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この値段でキンキが、ウニが… 札幌すしの格安名店

出張グルメの達人・札幌編

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 カウンターを挟んで対面する本格すし屋なのに、高級ネタが一貫105円、味も裏切りなし……。まさかというお値打ちの店が、探せばあるのが札幌だ。出張族にとってもありがたく、すしどころ札幌の懐の深さを実感できる店を発掘した。

ススキノの有名店、棗(なつめ)の姉妹店で、本店さながらの味をしっかり楽しめるのが南6西3にある葵本店だ。

棗と同じネタを使いながら若手職人の修業の場として開業したからお値打ち価格。酒を含めても客単価は5000~6000円と半額程度で、満足感は高い。

脂とろける釣りキンキ

「おいしいビール1丁!」

シックな黒い引き戸に白いのれんをくぐって店に入ると威勢の良い声が聞こえてきた。この11月に開店したばかりの小さめの店内は会社員やカップルで混み合い、20~30代のグループ客もいた。

40~50種類のすしネタを用意し、料金は1貫105円から。谷村雄亮店長は「若い人が安心して食べに来てもらいたい」と話す。

おすすめという根室産の釣りキンキ(420円)を頼む。さっと火であぶり、塩をふった状態で出てきた。口の中で魚の脂がとろけるが、あぶっているためくどくない。

北海道ではキンキは高級魚で、他店で食べたら倍近い値段は覚悟しなくてはならない。「いい仕事だねえ」とちょっと通ぶってみたくなるほどの一品だ。

気温が下がるこの時期は寒ヒラメ(210円)も身が締まってうまくなる。

注文は1貫ずつ頼むお好みが中心だが、初めての場合はセット(1人前2625円から)がおすすめだ。予算を言えばそれに応じて握ってくれる。

一品料理では、キンキの煮付け(2100円から)やナスの田楽(1260円)を食べながら酒を飲むといいだろう。終盤で出てきた、べったら漬けはほのかな甘みとさわやかなうまみで心憎い。

カウンター10席、テーブル4席の店は時間帯によっては大変混み合うため、事前の予約をおすすめする。午前4時まで営業しているので、ススキノで飲んだ後に立ち寄るのも良いだろう。店を後にするときに店員さんが元気に見送ってくれるのが心地よい。

「うちは常連さんがほとんど。落ち着いた雰囲気で楽しめると思いますよ」。葵本店からほど近い南5西3のビルの2階にある、だん欒(らん)はカウンター12席、テーブル8席の店だ。

山田克明店長と年配の職人さんがカウンターに入り、客と会話しながら旬の食材を味わうスタイルだ。

ネタの仕入れに安さの秘密

「すしは真っ先にギョク(卵焼き)を頼めってよく言うでしょ。『ああ卵焼きに店の実力がでるんだ』と妙にギョクに工夫する店があるけど、ありゃ違うね」。山田さんが面白い話を振ってきた。

「すしの味を決めるしゃり(ご飯)が自分に合っているかどうか、客は安いギョクを1貫食べて判断するのがいいってことなんだ。甘いな、柔らかすぎのしゃりだと思ったら、『すみません急な用事ができて』とそこで帰ればいい」

お任せのセット(2800円)を頼むと11貫あるという。しかもその内容に驚いた。アワビはこりこりと歯応え良く、ホタテもきめ細やかな舌触り。ウニはとろりとした味わいだ。カズノコ、ボタンエビ、カニと思わずうれしくなる。

父親もすし職人だったという山田さんは東京・銀座や大阪・北新地をはじめ全国展開する寿司田グループで長年働いてきた。

だん欒は6年前に開店した。札幌の市場の食材と、寿司田グループの築地からの食材仕入れを駆使して価格抑えめで提供するんだとか。

店作りへの思いを聞くと「脇役に手抜きをしないことを心がけている」という。例えばしょうゆはすし用と刺し身用を店で分けてつくる。すしのしょうゆはカツオだし、刺し身用はコンブだしで仕上げ調合する。

