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2010年08月26日

バーニー・エクレストンとミハエル・シューマッハ: 対談

In conversation - Ecclestone & Schumacher

このふたりの名前はF1レーシングと同じ意味である。ひとりはグランプリに2回出走してあきらめ、チーム代表として成功し、その後F1を世界的現象に育て上げた。もうひとりは、F1マシンに乗るとすぐに記録を書き換え、誰も超えられないような数字を打ち立てた。もちろんそのふたりとはフォーミュラワン・グループのバーニー・エクレストンCEOと、メルセデスGPの7度のワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハである。彼らの友情はほぼ20年前から続いている。彼らがいつも話題に事欠かないのは当然である…

バーニー・エクレストンミハエル・シューマッハ

Q:バーニー、ミハエル、おふたりが最初に会ったときのことを覚えていますか? お互いのことをどう思っているのでしょう?
バーニー・エクレストン: 記憶が正しければ、20年ほど前のモンツァだったのではないかな…
ミハエル・シューマッハ: …そうだね。
バーニー・エクレストン: 彼がジョーダンからベネトンに移籍するのにちょっと手を貸したんだ。

Q:どうしてですか? 当時、あなたには彼が「ジュヌセクワ」(言いがたい何か)を持っていることがわかっていたのですか?
バーニー・エクレストン: もちろんわかっていたよ。だから彼を競争力のあるチームに入れたかったんだ。もちろん彼は素晴らしいドライバーに成長しただけでなく、ある意味でチーム・マネージャーにもなった。サッカーなら選手兼監督というところだね…(笑)

Q:ミハエル以前は、ドイツ人ドライバーがF1で腕試しをしましたが、成功の程度はさまざまでした。なぜあなたはミハエルが大成功すると確信していたのですか?
バーニー・エクレストン: 才能を見る目があればすぐにわかっただろう。スパの最初のレースでもすでに明らかだったと思う。
ミハエル・シューマッハ: 僕も才能はすぐにわかるものだと思っている…
バーニー・エクレストン: …いずれにせよ、彼が1992年スパで初めて表彰台に乗る前から、ここには優勝者の卵がいると信じていたよ。もちろん彼が7度もタイトルを獲得するとは誰も予想していなかった。

Q:ミハエル、F1で成功できると確信したのはいつですか?
ミハエル・シューマッハ: 正直なところ、2回目のレース後のモンツァ、つまりベネトンでの初レースだね。このとき、何か大きなことが待ち受けているという感じがした。それまでは、単にF1に昇格するという事実の先を考えるには自信がなかった。もちろんチャンピオンシップ優勝などという見通しもなかったが、最高のドライバーたちと同じレベルでレースをして、戦うことができるという印象を持った。

Q:では、ジョーダンからベネトンへの移籍に手を貸してくれたバーニーに感謝していたことでしょうね?
ミハエル・シューマッハ: もちろんだ。彼は僕がアドバイスを必要とするときはいつもそこにいて、支援してくれた。僕がジョーダンからベネトンに移籍したとき、バーニーは重要な役割を果たした。これは重要な変化だった。最初の1年はそうでもなかったが、間違いなく正しいチームに在籍するという次のステップとしては当然だった。そのときになって初めて、僕はドイツにおけるF1の関心を高めることができた。だからF1だけでなく僕もそこから恩恵を受けた。
バーニー・エクレストン: 当然だ。彼とルイス・ハミルトンはF1で最も有名なドライバーだ。未だにね。

Q:ミハエル、F1はあなたに何をもたらしましたか?
ミハエル・シューマッハ: 20年間の情熱とポジティブな興奮だね。

Q:おふたりはお互いから学ぶことがありますか?
バーニー・エクレストン: ミハエルは礼儀正しい人間だ。これはわたしにとって重要だ。彼と話していると自分の立場がわかる。そして、繰り返すようだが、彼はベネトンですぐに単なるドライバーから「チーム・マネージャー」に変身したんだ…
ミハエル・シューマッハ: …必ずしもそうではないよ。フェラーリの方がそれに近かったね。(微笑)

Q:メルセデスではどうですか?
ミハエル・シューマッハ: そうだね、僕は(チーム代表の)ロス(・ブラウン)やチームの他のスタッフとは長年一緒に仕事をしてきたので、僕の仕事がドライビングに限らないのは当然だ。僕はエンジニアでもないしエアロダイナミシストでもないが、成功するために進むべき方向については十分な経験を持っている。コンピュータ・プログラムがあってあらゆるデータがそこから流れていても、判断を下すのはやはり人間なんだ。

