シェイブテイル日記2

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ふたつの東京オリンピック前の経済状況

先日から政府債務と名目GDPの関係についていくつか記事を書いています。
その結論のひとつは、現代日本ギリシャは財政健全性指標が急速に悪化していますが、その理由は政府債務自身の伸びが大きいことではなく、他の大半の諸国とは異なり、名目GDPの伸びが止まることで財政健全性指標が悪化しているということでした。
ところで、高度成長期には勿論名目GDPは大きく伸びていたのですが、当時の財政健全性指標はどうだったのでしょうか。

2020年には2度めの東京オリンピックの開催が予定されています。
今から半世紀前の1964年にも東京オリンピックが開催されました。

東京オリンピックを前にしたふたつの時代で、政府債務と名目GDPの相関関係を調べてみました。
図表1は現代日本の姿です。 他の先進諸国では政府債務は名目GDPと同時に伸び、グラフは右上に向かうために、その傾き、財政健全性指標は余り変化しないのに対し、日本では政府債務は伸びるのに名目GDPは伸びが止まるもしくは減少するというギリシャ以外ではみられない状況に陥っています。

現代日本では名目GDPの伸びが止まったため財政健全性指標は悪化している

図表1 1997-2013年の名目GDPと政府債務の経時変化
出所:IMF WEO Oct 2014
グラフの傾きが財政健全性指標を示す。

1997年から2013年の間に、政府債務残高は年平均4.8%で伸びたのに、名目GDPは年平均マイナス0.6%で縮小しています。

一方、図表2は、池田勇人首相が所得倍増計画を発表し(1960年)、1回目の東京オリンピックが開催された(1964年)前後での政府債務と名目GDPの相関関係です。

1960年頃は名目GDPが大きく伸びて、財政健全性指標は改善していた

図表2 1958年-1964年の名目GDPと政府債務の経時変化
出所: 名目GDP=内閣府長期経済統計、政府債務=政府債務長期残高
図表1同様、グラフの傾きが財政健全性指標を示す。

1回めの東京オリンピックの頃は、池田首相が所得倍増計画を発表したのに対し、国民所得は実際には計画を超えて10年で4倍にも伸びました。
この当時は東海道新幹線東名高速道路の建設などインフラ整備が活発で、現代同様、この当時の政府債務残高も年率3.9%で増えていました。
しかし、名目GDPの伸びは13.9%と、それを大きく上回り、財政健全性指標は1958年の8.9から64年の4.3まで却って改善しています。

東京オリンピック前という点は似ている現代と半世紀前。
ふたつの時代で、政府債務残高の伸び率は大差がないのに、名目GDPつまり私達国民の所得は、前回は所得倍増計画により大幅に伸び、今回は政府が消費税他の緊縮財政を実施することで伸びるどころか減少しています。

安倍内閣は消費税の再増税を2017年まで延期はしたものの、次回は景気条項は外し、景気が悪くとも増税は強行する予定です。

国民として、景気が悪くとも増税を強行しその結果更に財政健全性を損なう政府と、所得倍増計画を主導し、その結果財政健全性を改善する政府。 あなたならどちらを支持しますか?

【追記】
ブコメで指摘される前に書きますが、シェイブテイルとしては今回の東京オリンピック前にも前回同様のインフラ新規整備をすべきと主張するものではありません。 現代で公共投資は実施するなら既存インフラの更新と、災害予防で十分でしょう。それよりも、消費税で落ち込む消費そのものをテコ入れするため、国民に数十万円配布するような消費刺激策が適切だと考えています。