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ビデオ『八ッ場ダムはなぜ止まらないか』の編集・仕上げや、『週刊朝日』に「八ッ場ダム、開いた口が塞がらない」(都内は明日駅頭発売)の執筆などで、ブログの更新が出来なかった。今日は、日曜日だが画期的かつ重要なお知らせがあるのでお読みいただきたい。かつて何度か書いてきた「検察官適格審査会」がついに、11月16日夕刻に開催される運びとなった。

 検察官適格審査会は戦後史の中で、長い期間にわたって眠りこけていたので、「検察官の民主的統制」を目的にしながらも、戦後に「罷免」したケースが長期にわたって行方不明となった佐賀県の副検事ただ一人という実態だ。また、国民の誰もが「検察官の職務並びに適格性」について審査請求が出来るが、驚いたことに審査が開始されたことは1回もない。

 長年の自民党一党支配で、検察官適格審査会の委員11人の過半数を占める国会議員(衆議院4人・参議院2人)が、法務省大臣官房人事課のとりまとめる「事前調査資料」の説明に異議を唱えず、会議は2年に1回というペースで行なわれていたために、3年ごとに行なわれる検察官全員の定時審査も「通過儀礼」となり、また国民の求める検察官の「随時審査」は「その必要を認めない」とうなずくだけの場となっていた。

 今回は村木厚子さんの事件で、大阪地検特捜部は無論のこと「村木さん逮捕」「起訴」「論告」などを取り仕切ってきた上級庁(大阪高検・最高検)の幹部をも審査対象とした請求が三井環元大阪高検公安部長から提出されており、請求人となった人々は1500人に達したと聞いている。

従来であれば、検察官適格審査会は今年の2月に開催されているから、ほとぼりのさめる来春まで「棚上げ」にするのが通常だが、今回は検察官適格審査会の委員から「今回の村木事件捜査の問題で開催するべきではないか」との声があがり、松尾浩也会長が招集して会議が持たれることになった。
画期的というのは、こうして会議が開催されること自体が長らくなかったからだ。

 読者の皆さんも感じているように、大阪地検特捜部という現場の「暴走」を追認し、「逮捕」「起訴」という方針を確定させたのは、大阪高検であり、最高検である。最高検の捜査は見事に自分たちを外して「大阪地検」に照準をあわせたもので、「検察官一体の原則」に基づいて司令塔の役割をしてきた責任を回避している。

 前田元検事、大坪元特捜部長ら「大阪地検」の関係者は起訴されて懲戒免職となったり、または辞職して検事の身分を失っている。すると、検察官適格審査会が審査する対象ではなくなる。だが、上級庁で大阪地検が上げてきた「村木さん逮捕・起訴」を決定した検察幹部は現に職務に止まっている。

 検察官適格審査会が、国民からの訴えを受けて「審査開始」に踏み切ること出来るはずだ。自民党政権の時は、絶対ありえなかった多数決で、審査開始の決定が出来るかどうかは大いに注目していい。そもそも、「検察の民主的統制」のための検察官適格審査会の事務局を法務省が行なっていること自体がおかしい。年間15万1千円というあきれた低額予算も、適格審査会が活動せずに眠りこけることを前提とした水準だ。

 この検察官適格審査会には、外部から弁護士や専門家を「調査専門員」として招き、調査のためのワーキングチームを編成することが出来る。検察庁法に書き込んである審査会の調査には職権があり、調査対象の検察官も含めて検察組織も調査に協力しなければならない。「検察の暴走」の病根をえぐる調査をするのは、唯一のチェック機関である適格審査会の出番だと私は思う。

 ただし、検察官適格審査会が「審査」した後で決めることの出来るのは「罷免議決」しかないということが、制度上の不備でもある。劇薬的な「罷免」しかないから、「審査は慎重に」としてきた結果が、「審査開始決定」を止めていた理由だろう。審査会として、その手前の処分を勧告することもあっていいはずだ。こうした検察官適格審査会のあり方についても大いに審査会の席上で議論し、運営上の規定については「運営細則」を改正すればいい。また、検察官適格審査会のあり方について、大きな骨格の変更については、検察庁法改正を政府に提案することも出来るはずだ。

 明後日の検察官適格審査会の開催を多くの国民は知らない。東京新聞以外の大手メディアもまったく報道していないからだ。少なくとも、「検察の暴走」の影には検察官適格審査会が眠りこけていたという認識がテレビ・新聞社幹部にない。正直言って、「検察審査会なら知っているけど、検察官適格審査会は聞いたことがないな」というのが新聞記者も含めた平均的な認識ではないか。弁護士でも、国会議員でも知らない人は多い。

 まさにこの現状が、「検察にはチェック機関がない」という誤った報道につながっていく。チェック機関がないのではなく、検察官適格審査会の活動が封印されてきたのが真実だ。明後日には、ぜひ大きく検察官適格審査会の歴史や背景について詳しく報じてほしい。

 法務大臣が設置した検察のあり方検討会議(座長・千葉景子前法務大臣)は、今回の「検察不祥事」を受けて検察組織の全体について意見交換する場である。検察庁法に規定され、また「検察官のチェック機関」である検察官適格審査会の審査は必要なく、あり方検討会議に委ねるというのは本末転倒である。

「まな板の上の鯉が包丁を握る」という姿からは、真実は見えてこない。再審開始された布川事件では、40年前の論告と寸分変わらない「無期懲役」の論告求刑をしたと伝えられている。批判とチェックを拒む組織は腐敗し道を誤る。検察はこの「村木さん逮捕・起訴」だけを誤ったのではない。

 調査活動費の実態をメディアに明らかにする準備をしてきた三井環元大阪高検公安部長を微罪で逮捕し、「口封じ」をした責任者は、検察官適格審査会の委員となっている原田明夫元検事総長である。検察は、ここで「けもの道」に踏み込んで、「白でも黒に塗り替えることが出来る」という実例を前田元検事ら若手に「お手本」で示した。

 小泉政権下で繰り返された「国策捜査」と、その内容を検証することも今後の課題だ。


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