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ヤマハ、よりリアルになった「VOCALOID3」発表 制作ソフト一新、API公開も(1/2 ページ)

» 2011年06月08日 16時05分 公開
[ITmedia]

 ヤマハは6月8日、歌声合成ソフトの新バージョン「VOCALOID3」を開発したと発表した。「初音ミク」などに採用されてブームになったVOCALOIDの基盤ソフトの最新版となり、よりリアルな歌声を合成できるようになるという。9月末にヤマハが専用音楽制作ソフトと歌声ライブラリを発売するほか、ライセンスを受けた他社も歌声ライブラリの開発を進めているという。

 初代VOCALOIDは2003年に登場。歌詞とメロディーを入力するだけで歌声を合成するソフトで、2007年リリースの「VOCALOID2」を使った「初音ミク」などがブームに。VOCALOID専門のクリエイターや熱烈なリスナーが多数現れ、音楽以外のジャンルにも飛び火するなど、ネット内外で大きな現象になった。

photophoto ヤマハの推測によると、ボカロ曲制作者は1万人、同人などの2次創作は8000人、コアなリスナーは10万人、一般リスナーは500万人

 約4年ぶりのメジャーバージョンアップとなるVOCALOID3は、合成アルゴリズムを改良するとともに合成音の品質も向上。「さらにリアルな歌声」を合成できるようになったという。

 さまざまな声・発音などを記録しておく歌声ライブラリは、これまでより大きな単位でサンプルを持つことができるようにした。例えば「子音+母音+母音」といった単位でサンプルできるようになっており、より滑らかな合成音が可能になるという。

 また、従来は苦手だった早口の合成音に改良を加え、より自然な発音で合成できるようになったという。VOCALOID2では音程が変化すると、サンプルが切り替わるところで突然音色が変化してしまう場合があったが、VOCALOID3のエンジンでは音色の変化がスムーズになるよう改良しているという。

歌声ライブラリと「VOCALOID3 Editor」は別売りに

 新たに楽曲制作ソフト(VOCALOID Editor)と歌声ライブラリを分離し、別々に販売する。従来は両方をバンドルして販売していたが、今後は歌声ライブラリだけを追加していくことが可能になっている。

 単体販売される楽曲制作ソフト「VOCALOID3 Editor」はユーザーインタフェースを一新し、従来のピアノロール画面に加え、DAW(Digital Audio Workstation)のようなトラックビュー画面も導入。最大16トラックの編集が可能で、各トラックには複数のパートを配置することもできる。

photophoto VOCALOID3 Editorの画面

 新機能として、伴奏(オーディオトラック)再生機能を搭載。ステレオ・モノラルのオーディオデータが各1トラックずつ再生でき、合成した歌声とオーディオトラックを同時に聴きながら楽曲を制作可能になっている。「VOCALOIDソフトを購入したものの、何を入力していいのか分からず『カエルの歌』を入れただけで終わってしまった方もいると聞いている。カラオケトラックを活用するなどして新たな楽しみ方が増えるのでは」(ヤマハの剣持秀紀さん)

 VST Hostにも対応し、合成した歌声にリバーブなどのエフェクトを付加するなど、単体で一通りの楽曲制作が可能になっているという。

 新たに対応したのが「VOCALOID Job Plugin」。プラグインを追加することで歌声トラックの編集機能を拡張できるもので、音符やコントロールパラメータなどの楽曲内部のデータに外部モジュールからアクセスして変更することもできるという。産業技術総合研究所が開発した「VocaListener」(ぼかりす)をヤマハがプラグインとして開発し、販売する予定だ。

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