巻物に使うかんぴょうはしっかり店で煮る。だし巻き卵も決して手をかけすぎないが店で手作り。

土産用のすし折りは、しゃりが硬くなるのを想定して店で出すものよりふんわり握って詰める。

「『母に持って帰った土産ずし。はじめておいしいって言われた』なんて常連さんが言ってくれるとうれしくなる」と山田さん。気取らぬすしへの愛情ごと楽しめる店だ。

「トロでもイクラでもウニでも、全部1貫105円。普通にやってちゃ驚かないでしょ。うちはすし以外ないから」。ススキノの南の飲み屋がいくつも入るビルの地下にある、すし処たかは店主の高橋勝美さんが開いて15年になる。

「1貫105円」に込めた心意気

「こちらから、うちのすしはうまいよと言ったことはないな。店主の俺は愛想悪いし。香水がきつい人、酔っぱらいには帰ってもらうこともある」と辛口で話す高橋さん。

だが、カウンター12席と小上がりに2卓の店内の壁には、これまで通った客の写真がずらりと張ってある。実はとってもアットホームな雰囲気なのだ。

カウンターに並んだ端の客から「それでは何にしましょう」と1種類ずつ好みを聞きとり、順番に2貫ずつ握って出すのが、この店のスタイル。「じゃあイカから下さい」と頼むと、ほどなくして目の前の皿にイカが載った。

巻物を含めて25種類ほどのネタがある。食べたら次の順番に備えて、何を頼もうかと考えておく。

「あ、向こうの若者は初っぱなからトロか。ぜいたくだが通じゃあないな。ふふっ」「隣のお姉さん、コハダね。それもいいなあ」

内心で他の客の注文を吟味しながら自分のネタを決める。なにやら駆け引きをしているような気分になってきた。

「昔のススキノは人にぶつかって歩けないほどだったけど、今じゃあぶつからないな。ぶつかるのはよけない怖いお兄さん。『こるぁー』と追っかけられるのがせいぜいだ」。景気が悪いのをコミカルにぼやく高橋さんの言葉にうなずきつつ、食が進む。

北海道・増毛町の日本酒、国稀(くにまれ)を飲みながら、ホタテ、ホッキ、シャコ、カニ……と続く。これでどれも1貫105円なんだから、分かりやすく財布に安心だ。

腹が満ち足りたら、さっと引き上げるのがいい。食べたいものを注文して、気取らず味わう。シンプルなすしやの原点のような店だ。

ビルの3階で看板も少ない。すっきりしたカウンターが8席と、ほかは個室か半個室(全70席)。ススキノの中心部にある三海の華は高級感漂う作りで、初めて訪れた人は二の足を踏むかもしれない。

ただ入り口に置いてあるメニューを見ると、おまかせ鮨(すし)は10貫の三海鮨が2000円。函館産のイカ1貫120円、イクラは220円。北海道特産の活ホッキも220円。手ごろな値段が明示してある。一安心して戸をくぐれた。

接待向きの高級感、自腹でいける割安感

「以前の店のお客さまがいるので、おまかせ鮨の値段はそのままなんです」。運営する横田商事の大島正一社長は話す。三海の華の前身は手ごろに楽しめるすし店として人気だった「ポプラ鮨」。だが回転ずしの隆盛もあり「すしだけでは厳しい」(大島社長)と、全体の質を高めつつ海鮮を中心に食事を楽しめる店に4年前に移転・衣替えした。

いまでは三海コースという「活いかの踊り刺し」が入った8品3500円のコースが中心。ただすしは変わらず充実している。握るのはポプラ鮨から引き続き菊地秀樹店長だ。

おまかせ鮨の基本はトロ、活アワビ(日本海)、ウニ、イクラ、サーモン、活ホタテ(オホーツク海)、甘エビ、活ホッキ(太平洋)、本日の白身、ニシンの10貫。その日の漁次第で中身は変わり、訪れた日はトロが大トロに、白身はサメガレイ、ニシンは生本マグロの赤身だった。

店で仕込んだばかりのイクラは上品に甘く、ホッキは歯応えが楽しい。しゃりには、急速に味の評価が高まる北海道産米を最近になってブレンドして使うようになった。この日はサーモンだったアラ汁(350円)がやさしくおなかを温める。

つまみで12月のお薦めには真ダチ(マダラの白子)の天ぷらとポン酢(各980円)があった。天ぷらを頼むと、熱々の濃厚な味が衣の中から漏れ出す。4つの白子は1人で食べるには多いほどだった。

