アイドルマスターオンリー同人誌即売会「Do-M@s」に行って来ました。
と言っても別にオンリーイベントがあったよー、だったらわざわざ書く必要ないですよね。
東京近辺では毎週のように週末何かしらのイベントが行われています。コミケのような大きい規模のものから、10~20程度のサークルしか参加していない小さなオフ会みたいなものまで、多種多様にあるのです。
じゃあなんでこの「Do-M@s」の話をするかというと、実はこのイベントを見ることで地方の同人誌即売会のあり方の変容が見えてくるからなんです。
そんなわけで今回は北海道のイベント事情を書いてみます。

話は大幅に昔にさかのぼり、10年以上前、インターネットが普及しきっていない頃までさかのぼります。
自分も同人誌に興味を持ち始めた時期でしたが、ネットによる情報が出回っていないため脚で情報を拾い歩く状態が続いていました。

その当時は各地方都市ごとに大きめな同人誌即売会がありました。サークル参加数も多く、男女比も半々くらい。まあ、コミケの縮小版だと思うといいかもしれません。

そして21世紀に入ります。ネットが一気に広がり、情報収集が非常に容易になりました。
と同時に同人誌専門店が各地に出来たり、委託通販などもはじまります。

気がつけば、同人誌即売会の会場はサークルのスペースがガタンと減りました。あれれ、壁まで昔はびっちりだったのに……。コスプレは盛り上がっているけれども、肝心の「同人誌の即売会」ではなくなってき始めている。
特に男性向けサークルは目に見えて激減。イベント会場に行っても女性9:男性1ってくらいまで一時期偏っていました。
まあ、実際問題「じゃあ君は札幌のイベントに、出店側で参加しないの?」と言われたら「うーん、それなら東京に持っていったほうが……」となってしまっている。

ここで悩みが発生します。
通販ができるのなら地方イベントを活性化させる必要ってあるんだろうか?
東京や大阪に一極集中でいいんじゃないだろうか?

今回、「Do-M@s」の主催の方にお話を伺うことが出来ました。
話によると、実はアイドルマスターの北海道のオンリーイベントは初ではないそうです。
(十勝で一度、アイマスネタ「とかちつくちて」にちなんで特別に開かれたことがありますが、それをカウントしないとしても、です。)
北海道地方イベント内のプチオンリー(イベントの一角に同じジャンルを意図的に固めて開催することです)でアイマスオンリーは実は開かれていました。
しかし参加したのはたった3サークル。
そのうち2サークルが欠席したため主催者1サークルのみの惨憺たるアイマスオンリーになったとか。
いやそれオンリーイベントじゃなくてオンリーワンですよ。イベントでもなんでもないですよ。
アイマスはかなり前から同人活動の盛んなジャンルです。なのに、そのくらい地方では過疎傾向にあった、という事実なんです。
その経験を経た上での、今回のアイマスオンリーイベント。
どうなるか気が気じゃなかった、と苦笑いをしていました。

アイマスはちょっとファン層のパワーが特別で、イベントがあればどこにでもいく、という活力にあふれています。
今回参加サークルは決して多いとは言えませんが、それでも北海道としてはなかなかの数が集まりました。
けれど参加サークル北海道の人じゃないんですよ。7割本州から来てるんです。
これこれ。
これを聞いたから今回記事をどうしても書きたかったんです。
どう考えても赤字なんですよ、参加サークルさん。どんなに売れたとしても、そもそも来る購入者の数だってそこまで多いわけじゃないんです、飛行機代考えたら……。
それでもみんな笑顔でした。会場は訓練されたスタッフによって非常に丁寧に仕切られ、なんのトラブルもなく行われました。
途中「アイマス総選挙」などのイベントもはさみましたが、なんのトラブルもなく全員が一致してまとまっている。ちょっとマニアックな、だけどみんなが大好きなアイマスのネタで笑い合っている。知り合い同士じゃないというのに。

