欧州の4つの選択肢

先月12日にクルーグマンがNYTにユーロに関する長文の論考を書いた。その終わりの方では、欧州が今後辿り得る道筋として4つの選択肢を挙げている。以下ではそれを簡単にまとめてみる*1

  • 耐え抜く
    • バルチック諸国がロールモデル
    • 緊縮政策で「内的な通貨切り下げ(internal devaluation)」を実現し、競争力を取り戻すというこの戦略は、タキトゥスの「焦土化した結果を平和と称する」という言葉を想起させなくも無い*2
  • 債務再編
    • ギリシャの債務再編は不可避。アイルランドも概ね同様の状況。
    • 問題はスペインがどうなるか、そして真に恐るべきは、ベルギーやイタリアにまで広がるかどうか。
  • アルゼンチン化
    • 通貨切り下げとデフォルトの組み合わせ。アイスランドはそれを実現した。
    • ただ、アイスランドと違い、ユーロ圏諸国はもはや独自通貨を持っていない。アイケングリーンは2007年にユーロ化は不可逆過程と指摘した。とは言え、アルゼンチンのドルペッグもかつては不可逆過程と思われていたことを考えると、ユーロからの離脱も完全に想定外とは言い切れない。
  • 汎欧州主義の復活
    • 三者の暗い選択肢に比べれば希望がある選択肢。ロベール・シューマンが60年前に夢見た「欧州連邦」への第一歩ということになる。
    • 12月初めにルクセンブルク首相のジャン・クロード・ユンケルとイタリア経済財務相のジュリオ・トレモンティは、欧州共同債券「Eボンド」構想を提唱し、論議を巻き起こした*3。ドイツ政府はこの構想に対し、欧州を強国が弱小国を助ける「所得移転の共同体」にすべきではない、として猛反対している。
    • しかし、アイルランドとネバダの比較の考察から分かるように、米国はまさに所得移転の共同体であるが故に通貨共同体として機能している。ユーロが機能するためには、何らかの形で同様のことを実現する必要がある。

*1:なお、本エントリを書いている途中で見つけたが、こちらの記事ではこのクルーグマンの4つの選択肢に関する考察をきちんと邦訳して紹介しているほか、それへの反対意見も紹介している。

*2:cf. クルーグマンの以前のブログエントリでのラトビアに対する評価

*3:cf. ロイター記事みずほ総研の解説