Q:バーニー、あなたはミハエルがカムバックするのをいつ知りましたか?
バーニー・エクレストン: 新聞を読んで知ったよ。

Q:それ以前に話をしたことは?
バーニー・エクレストン: ないね。
ミハエル・シューマッハ: 何について?
バーニー・エクレストン: 一番重要なことは、ミハエルが復帰することに自信を持っており、チームが彼を信じたということだ。メルセデスのスタッフは、彼が何を象徴しているか、彼が何を達成できるかを知っており、彼らが真剣に話をすれば彼は耳を傾けるだろう。彼らがたわごとを言っていたら彼は耳を傾けたりしない。

Q:あなたのカムバックに関するメディアの大々的報道には驚きましたか?
ミハエル・シューマッハ: もちろんだよ。2009年夏、短期間だったが僕のF1復帰の話が出たときも驚いたよ。嬉しい驚きだったね。
バーニー・エクレストン: すごかたったね。タイガー・ウッズのカムバックとよく似ていた。ただしタイガーは全く違う理由でプレイを中止していたがね。ミハエルのおかげでメディアで大きく報道された。これについては改めて感謝するよ。

バーニー・エクレストン、ミハエル・シューマッハ

バーニー・エクレストン、ミハエル・シューマッハ

バーニー・エクレストン、ミハエル・シューマッハ

Q:ミハエル、本当のことを教えてください。ひとりのドライバーがキャリアのなかで7度のタイトルを獲得することが可能だと思っていましたか?
ミハエル・シューマッハ: いや、そこまで自己陶酔できる人間はいないだろう。僕の最も突飛な夢でさえ、1度以上のタイトル獲得を想像したことはない。なぜならドライバーとしての競争力はマシンに大きく依存するからだ。僕らは、成功を左右するのが自分の才能だけというテニス選手やその他の単独スポーツマンではないのだから。でも僕はチームの一員になるのが気に入っている。成功するためにジグソーパズルのように一緒に仕事をして、誰もがお互いからモチベーションを受ける必要があるんだ。
バーニー・エクレストン: よく言った。F1はチームスポーツであり、それはチーム内のメンバーひとりひとりを見ればわかる。彼らは皆同じだ。だから全体としての利益のために団結しなければならない。だからこそわたしは、今話題になっているいわゆる「チームオーダー」禁止に反対しているんだ。なぜならこれはチーム内の決定だからだ。ただ、第三者を不利にするために2チームが結託することは許されないと思う。ミハエル、君の意見は?
ミハエル・シューマッハ: トルコでのマーク・ウェバーとセバスチャン・ヴェッテルはチームオーダーがあったようだし、ニコ・ロズベルグはホッケンハイムで長く走った。でもこれは本当にチームオーダーなのか? いや違う。コントロールできることのみ規制するべきだ。
バーニー・エクレストン: 全くその通り。

Q:バーニー、ミハエルがカムバックすることを知ったとき、あなたはこれはF1へのプレゼントだとおっしゃいました。しかしそのカムバックは予想よりも少し困難で、多くの批判があります。F1にとって本当にプレゼントだったのでしょうか?
バーニー・エクレストン: そうだ。なぜなら、ミハエルは100%体調がよくて才能もあるが、彼は勝ちたいのでレーシングをしている。そして現時点ではそれが不可能だ。だから彼はマシンを正しくすることに専念しなくてはならない。

Q:ミハエル、あなたはどうですか? カムバックが間違いではなかったことを説明してください…
ミハエル・シューマッハ: 自分の仕事を楽しんでいるし、タイトル優勝という目標に到達できると信じているからね。時間がかかることを受け入れなくてはならない。もちろん、チームの全員が今シーズンはもっと競争力があると思っていた。残念ながらそうではないがね。
バーニー・エクレストン: ミハエルがレッドブルに乗っていたら、彼に賭けるだろうね…

Q:ミハエル、あなたもそう思いますか?
ミハエル・シューマッハ: こう考えたらどうかな、レッドブルなら違う選択肢があっただろうとね。

Q:来年はもっとよくなると楽観視している理由は何ですか?
ミハエル・シューマッハ: 今の僕らにつきまとっている問題を知り、理解しているからだ。
バーニー・エクレストン: わたしもいくつかつけ加えたいね。ニコ・ロズベルグがミハエルよりも速いと言われているが、ニコはまだ自分を証明しなくてはならないんだ。ミハエルは違う。ニコにとって4位は重要だが、ミハエルには重要ではない。彼にとって重要なのは優勝だけだ。彼が4位でフィニッシュしようが14位でフィニッシュしようが、彼はあまり気にしていないんだよ…