「アイマスファンはどこにでも行くからね」と多くの人が言っていました。
アイマスの二次創作をやっているファンは、かなり大きなコロニーになっています。横のつながりが尋常じゃなく強いんです。情報交換も盛んですし、全国各地のファンの交流も盛んです。
今回地方イベントの例として「Do-M@s」をピックアップしたのは、ここも大きなポイントの一つなのです。北海道でも開かれたオンリーですが、少し前には沖縄でも開催されました。すごいよね。本州から参加の場合一大旅行ですよ。それでもたくさん集まるんですアイマスファンは。
加えて、アイマスはオンリーイベントの細分化も尋常ではありません。「アイマスオンリー」であればアイマスに関わるすべてのことを含んだ同人誌即売会ですが、「三浦あずさオンリー」のようなキャラクター単体、「雪歩・真オンリー」「竜宮小町」というカップリングやユニットオンリーなどもありました。もっとすごいところだと「アイマスミニ四駆大会」や「やよいのピザーラCMに出演した真ん中の子と右の子オンリー」なんていうよくわからないものまで開催されています。昨年末にスタートした「モバゲー アイドルマスターシンデレラガールズ」のオンリーも、あっという間に開催決定です。
それだけ、なんでもありだし、受け入れる土壌ができているんです。
このエネルギーはちょっと見逃せません。

主催者も実は今札幌にはおらず、関東にいるそうです。
でも「地元北海道でどうしてもやりたい」という思いが高まり、今回のイベントは開催されました。
参加者にしても、東京で買えばいいや、委託書店で買えばいいや、とはなっていませんでした。ここでしか頒布されていないものがあるし、たとえ委託されていても作者さんと会いたい。話がしたい。大好きなアイマスの会話をみんなで共有したい。
その思いが、地元開催の成功を引っ張って来ました。自分も色々なイベントに参加していますが、小さなイベントながらも相当しっかり運営されていることにちょっと感動しました。

札幌は実は、アニメ系・オタク系クラブイベントやライブイベントは非常に多い土地です。かなり頻繁に行われています。
一概には言えませんが、ニコニコ動画世代の若い人が主導となっている場合が大半です。
同人誌をみんなで手にして好きなものを共有したい、という思いと、クラブで好きなアニソンを聞いて共有したい、という思いにそれほど差異はなく、実際このイベントの夜も「メガネゴールド」というアイマス中心クラブイベントが開催されていたくらいです。
ただ、主催者は言っていました。
同人誌を実際にイベントで手に取る、話をする、という体験をしたことのない人に、楽しんで欲しいからこのイベントを札幌で開いた。次にもし開催するなら、さらに若い世代の人に引き継いで欲しい、と。

地方のイベントは盛り上がり、そして過疎を超えて、次にどのように楽しもうとしているかの変化がやってこようとしています。
地方ごとにイベントが行われ、同好の志で集まって好きなものを同人誌を通じて語り合う。
ただし時代は変わった。同人誌即売会だけじゃなくてもいい。クラブイベントや、ライブ、上映会などでもいい。形はどんどん変わっていくでしょう。
ただし、今盛り上げて引き継がないと次につながらないという危惧もあるし、本当に地方イベントをやる意味はあるのか、という疑問とは常に向き合うことになります。
けれど、実際に売り子の手伝いをしながら見ていたイベント会場は、活気にあふれていたな。
体調崩してぼくは行けなかったのですが、サークル参加者をはるかに上回る多くの人がアフターイベントに参加したっていうのは、みんなが好きなものを共有できて、楽しかったっていう証拠なんじゃないかな。
札幌でもこれから様々なオンリーイベントが開催されます。札幌ならではのボーカロイドなど色々です。
大変だとは思いますが、地方のイベントが盛り上がったら、ファンも旅行がてらそのイベントに行くようになるんじゃないかしら。そうなったら、地元のファンとの貴重な交流ができて楽しいんじゃないかな。
そしてさ。もっと札幌でイベントが盛り上がれば、札幌のよさを知ってもらえるんじゃないかな!
(たまごまご)