2011.02.21

今週にも重大局面!菅首相「逆切れ解散」の前に立ちふさがる岡田幹事長

イエスマン幹事長だった小泉政権とは違う
解散という選択肢はあるのか  photo:getty images

 世界は中東の民主化デモのニュースで持ちきりだが、日本の報道は国内の政局の動きに終始している。

 鳩山前首相の「抑止力は方便」発言、小沢系16人の会派離脱宣言に加え、原口一博前総務相の倒閣宣言(その後首相退陣論を否定し予算案・関連法案成立までは見届けるべきと表向きトーンダウン)などがでている。地方でも、河村名古屋市長の「減税日本」が国政進出に意欲を見せ、橋下大阪府知事の「大阪維新の会」など既存政党でない地域政党の勢いがいい。

 菅政権の3月危機はこれまで何回もいわれてきたが、今週にも重大な節目な節目を迎える。3月危機の一つの根拠は、予算関連法案の成立ができなかった場合、予算が事実上執行不能に陥るからだ。

 その関連法案成立のために、民主党執行部は16人の造反を押さえて社民党の協力を仰がなければいけない。ところが、2月22日には社民党が予算関連法案の中心である特例公債法案に反対することを決める予定だという。

 特例公債法では、特例公債38.2兆円、埋蔵金2.5兆円の計40.7兆円を調達する。来年度予算の政府案での公債金収入44.3兆円のうち特例公債は10ヵ月分程度を占めている。法案が成立しなければ、6月頃から資金繰りが徐々に厳しくなっていくだろう。

 もちろん財務省のことだから何か策を考えているのだろう。ざっと見ても、予算執行面で定率繰り入れ停止、独立行政法人等への交付金・補助金停止と各法人の起債等、財投融資資金等の有価証券売却、財投計画の弾力条項発動による財投債発行等で年内は何とかやりくりができる。政府は濡れ雑巾なので、絞りがいがある。

 もっとも、政権が安定していない時に、何らかのやりくり算段を行うのは役人にとってあまりにリスクが高いので、あえて言い出さないだろう。

 政権の不安定は、野党の攻勢のためでもなく、社民党との予算修正協議の不調のためでもない、民主党内のごたごただ。

 すでに公然と首相退陣論が民主党内からでている。これに対して菅総理は、解散カードで対抗している。

 しかし、この勝負は菅総理の分が悪い。たしかに、総理は解散権を持っている。しかし、それを一人で発動すること(閣僚が反対すれば全員を罷免して一人内閣になって解散権を実行する!)はできても、一人で総選挙を戦うことはできない。

 この話を理解するためには、小泉元首相の郵政解散を思い出すのがいい。

 2005年8月8日、参議院本会議で郵政民営化関連法案が否決され、小泉首相は臨時閣議を開き、反対した麻生太郎総務相らの4閣僚を説得し最後まで反対した島村宜伸農水相を罷免して解散を閣議決定した。

 当時の自民党内の調査では、解散した場合、自民党は200議席を割り込む惨敗となっていた。そこで、党内には解散反対の雰囲気が満ちていたのである。一部は、自民党両院議員総会で小泉総裁を解任するという考えもあったが、しかし解散は首相のブラフに過ぎない考え実行されなかった。

 さらに、自民党幹事長はイエスマンを公言する武部勤氏だったことが大きい。「刺客」を送るなど小泉首相の思いどおりの選挙も戦える体制になっていた。刺客作戦がなければ、あれほどの圧勝はなかったであろう。

 一方、いまの状況はどうか。幹事長は次期首相候補の岡田克也氏だ。岡田氏は首相のイエスマンではない。むしろ岡田氏から見れば今解散すれば、民主党は負けて総理の椅子は回ってこなくなる。岡田氏を幹事長にした段階で、菅総理はもう解散を打てないと読むべきだ。総理の権限は、解散権と人事である。それらは片方だけでは十分でなく、両方あって初めて威力を発揮する。

 もっとも今の菅政権の支持率では戦おうにも戦えない。小泉政権では高い支持があったので、比べるまでもない。

 菅総理は、今年1月の内閣改造でミソをつけた。コテコテの増税論者である与謝野馨氏を入閣させて、最強内閣と言った。これは、他の民主党の人は無能であると言ったのも同然だ。しかも、政権交代の時にはまったくいっていなかった消費税増税を掲げるというのであるから、多くの民主党の人から見れば「最凶」の話だ。

 そんな人事をする菅総理が、今頃になって、解散カードを言い出しても、単なる口先だけだといわれてしまう。もし、側近のイエスマンを幹事長にしていれば、解散の迫力が違っただろう。

 すでに、今の段階でも、菅政権は手詰まりになっている。この流れの先には、民主党の分裂含みで大政局・政界再編になる可能性がある。その場合には、自民や公明、みんなの党も含めての動きになるかもしれない。

 それには政策の大義名分が必要である。好き嫌いで人が集まっても長続きはしない。今の反小沢の民主党執行部に対抗するからといって、親小沢が政界再編の軸になるはずない。

 今のところ、政策の軸になるのは、いまの政権が増税を目指す大きな政府路線なので、減税の小さな政府路線であろう。実は、今の自民党執行部も与謝野氏と盟友であったので、増税・大きな政府路線の方向だ。その意味で、この対立軸は、おおきな政界再編になる可能性がある。

 22日は実に面白い日だ。民主党内の桜井充財務副大臣ら、小沢派とは一線を画している中間派も会合を持つ。桜井財務副大臣は、20日のフジテレビの番組で菅総理が党内意見を聞いてこなかったと批判している。この時期になると、執行部は何かと理由をつけて若手議員を拘束しようとするが、どうもそれをかいくぐって、いろいろな動きが水面下である。

 私も発起人の一人である民間組織である「デフレ脱却国民会議」も22日に会合がある。民主党から小沢鋭仁前環境相、松原仁・民主党デフレ脱却議連会長ら、自民党から中川秀直元幹事長、山本幸三氏、公明党から高木陽介幹事長代理、みんなの党から渡辺喜美代表、浅尾慶一郎政調会長らが参加する見通しだ。

 この会は、デフレ下での増税は経済に大打撃を与えるので、日銀法を改正してデフレ脱却を第一に考えている。この意味で、今の菅政権のデフレ・増税路線に批判的であるので、大きな対抗軸を提供している。今の状況で、救国的な経済運営するために、日銀法改正は望ましいだろう。

元の鞘に戻るという選択肢

 もう一方向の流れとして、政権党というのは強力な接着剤であり、今の民主党内の内紛は菅政権では統一地方選を戦えないという意思表示に過ぎないというものだ。

 その場合には、統一地方選前には、民主党Aと民主党Bとなり、それぞれで選挙を戦うことになる。同じ店名にするが商売は別々にするようなものだ。地方選挙はほとんどが中選挙区制度なので、かつての自民党の派閥のように同じ党内で争っても当選できるからである。その後、統一地方選が終われば、その選挙結果にもよるが民主党Aと民主党Bは元の鞘に収まることもできる。

 日本は、中東の長期独裁政権ではなく、短期間で疑似政権交代が起こっているが、それでもダメな指導者にはいてもらいたくない。

 死に体の菅総理には事実上解散権はすでにないが、民主党内のたらい回しでなく、政策を軸とする政界再編をして信を問うのが国民のためだろう。
 

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