最後に追加で握りを3つ。最近人気の白身、小樽産の八角(220円)。脂のうまみが溶けてくる。日替わりで半額になるサービス品は中トロ(320円が160円)。大トロに劣らないほど濃厚だ。「夏から1月くらいまでが身に脂が乗っておいしいですよ」と菊地店長が勧める生ニシン(180円)までいただくと、さすがに腹いっぱい。

あまり飲む方ではないので、北海道限定ブランドであるサッポロクラシックの生ビール(460円)1杯をあわせ、お通しを含めて4750円。五千円札でおつりが来た。「5000円で食べて飲めるように」(大島社長)が店のコンセプト。客のほとんどは個室を接待に使うビジネスマンだという。3500円のコースに1500円の飲み放題をつけるのが一般的。

夜10~12時限定メニューの〆のお鮨は、マグロやホッキ、巻物など9種から3貫、ウニ、大トロ、ズワイガニ、アワビの4種から2貫を選び、計5貫にアラ汁が付いて980円。まさに会合の後、少し足りないときに使い勝手がいい。人気の理由は盛りだくさんの海鮮と、豪華さたっぷりのコストパフォーマンスの良さにある。観光客にはあまり知られていない穴場だ。

地下鉄の北24条の駅近くにある寿し処まつ元は1989年の開店以来、23年間定番メニューの価格を変えたことがないという。代表メニューはセットの松生寿し(2100円)だ。季節によってネタは変わるが、マグロ、ウニ、イクラなど全部で10貫と、満腹感を得られる。もっと食べたい人向けには大漁寿し(14貫、2625円)が手ごろだ。他の店なら少なくとも3000~4000円は取られるが、同店は低価格を維持している。

仕入れ値2倍でも価格据え置き

店主の松本貢治さんは「イクラの仕入れ値は開店当時と比べれば、2倍に上がっている」とこぼす。それでも値上げはしない。「信頼関係を築いた決まった魚屋からしかネタを仕入れない」と質を落とさず、客の懐への優しさを守っている。

ネタはもちろん北海道産が中心だ。松本さんは朝6時に札幌市中央卸売市場へ行き、自分の舌で選ぶ。季節によって産地は変わるが、仕入れのポイントは「本物を選ぶこと」。きょうのマグロは函館で水揚げされたものだという。

握りを頼むと器からはみ出る大きさで、口に入れたとたん脂がとろけ始めた。ウニは漁師の名前が入った釧路町昆布森産を使う。「やはり産地が確かで品質がいいから」。形崩れがなく、濃厚でとろける本来の味は保証付きだ。

穴子は白しょうゆを使い味付けしているため、一般的な穴子と違って色が白い。穴子をさばける料理人が少なくなる中、店主自らさばく。シャリは片手で軽く、丸く握った後、ネタを載せて一体感を出す。「口に入れた途端にシャリが、ふわぁーと溶け出すぐらいの力で握るのがコツ」と松本さんはこだわりを持つ。

セットメニューで出てくる汁物も侮れない。季節によってしょうゆ汁、アラ汁など種類は変わるが、しょうゆ汁は穴子の中骨からダシを取り、すしをほお張った後の舌の印象をさっと変える。茶にもこだわり、煎茶に抹茶を入れて、多少濃いめにすることで、すしの味を引き立てる。

カウンター席8席、座敷12席のこぢんまりした店内は夫婦とパートさんで切り盛りする。夕飯時になるといつも満席状態。カウンターで食べていると「きょうはこれがおすすめだよ」と気さくに声がかかる。地元のすし屋らしい肩肘張らない雰囲気だ。大物政治家やスポーツ選手も多く来店しているという。

札幌のすし店を150軒以上巡り、グルメ投稿サイト食べログでリポートしている会社員、田村靖典さんにすしの楽しみ方を聞いた。「本当においしいすしを食べるには、ベストの状態である開店時間に予約していくといいですね」。また、高そうな店でもセットメニューがあるか聞いておき、それを頼めば、金額の目安になるから安心して味わえるはずだ。

「ネタの産地をきっちり客に告げるところはいい店」と田村さん。また苦手なものはないか聞いてくる店の心遣いは満足度の評価を左右するポイントだという。

(田中映光、西山太郎、阿曽村雄太、島田貴司)

次回は12月22日(土)に掲載します。

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