(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

(1) はじめに

こんにちは、漫画家の赤松健です。
いつもは、週刊少年マガジン魔法先生ネギま!とかラブひなを描いています。



ところで・・・・

1978年頃に「冒険王」(秋田書店)で連載していた『マッハSOS』というマンガをご存じでしょうか。

コロコロコミック」で釣りバカ大将を連載されていた桜多吾作(おうたごさく)先生の作品、と言えば通りが良いかもしれません。
桜多吾作先生と言えば、古いマンガファンなら、マジンガーZなどのコミカライズで有名ですよね。


『マッハSOS』は、最新鋭の戦闘機で平和を守る、少年達の物語なのですが・・・

・・・これがですね、トップガンのようにカッコよくて、デビルマンのように残酷で、戦国自衛隊のように画期的で、とにかく面白いのですよ!!

3巻〜4巻では、海に浮かぶ”原子力空母”を独立国にして、少年達がそれぞれ大臣になり、世界に対して独立宣言をしてみたり*1、2巻では、せっかくヒロインが美少女なのに、超音速戦闘機からの脱出の際に、空気圧でつぶれる!という残酷な方法で殺してみたり、とにかく子供心には「ショック」の一言でしたね。

エロスとバイオレンス! 私が生まれて初めて触れた、娯楽の真髄がここに!



この『マッハSOS』の単行本は、当時まだ子供だったので、お金が無くて買えませんでした。
そこで、「大人になった今こそ、オークションで集めよう!」と思ったんですが・・・・どうしても、6巻までしか手に入りません。



あと、6巻までオークションで集めてみて気がついたんですが、



オークションで買っても、桜多吾作先生には、1円も入らないんですよね。



今だと、ブックオフにあるのでは?」とかWinnyで探せよ」とか言われそうなんですが、それらでも当然、桜多先生には何の原稿料も印税も発生しません



私は、桜多吾作先生に、

「こんな面白いマンガを描いて下さって、ありがとうございます!」

という感謝の気持ちを伝えたいのですが・・・・オークションやブックオフWinnyで揃えるっていうのは、感謝の気持ちになるんですかね?

・・・これで良いんでしょうか?



■ ネットに流れる「違法漫画ファイル」は止められない


ところで、一昨年辺りから、魔法先生ネギまブックオフで買って読みました!面白かったです!」という感想メールが増えています。
それが去年からは、Winnyで落として読みました。面白いです!」というメールも散見されるようになりました。

・・・どうやら、皮肉ではなく、本当に面白いと感じて下さったようで、作者としては複雑な心境です。


今年から、海外からも似たようなメールが届くようになりました。
どうやら、スキャンレーションを収集する漫画サイトが、日本漫画の手に入りにくい海外で横行している模様です
(ちなみに、スキャンレーションというのは「スキャンしてトランスレーション(翻訳)する」の略。)
漫画を無許諾でスキャンして公開、iPhoneアプリで閲覧 欧米「スキャンレーション」に業界団体が対策へ - ITmedia NEWS




恐らく、ネット上に漫画の違法スキャンが出回るというのは、今後も止められないでしょう。

本当に好きなら、金を払って買うべき・・・とは言いますが、現実に無料マンガがネットに落ちているのですから、やっぱり悪いと思いならがもダウンロードしちゃいますよね。
海外でのスキャンレーションだって、止めるのは難しい。WinnyなどP2Pを止めるのも難しい。
新刊なら、出版社が違法サイトを差し止めすることもありますが、絶版のマンガだとぶっちゃけ違法流通し放題です。


こういった状況を何とか変えられないか。



・・・・そこで考えました。いわゆる「広告モデル」です。


スキャンされた漫画を収集し、作者の許諾を得て無料公開する。

その漫画の中に、広告を入れる。

そして、その広告料は作者にお渡しする・・・と。


この方式なら、

  • 読者は、合法的に、しかも無料で漫画を読めちゃう。
  • ダウンロードした作品を、お友達にあげちゃってもOK。
  • 中に入っている広告がクリックされればされるほど、作者にお金が入る。
  • 巻末にアフィリエイト*2のページを付けて、その作者の新作が買えるようにすれば、新作のプロモーションにもなる。
  • もちろん、そのアフィリエイト料も、作者に行くようにする。

・・・・おっ、何か良い感じじゃないですか?!


ただし、いま連載中の漫画(ネギまとか)でこれをやると、出版社と作者の利益を阻害してしまいます。普通は出版契約書というのがあって、ある年数*3の間は、その出版社以外ではそのマンガを出してはいけないことになっているのです。
それに、絶版になっていないマンガは、ちゃんと書店で買って欲しいですよね。


じゃあ、契約が切れて、絶版になったマンガは?

もう一切刷られておらず、オークションやブックオフWinnyでしか手に入らない絶版マンガこそ、この方法で復活させるに相応しい文化遺産なのでは?!



私は、作者にちゃんとお金が行く「絶版マンガの図書館」を作るべく、調査を開始しました。

ここまでで、何か質問やご意見がありましたら、コメント欄に書き込んで下さい。よろしくお願いいたします。

一応、複数の弁護士にアドバイスを受けましたので、又聞きでよろしければ(笑)、法律的な問題にも回答させていただきます。

*1:1978年の作品です。これ系の話では元祖かもしれません。

*2:広告の一種で、閲覧者がクリックしてその商品を買うと、何パーセントか報酬がもらえるという仕組み。

*3:通常3〜5年程度。契約終了の意思表示が無ければ、1年ごとに自動延長される場合が多い。