アマゾンレビューと勝間さんの最新作

 勝間さんの最新作「「有名人」になるということ」のアマゾンレビューを5月23日の午後2時半現在みてて気が付いたこと。たとえば評価の分布は以下に

星5つは9人
星4つは四人
星3つは二名
星2つはゼロ
星1つは五名

で、このうちアマゾン調べでアマゾンで勝間さんの本を購入した人の割合は、以下のとおり

星5つ 9名中全員購入 100%
星4つ 4名中1名購入 25%
星3つ 2名中ゼロ名  0%
星1つ 五名中1名   20%

これからいえることは評価が低いひとは少なくともアマゾンではほぼ購入していない。ちなみに星ひとつの購入者のレビューの中身をみると、購入した人は詳細に中身をもとに批判している。他方で、購入履歴がないものの批判は、ただの誹謗中傷や中身をまったく見なくてもかけるヘイトスピーチにすぎない。

このアマゾンの購入履歴表示は、かなりの程度、レビューの信頼性を提供するうえで効果があるように思える。少なくとも買っていない(=おそらく中身を読んでない確率が高い)者の信頼性を疑わせる素材を提供しているのではないか。

再録:『石牟礼道子全集』書評

 6年前に『週刊東洋経済』に掲載された書評を再録。 

 1961年は日本人がすべて年金に加入した「国民皆保険」元年として知られている。日本の福祉国家の幕開けともいえるかもしれない。私はこの年に生を受けて、以後まさに高度成長時代の光と影と共に幼少時代を過ごしたといえる。60年代の子どもたちにとって「公害」は、夏になるとどこからともなく流れてくる光化学注意報のアナウンスの音だったり、アスファルトを幽気のごとく漂うスモッグやそれが引き起こす喘息への恐怖であったりした。授業やテレビでは、乱開発や垂れ流される廃液・排煙が社会問題化していた。当時のゴジラの敵役は「公害」の日々にふさわしいヘドロの怪物であった。そんな時代に「水俣病」という名称は、子どもの想像を超えた過酷で奇異な公害病として印象に強く残っている。もうテレビであったか映画であったかさえ記憶が定かではないが、鼻先を地面にこするように頭から激しく回転する猫の映像、かっと見開いたまままばたきもせずに虚空をみつめる少女の硬直した四肢、そして狂ったような突然の発作。これら灰色の心象がこの時代を生きた多くの人の胸に刻まれたに違いない。だが時代は、「公害」という共通体験を風化させ、かっての子どもたちをかなりくたびれた中年にしたてあげた。その風化のありようは、私たちが決して公害を、ましてや水俣をかって体験しなかったし、知りもしなかったことのなによりの証左であるともいえた。

 そしていま目前に、石牟礼道子氏のあまりにも圧倒的な全集が刊行されはじめた。まさになにものかが憑依し生み出した、という表現がふさわしい。40年という歳月をかけて完結した『苦海浄土』三部作をはじめ、初期著作集、天草の乱を題材にした『アニマの鳥』などの小説群、詩歌や新作能、そして自伝など、全17巻(ほかに別巻)は、読者に物言えぬ深い沈黙を強要するであろう。感動というよりも畏怖という沈黙を。

 「ここは奈落の底でござすばい、墜ちてきてみろ、みんな。墜ちてきるみゃ。ひとちなりととんでみろ、ここまではとぼきるみゃ。ふん、正気どもが。ペッと彼女は唾を吐く、天上へむけて。なんとここはわたしひとりの奈落世界じゃ」

 水俣チッソ工場から排出された有機水銀汚染によって、脳を神経を肉体を想像と現実が許すかぎり無残に破壊された彼と彼女が、作者にまさに憑依することで、人と人が共感するために生み出した言語を超える、常ならざる情念と怨呪の世界を築き上げた。逝ったものたち、これから逝くであろうものたちに送る鎮魂の書である。

研究会告知「日本の長期不況とマクロ経済政策」

 専修大学社会科学研究所の公開研究会です。参加は自由とのこと。ケインズ学会での浅田統一郎さんと吉川洋氏、小野善康さんとのあいだの討論がありましたが、それを踏まえてのものです。かなり立ち入った内容になりますので、この日本の長期停滞をマクロ経済モデルでしっかり考えたい人向きでしょう。僕も都合が合えばいきます。

テーマ:日本の長期不況とマクロ経済政策
    ―吉川洋小野善康両氏の見解を踏まえて
参考文献:ケインズ学会編『危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ』(作品社

報告者: 浅田統一郎 氏(中央大学経済学部)
討論者: 黒木 龍三 氏(立教大学経済学部)
     野下 保利 氏(国士舘大学政経学部
     片岡 剛士 氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株)
司 会: 野口  旭  (本学経済学部教授)

日 時: 6月16日(土) 15:00 〜 17:30
場 所: 神田校舎7号館(大学院棟)7階772
専修大学神田校舎マップ
http://www.senshu-u.ac.jp/univguide/campus_info/kanda_campus/index.html

浅田、吉川、小野氏らの討論は以下の書籍に収録。ぜひ読んでから行きたいですね。

危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ――資本主義とヴィジョンの再生を目指して

危機の中で〈ケインズ〉から学ぶ――資本主義とヴィジョンの再生を目指して