ」にさえなりようがありません。


 というよりも、日本は「もう一つの理由」により、インフレ目標3%を達成するのさえ、相当に苦労することになります。本件につきましては、明後日のブログで解説致します。


 それはともかく、日本国でハイパーインフレという言葉を使う人は、我が国を「焼け野原」にしたいのか、あるいは経済に「無知」な愚者ということになります。野田総理。あなたはどちらなのですか?


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