転換は確実に起こっている

2011年2月18日(金) 7:20:00

昨日は内閣府の勉強会で2時間しゃべってきた。
総務省や文科省などからも聴きに来てくださった方がいて、質問も多く、しゃべっている方としても楽しかった。

テーマはソーシャルメディアである。
政府や省庁はソーシャルメディアをどう扱って生活者(特に若者)とコミュニケーションをとっていけばいいか、若者の意見をもっと聞いていくツールとしてどう機能できるのか、若者の政策参加のツールとしてどうなのか、というような問題意識が政府や省庁の間で高まっていることを受けてのものであるようだった。

ボクは鳩山政権時にそのソーシャルメディア利用をお手伝いしたので、その経験も含めて呼ばれたようである。
ソーシャルメディアを概観しつつ、具体的にどう使っていけばいいのか、考え方のキッカケになるようなお話を意識してさせていただいた。鳩山さんのときの事例も具体的に。あとは意見の集め方の一例としてクラウド・ソーシングの話なども。

ネット初期にこういう話をしても、特にお役所系は「ネットの良さはわかるけど、ネットの危険な面はどうなのよ」と、ネットの闇的な部分ばかりに質問がいって「やっぱりネットはダメ」という感じになっていくのが普通だったのだが、今回は質問も前向きのものが多く、時代が変わって行っているなぁ、というのを実感させていただくものとなった。

ソーシャルメディア(特にフェイスブックやツイッターは)はいままでのネット上のコミュニティと違って、リアルな人間関係をそのまま持ち込みやすいし、持ち込む人が多い。そうなると人は「社会的な行動」をとるようになる。つまり「目を背けたくなるような口汚い言葉・罵詈雑言を言いっぱなしにする」ということが減り(友人たちに見られちゃってるからね)、真っ当な発言が多くなるのである。批判するにしても建設的なものが増えてくる。

そして、助け合いも起こる。自浄作用も起こる。貢献意識も起こる。ツイッターもフェイスブックも「人間ってこんなにいい人ばっかりだったっけ?」と不思議に思ってしまうくらいポジで性善説で明るいコメントが多い。掲示板系の荒れた言説を知っている人にとってはこの転換は劇的だ。

鳩山首相とのプロジェクトは1年前のことで、まだフェイスブックも全然普及してなかったし、ツイッターも一部の人しかやっていなかったころであるが、それでも「こんなにポジな意見が集まるんだ」と驚いたものである。

もともと首相というのは日本中からネガな意見(有り体に言えば罵詈雑言)が集まりやすい。特に末期の鳩山政権は(マスコミで知っている分には)罵詈雑言の嵐だと簡単に想像できる。
でも毎日更新した彼のツイートに対して集まった意見は、罵詈雑言はある一定の人たちのみで、あとはニュートラルなものだったり建設的な意見だったり応援だったり、もう意外なほどポジなものが多かったのである(あの頃の風向きと相対的に比較してだけど)。

「鳩山のやり方はヘボだけど批判だけしている自分はもう変える」的なニュアンスも多かったのをよく覚えている。「政治は誰かがやっていて、自分たちは批判だけしてればいい」というスタンスから「それではダメなのではないか」という意識に変わって行っているのを、鳩山さんへの反応を詳細に見ていっていたボクは実感した。まさにコトラーが言っている「ソーシャルメディアでつながることによって人々がコミュニティへの貢献意識に目覚める」というのを目の当たりにした感じ。

こういうことの先にどういう世界がくるのか。それが楽しみで仕方がない。
もちろんまだまだ過渡期なので、いろいろ不具合もイヤなことも起きるだろう。衝撃的な事件が起きて時代が後退することもあるかもしれない。でも、転換は確実に起こっている。それを感じさせてくれた昨日の勉強会であった。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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