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レズビアン&ゲイライフをサポートするNPO法人アカーのWEBマガジン。編集部:「ふじべ・あらし」がお伝えしています。

AIDS 30周年 答えは風の中

30年前の1981年6月5日、後に「AIDS(エイズ)」と呼ばれることになる新しい病気の最初の5つの症例が米国カリフォルニア報告されました。

当初、ロサンジェルスやサンフランシスコ、ニューヨークのゲイコミュニティーで報告され始めていたこの病気が、その後、世界中で、どれだけ巨大なものになるのかということは、そのとき誰も想像でなかったでしょう。


30年間で、エイズで亡くなった人の数が3000万人。
現在、世界には、3400万人のHIV陽性者数がいます。
また、この国では、これまで約1万3千人がHIVに感染してきました。

これらの数字は、ただの数字に過ぎないように見えます。
実際にただの数字に過ぎないのですが、これらの数字の向こうには、気の遠くなるような数の人々の個別の物語が隠されています。


HIV/AIDSは、その後の世界の何かを変えてしまったもののひとつだと思います。


最初は、「かかったら死んでしまう病気」として、何一つ楽しいことを想像できなかったエイズが、現在では、治療しながら生活できる病気になりました。そんな現在でも、依然としてHIV/エイズは、私たちの生活に影響を与え続けています。


エイズがなかったら現在の世界はどうなっていたのだろう?


エイズのせいで喪われたものがたくさんある。
と同時に、エイズによって得たものもたくさんある。
HIV/エイズが存在するから引き受けないといけない制限がある。
けれども、HIV/エイズのおかげで出会えた人、出会えたこと、気づいたこともたくさんある。
そもそも、私が働いているNPOだってHIV/エイズがなかったら、いまのような形では存在しないかもしれないのだ。


HIV/エイズのない世界は、今の私たちが見る社会とはまったく違った世界であるに違いない。


ところで、多くの人の健康や平安を脅かし、差別や不便を生み出して、たくさんの人たちを苦しめるAIDSは憎むべき悪なのだろうか?
わからない。


もちろん感染してしまった後に後悔し思い悩む気持ちや、感染する人を一人でも減らそうと努力したり、いつか完治薬の出現を待ち望む気持ちは正しいと思うけど、それでも、やはり、この世界にエイズが存在していて良かったのか、悪かったのか、ということに白黒をつけることができないと思う。


「エイズがある世界」の答えは、30年くらいでは分からない。
答えが出るのは、これからずっと未来、それこそ完治薬がみつかり、感染者がひとりもいなくなったときではないのか、などと思う。


今、はっきりわかるのは、ただHIV/エイズと共にある世界に生き続けるしかない、ということ。
そして、それぞれができることをするしかないと思います。

30周年の節目に、現在の私たちの地点を点検してみるのは、大切なことかもしれませんね。



エイズ30周年に関連して、米国サンフランシスコ市のThe San Francisco AIDS Foundation(サンフランシスコ・エイズ財団) が、AIDS/HIVがどのようにサンフランシスコ市に影響を与えたかの30年を振り返って制作したビデオを下に貼り付けてみました。もちろんナレーションは英語ですが映像や写真を追っていくだけでも、HIV/AIDSに取り組んだ街の30年を感じることできると思います。



日本の人口の中で、決して多数派ではない同性愛者ですが、この10年ちかく、新しくHIV感染する人の約7割がゲイによって占めているという事実があります。同性愛者のコミュニティが、私たちの問題としてエイズに取り組んでいくことも大切ですね。