今回は、4タイプの代表的なFMCの実現手段のうち、「クラウドPBX型FMC」について詳しく見ていく。

 クラウドPBX型FMCは、PBXの機能をネットワーク経由で借りて使う形を指す。かつては「IPセントレックスサービス」という総称を掲げ、通信事業者各社がネットワーク経由でPBX機能を積極的に提供しようとしていた。それが昨今のクラウド化の流れの中で再び注目を集めている。

図1●「クラウドPBX型FMC」の特徴
図1●「クラウドPBX型FMC」の特徴
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 例えば、クラウド型のPBXと、SIP準拠のIP電話アプリケーションを搭載したスマートフォン(「[4]IP電話アプリとサーバーを連携」を参照)を利用すれば、全国どこにいてもスマートフォンを内線電話機のように使える環境を構築できる(図1)。PBXのアウトソースを厭わず、運用コストの削減や新たな付加価値を求めるユーザーに適している。

 実際にスマートフォンを対象としたサービスも登場している。アジルネットワークス(東京都中央区)は2010年7月、SIP準拠のIP電話アプリをインストールしたスマートフォンで全国を“内線化”できるクラウドPBX「アジルモバイルSIP接続」の提供を始めた。

 クラウドPBXを活用したFMCとしては、携帯電話事業者の「内線ワンナンバー型FMC」サービス(「[2]携帯会社が「内線」を提供」を参照)と組み合わせたサービスも登場している。携帯電話事業者のネットワークに直収する必要があるユーザーの拠点のPBXの代わりに、PBX機能をサービスとしてネットワーク経由で提供するのだ。この部分をランニングコストとして扱えるメリットがある。

 アジルネットワークスは、ウィルコムの内線ワンナンバーサービス「W-VPN」に対応したクラウドPBXを「アジルモバイルセントレックス」として提供中。リンク(東京都港区)も8月にKDDIの内線ワンナンバーサービス「ビジネスコールダイレクト」に対応したクラウドPBX「BIZTEL モバイル」を開始した。アジルネットワークスの篠田亘司CEOは、「マルチキャリアの内線ワンナンバーサービスに対応したクラウドPBXを提供すべく現在交渉中だ」と話す。