Q:ミハエル、そうなんですか?
ミハエル・シューマッハ: たぶんそうだろうね。

Q:おふたりともポーカーゲームがお好きですね。ポーカーフェイスを決め込むことは重要ですか?
バーニー・エクレストン: 彼には必要ないね。マシンに乗るときにはヘルメットをかぶっているんだから!(笑)、いや、まじめな話、彼は4位になるために限界まで攻める必要はないんだよ。
ミハエル・シューマッハ: ちょっと待って。その発言を放置しておくわけにはいかないね。僕はいつも限界で走っている。それは自分のためにやっているんだ。

Q:バーニーは、あなたが以前よりもかなりリラックスしているように見えると言いたいようです…
ミハエル・シューマッハ: オーケー、そうだね。でもだからと言って僕が全力を尽くしていないわけではないよ。
バーニー・エクレストン: 優勝を目指しているのか、8位か9位争いをしているのかでは、モチベーションが違ってくると言いたいだけだよ。

Q:メディアの反応に依然として驚いていますか? 「ああ、僕は何てことをしたんだ?」と自分をつねりたくなることはありませんか?
ミハエル・シューマッハ: 繰り返すが、僕にとってマシンやチームと仕事をすることが重要なんだ。メディアは単なる副作用に過ぎない。彼らが僕の描く未来想像図に影響を及ぼすことはない。

Q:あなたはニコ・ロズベルグよりも速いと思いますか?
ミハエル・シューマッハ: 僕にはすべての詳細がわかっている。確かに、現時点のマシンの挙動からすると、僕は少なくとも予選では彼のレベルで走れていない。レースではほぼ同等だ。この事実を変える方法を正確に知っているので、そのために頑張っている。

Q:ブラウンでのあなたの前任者ジェンソン・バトンは、昨年チームはあなたとは全く違う彼のドライビング・スタイルに合わせて2010年マシンを作ったので、少し罪悪感を持っていると言っていました。彼の操縦性の好みはアンダーステア寄りですが、あなたはこれが嫌いですね。チームに加わったのが遅すぎたので、マシンの基本的特徴を変えることができませんでしたよね…
ミハエル・シューマッハ: …確かにね。どのドライバーも独自のドライビング・スタイルを持っているので、パッケージを快適に感じるようチームと協力しなくてはならない。僕はそれをフェラーリで達成した。でもこれは一晩ではできるものではない。現時点では僕らのマシンが僕に合った特徴を持っていないことは秘密でも何でもない。今はそれを変えるのは僕ら次第だ。状況はいずれ変わるだろう。

Q:バーニー、ミハエル以前のドライバーは、トラック外で贅沢な生活をすることが大好きでした。しかし彼が登場してすべてが変わりました。彼は、成功という唯一の目標を持つ一種ゲルマン的な徹底した完全さを持ち込みました。この進展を複雑な心境でご覧になりましたか?
バーニー・エクレストン: わたしに言えるのは、現在のドライバーは全員、ミハエル・シューマッハのようになりたがっている、ということだけだ。
ミハエル・シューマッハ: そう思うね。例えば、セバスチャン・ヴェッテルは僕のキャリアをとても注意深く見守っていた。彼が僕に話したことはないが、これは当たっていると思う。そのことを誇りに思うね。でも僕は、グリッドで一番身体を鍛えていたから成功したわけではない。チームと一緒に頑張ったんだ。僕の成功は多くの要素が総合されたものだった。
バーニー・エクレストン: それに、ミハエルがドライバー年俸に新たな次元を導入したことも忘れてはならない。そのことではチーム代表は彼に感謝しないだろうね!(笑) セバスチャン・ヴェッテルに話を戻すと、彼は仕事の態度に関してはミハエルと同じくらい利口で、素晴らしい才能に恵まれている。なにより彼はとてもいいヤツだ。彼はドイツで「ベイビー・シューミ」と呼ばれていたのではなかったかね?
ミハエル・シューマッハ: 彼はそのような比較を好まないし、それが当然だ。彼はその段階を超えている。

Q:最後の質問です。フェルナンド・アロンソはフェラーリにおけるあなたの精神的後継者でしょうか? 彼はフェラーリの陰のチーム代表だと言う人もいます…
ミハエル・シューマッハ: それには答えることができない。アロンソとは付き合いがないんだ。
バーニー・エクレストン: フェルナンドは違う性格の持ち主だ。フェラーリでミハエルと同じことは達成できないだろう。

-Source: The Official Formula 1 Website
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