焦点:モバイルゲームの成長持続性、E3で注目のテーマに

焦点:モバイルゲームの成長持続性、E3で注目のテーマに
6月9日、ロサンゼルスで開催の世界最大のゲーム見本市「E3」では、モバイルゲームの成長持続性と据え置き型ゲームとの勢力争いが大きなテーマの1つになるとみられる。写真は米カリフォルニア州で撮影(2013年 ロイター/Patrick T. Fallon)
[サンフランシスコ 9日 ロイター] - モバイルゲーム業界を投資家がどう展望しているのか知りたければ、日本のガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765.OS>を見てみるといい。昨年10月以降で同社の株価は約10倍も上昇し、株式時価総額は任天堂<7974.OS>と肩を並べるようになった。
市場規模660億ドルのビデオゲーム業界では、古参の米エレクトロニック・アーツ(EA)から「クラッシュ・オブ・クラン」のスーパーセルのような新興勢力まで、パソコンより携帯端末で過ごす時間の方が多い世代にアピールする方法を模索している。
ただ、1本のヒットだけで消えていく「一発屋」が多く、米ジンガのように確固たる地位を築いた企業でさえつまづくゲーム産業では、ほとんどの企業はわずかな成功しか収めていないと複数の業界筋は指摘する。
日本のオンラインゲーム大手ネクソン<3659.T>のオーウェン・マホニー最高財務責任者(CFO)は「いわば、チェスの駒はすべて空中に投げられたが、まだ業界はチェス盤をどんな姿にするか決めていないようなものだ」と語った。同社はモバイルへの進出を加速するため、この1年で2社を買収している。
過去数年は、ゲーム自体には課金せず、ユーザーがゲーム内でアイテムを購入することで稼ぐ「ジンガ型」のビジネスモデルが流行ってきた。しかし、ここ1年足らずのジンガの急速な低迷は、新たな顧客層の獲得やゲーマーの財布のひもを緩めることの難しさを浮き彫りにしている。
フェイスブック上で動くソーシャルゲームで急成長を遂げたジンガ。勢いに乗ってモバイルの人気ゲーム「ドローサムシング」の開発元OMGPOPを1億8000万ドルで買収したが、ユーザー数減少が続いたのが響き、先週にはOMGPOPチームを事実上解雇し、ニューヨークのスタジオを閉鎖した。
ゲーム業界の幹部らは、モバイルゲーム市場が爆発的に拡大したことで、ユーザーには目移りするほど多くの選択肢があると指摘する。米アップルが初代「iPhone(アイフォーン)」を発売した2007年当時は、モバイルゲーム開発会社は数えるほどしかいなかった。それが今では、アップルのiPhoneや「iPad(アイパッド)」、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」搭載端末向けにゲームアプリを開発する会社は数えきれないほどに増えた。
ネクソンのマホニーCFOは、ロイターのインタビューで、簡単な操作で遊べるカジュアルゲームは開発コストをかけずにユーザーを短期で獲得できるが、「お金をさらに払わないと先に進めないため、ユーザーを飽きさせるか怒らせることになる」と述べた。同社はモバイル製品群の拡充で相応の成功を収めており、それが2012年の売上高を前年比24%増の1億0800万円に押し上げた一因とみられる。
<答え模索するメーカー>
ゲームソフト開発会社は規模の大小にかかわらず、他社から抜きんでるために持続可能なビジネスモデルの構築をさまざまな形で模索している。
資金力の豊富なEAは、ユーザーの利用パターンを把握しようとデータ解析に取り組み始めた。ソフトバンク<9984.T>の連結子会社であるガンホーは、ブランド力向上のためテレビCMに力を入れている。
販売実績を大きく左右するホリデーシーズンにダウンロードランキングで順位を上げるため、期間限定サービスでユーザーを引き付けるアプリ開発業者もいる。
大ヒット作「アングリーバード」を持つロビオでさえ、現在の売上高の45%は、本業ではないキャラクター商品の販売に依存しているという。
ただ、調査会社DFCインテリジェンスのアナリスト、デビッド・コール氏によると、2013年のモバイル端末向けゲームの売上高は、前年比約38%増の80億ドルに達する見通し。2018年には200億ドルにまで拡大する見込みだという。
モバイルゲーム開発会社があきらめない理由もここにある。
現時点では、ゲーム関連の消費者支出は過去数十年の歴史がある据え置き型に集中しているが、状況は急速に変わりつつある。わずか数年で、ゲーム業界の売上高に占めるモバイルの比率は約9%にまで成長した。
ロサンゼルスで開催の世界最大のゲーム見本市「E3」では、モバイルゲームの成長持続性と据え置き型ゲームとの勢力争いが大きなテーマの1つになるとみられる。
(原文執筆:Malathi Nayak、翻訳:宮井伸明、編集:梅川崇)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab