トランプ減税は10年でGDP4%増のハードルを越えられるか?

12/2エントリの末尾で100人の経済学者が署名したトランプ減税法案を支持する公開書簡に触れたが、その後半部は以下の通り。

The enactment of a comprehensive overhaul — complete with a lower corporate tax rate — will ignite our economy with levels of growth not seen in generations. A twenty percent statutory rate on a permanent basis would, per the Council of Economic Advisers, help produce a GDP boost "by between 3 and 5 percent." As the debate delves into deficit implications, it is critical to consider that $1 trillion in new revenue for the federal government can be generated by four-tenths of a percentage in GDP growth.
Sophisticated economic models show the macroeconomic feedback generated by the TCJA will exceed that amount — more than enough to compensate for the static revenue loss. We firmly believe that a competitive corporate rate is the key to an economic engine driven by greater investment, capital stock, business formation, and productivity — all of which will yield more jobs and higher wages. Your vote throughout the weeks ahead will therefore put more money in the pockets of more workers.
Supporting the Tax Cuts and Jobs Act will ensure that those workers — those beneficiaries — are American.
(拙訳)
法人税率の引き下げで完全なものとなる包括的な税制見直しは、数世代に渡って見られなかったほどの成長水準に我が国の経済を引き上げるだろう。経済諮問委員会によると、表面税率が恒久的に20%になれば、GDPを「3〜5%押し上げる」のに寄与する。財政赤字への影響に関する議論について言えば、GDPの0.4%の成長で連邦政府の1兆ドルの新たな歳入が作り出されることを考えに入れることが極めて重要である。
洗練された経済モデルは、減税・雇用法案で作り出されるマクロ経済のフィードバックがその額を超えることを示している。静学的な歳入の損失を補って余りある額になるのである。投資、資本ストック、起業、そして生産性の上昇を駆動力とする経済エンジンにとって、競争力を持つ法人税率はカギになる、と我々は固く信じている。それらのことはすべて、雇用と賃金を増やすのである。従って、今後数週間のあなた方の投票によって、より多くの労働者により多くのお金を渡すことになる。
減税・雇用法案を支持することは、そのような恩恵を受ける労働者が米国人であることを確実にする。


一方、デロングによれば、9人の経済学者の公開書簡の方にも以下の記述があったという*1

A conventional approach to economic modeling suggests that such an increase in the capital stock would raise the level of GDP in the long run by just over 4%. If achieved over a decade, the associated increase in the annual rate of GDP growth would be about 0.4% per year...
(拙訳)
通常の経済モデルでは、資本ストックがそれだけ上昇すると、長期的なGDP水準を4%強引き上げる。それが10年間で達成できれば、減税関連のGDP成長率の上昇は年間0.4%になる。・・・

しかし、サマーズ=ファーマンに言わせれば、両人の批判を受けてこの主張は撤回されたことになっている。


結局のところ、米国の経済学者のフレンズたちがどったんばったん大騒ぎしている一つの大きな争点は、トランプ減税で10年でGDPが4%上がるかどうか、という点かと思われる。反対派は無理だと言い、支持派は可能だと言っているわけだ。ただ、反対派のデロングが図らずも同時に指摘したように、3%程度の成長は「数世代に渡って見られなかったほどの成長水準」では決して無い。結果的に好景気が続けば十分達成可能な数字であり、それによって財政赤字が拡大しなければ、トランプ減税は成功であり、自らを賄った、と後世の人たちに言われるようになる可能性もある。その場合、トランプ減税が実際にはどこまで効果があったかについて後代の経済学者たちが論争することになるのかもしれない*2

*1:ちなみに両書簡に共通して署名しているのは元CBO局長のダグラス・ホルツイーキンのみ。さらにちなみにだが、100人署名書簡にはバグワティも署名している。

*2:cf. レーガン減税の効果については、共にトランプ減税を強く批判しているクルーグマンとサマーズでさえ意見が食い違っている