写真●日本ヒューレット・パッカードの中川いち朗執行役員HPソフトウェア事業統括(撮影:皆木優子)
写真●日本ヒューレット・パッカードの中川いち朗執行役員HPソフトウェア事業統括(撮影:皆木優子)
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 日本ヒューレット・パッカード(HP)の中川いち朗執行役員HPソフトウェア事業統括は2011年7月13日、「IT Japan 2011」で同社のビジョンと製品戦略について解説した(写真)。IT Japan 2011は日経BPが主催するIT分野の総合セミナーで、2011年7月12日から都内で開催中。

 HPは「EVERYBODY ON」というビジョンを掲げている。中川氏によれば、世界のあらゆる人々があらゆる方法で安全かつシームレスにつながり、情報にアクセスし、より質の高い社会生活を実現している姿のことを指す。「当社は近年さまざまな製品や企業を買収しているが、すべてはこのビジョンを実現するため」と中川氏は説明する。

 最近特に市場から大きな注目を集めたのが、2010年に実施した米パームの買収である。すでにHPはパームが開発していたモバイル機器向けOS「webOS」を自社のハードウエア戦略に組み込み済み。北米やアジア太平洋地域でwebOSを搭載したスマートフォンやタブレット機を展開中だ(関連記事)。「webOSは、コンシューマ(消費者)に豊かな体験をもたらす。また、企業ユースも十分に満たす機能を備えている。仕事のプロとしての個人、そしてコンシューマとしての個人の両方に受け容れられるOSだ」(中川氏)。

webOSをPCやプリンタにも搭載

 中川氏はwebOSを、HPのコアソリューションである「コネクティビティ」の重要な構成要素であると位置づける。「HPは年間1億台を越す端末を出荷しているが、これらのデバイスを相互に接続させて、新しい価値を提供することが今のテーマ」(中川氏)。webOSをスマートフォンやタブレットだけでなく、PCやプリンタなどHP製のあらゆるデバイスに搭載させる計画だという。PCではWindow系OSと共存して動作する仕組みにする予定だ。中川氏は「webOSをこれらデバイスに搭載させれば、機器同士の接続性を確保しやすくなる。これによってユーザーに新たな利用体験や利便性が提供できる」と説明する。

 「HPはユーザーが操作する端末とサーバー側ソリューションの両方を持つ。この強みを生かして、EVERYBODY ONのビジョンを実現し、社会に新しい価値を提供したい」と中川氏は語る。

 最後の公開質問コーナーでは、日経BPの星野友彦編集プロデューサーが「デジタルネイティブ」や「ミレニアムエイジ」についての質問を投げかけた。デジタルネイティブやミレニアムエイジとは、物心付いたころからインターネットやデジタル機器を使いこなしてきた若者世代を指す。「いよいよ平成生まれのデジタルネイティブが社会人として世に出始めた。そういう人たちが企業に入ってくると、企業の情報システムも変化せざるを得ない。HPとしてはどのような考えを持っているか」というのが質問の主旨である。

 これに対して中川氏は「EVERYBODY ONはそもそも、そうした世代の若者たちが社会に進出してくることを前提に考え出されたビジョンである」と回答。そのうえで「企業のIT部門はもはや、そうしたデジタルネイティブが日常で使いこなしているコンシューマ機器やコンシューマ向けサービスを無視できないだろう」と述べる。「企業のIT部門がそうした時代にも柔軟に対処できるように、当社のクラウドサービスやソフトウエア、デバイスを対応させていく」(中川氏)。