青森里帰り妊婦OHSS訴訟

  事件番号 終局 司法過誤度 資料
一審横浜地裁
川崎支部
平成11年(ワ)第727号 判決平成16年12月27日 C以上 判決文
二審東京高裁 平成17年(ネ)第673号
平成17年(ネ)第2013号
判決平成21年11月18日 妥当 判決文抜粋
最高裁 平成22年(オ)第485号
(「受」の番号は未確認)
平成22年2月3日現在,
上告ならびに
上告受理申立て中
   

(一審判決は,判例時報1910号116頁に掲載されています。)

 平成11年に提訴された事件で,平成16年に一審判決,そして平成21年にようやく控訴審判決が出た事件です。医療訴訟の審理期間が短くなる傾向にある近年にあって,長期にわたって審理された事件として,東京産婦MRSA感染訴訟と共に注目していました。

 一定した治療方針が確立していないOHSS(卵巣過剰刺激症候群)に罹患し,治療に難渋して残念ながら最終的に亡くなられたという事例です。事件概要を非常に大雑把にまとめれば,以下のようになります。

不妊治療 → OHSS罹患 → 里帰り出産 → 第二子不妊治療 → 制止を振り切って里帰り → OHSS増悪で死亡

 一審では不妊治療をしたK病院および里帰り先のL病院の過失を争い,前者の過失は認められなかった一方,後者の過失を認められ原告が勝訴しました。

  この妊婦さんは,医師の指示に従わずに里帰りをし,里帰り先でOHSSを発症して入院し,病状が悪化したにも関わらずICUへの転棟を何回も拒否していながら,治療が奏功しなかったとして遺族が提訴したものです。このような行動があっても一審で原告がほぼ完勝したことに不条理を感じていたのですが, 控訴審で病院側が逆転勝訴し,医療関係者としては少し安堵しました。東京産婦MRSA感染訴訟訟の不条理判決があった矢先だっただけになおさらでした。

  さて,判決文は83ページに及ぶ長大なもので,「医療判例解説」などに全文が掲載されることを期待するとして,判決文の中でも興味深い部分を示します。

 医療行為の成否は医療機関の判断と技量のみにかかわるのではなく,患者の協力いかんが大きく影響する現実を看過することはできない。本件では,そもそもAの青森旅行の敢行はK病院との診療契約において患者として健康に第二子を出産するという同契約の目的実現のために負う重要な協力義務に違反するものである。

 「医療行為の成否は医療機関の判断と技量のみにかかわるのではなく,患者の協力いかんが大きく影響する現実を看過することはできない。」のくだりは,医療者と患者の関係を端的に表した秀逸な一文と感じました。判決ではここで示された事情とは別に、L病院における医療行為の違法性の有無について詳細に検討されており,この記述が判決に不可欠であったとは思えないのですが,ここで示された事情も裁判官の心証形成に影響したことは想像に難くありません。非医療者の方々に,このような医療の現実を知って頂きたいと思い,ご紹介した次第です。

 ちなみに,判決文中の上記紹介部分に続く,

その結果,Aは重症のOHSS患者となった状態で本件病院に来院し,その治療を受けることになったのであるが,既にその症状は進行しており,自律性を失い卵胞の成熟活動を停止させるための調整機構も働かなくなってしまっていた同人の卵巣は,併せてその過程で卵巣内外の毛細血管の透過性を亢進させていくばかりでこれを治めることもできなくなっていたと見るのが相当であり,

という医学的な判断については,やや勇み足かもしれないことも念のため追記しておきます。

平成22年2月15日記す。 


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