【1月13日 AFP】米アリゾナ(Arizona)州の銃乱射事件をめぐり、背景には政治活動における過激な表現があったとして非難の矢面に立っているサラ・ペイリン(Sarah Palin)前アラスカ(Alaska)州知事が12日、メディアは「血の中傷」を拡散していると反論し、新たに物議を醸している。

 6人が死亡、民主党のガブリエル・ギフォーズ(Gabrielle Giffords)下院議員(40)が重体となった銃乱射事件の追悼行事を前に、ペイリン氏は約8分間の動画で声明を発表。その中で、「身の毛のよだつ犯罪行為は犯罪者本人に帰結するものだ」「特に悲劇の直後は、記者や評論家は血の中傷をでっち上げるべきではない。深い憎しみと暴力を生むだけだ」と述べた。

 リベラル層は、同事件で逮捕、訴追されたジャレッド・ロフナー(Jared Loughner)容疑者が2010年の中間選挙の選挙活動で使われた過激な表現に影響を受けたと主張しているが、それを裏付ける証拠は見つかっていない。同容疑者には精神病歴があったとする報道もある。

 だが、ペイリン氏の今回の発言は火に油を注ぐ結果となった。「血の中傷」とは、ユダヤ人がキリスト教徒の赤ん坊を殺してその血を材料にして「過ぎ越しの祭り」の種なしパンを作っていたとする作り話で、ユダヤ人の大虐殺や迫害を正当化する際にしばしば引き合いに出されてきた。

 ユダヤ系の米人権団体「名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation LeagueADL)」は、ペイリン氏を非難することは「不適切」としながらも、「ペイリン氏は、ユダヤ人の歴史における苦痛に満ちた言葉を使うべきではなかった」としている。(c)AFP/Olivier Knox and Stephanie Griffith

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